第2話
2.
「なぁ、お前天坂さんの事、どう思ってんの?」
翌週の昼休み、自身の友人である新柴健二に突然訊ねられ、勝也は顔をしかめた。
「はぁ? どうって、どういう意味だよ?」
「いやだっておかしいだろ!? 何とも思ってねぇ男女が、フツー一緒に登下校したりデートしたりするか!? 在り得たら羨まし過ぎるわっ!!」
「ちょ、待て待て。落ちつけ。何の話だ一体?」
デート?
俺と?
あいつが?
「バーカ。あれがデートに見えるのか?」
「見えるよ! 男子と女子が手を取り合って一緒に登下校する時点で、俺からすりゃデートと同じだ! くっそぉぉぉ!!」
自分から話題を振っておきながら、かってに勝也に嫉妬していた。
新柴健二。友人ながら、めんどくさい男だ。
「あれがデートに見えるとか、お前の眼は節穴かよ? 俺らの場合は手を取り合うっつーよか、取っ組み合うって感じだぜ?」
それも、ガチで。
完膚なきまでに叩きのめしてやろうという気満々である。
「つか、何? 俺らってそんな風に見られてんの?」
「何で意外そうな顔!? 確かに知らない奴が見たらお前らの仲は最悪だよ! 不良グループのトップとレディースのドンが運悪く同じ高校で鉢合わせたと思い込んでる奴らもいないじゃないさ! けどな、俺らと同学年でそんな風に思ってる奴はほとんどいねぇ! ○高裏のツートップ恋仲説は、俺ら二年の間じゃとっくに定説になってるよ!!」
実際のところ、そこまでの共通認識は広まっていないが、それでも、休み時間のやり取りを好んで見てる奴らの大半は、そういう認識で二人を見ているだろう。
「……マジか?」
「……何そのすっげー嫌そうな顔」
苦虫どころか、ゴキブリでも噛んでしまったかのような顔である。
「ったく、お前ら見る目無さ過ぎだっつの。あいつは俺のライバルで、要するに敵だぜ? 小学校の頃からずっと、それ以上でもそれ以下でもねぇ。つかそれ以下なんて無ぇ。最低の関係なんだぜ?」
「いやだからそれは、お前ら独特のコミュニケーションなんだっていう理解がだな―――」
「それにさ、」
勝也の声のトーンが、急激に落ちた。
健二は息を詰めた。
そして、息を継げなくなる。
睨まれたのである。
底なしの、漆黒の双眸が細められ、眉間に深い険が刻まれる。
勝也にガンを飛ばされて平気でいられる奴など、おそらくこの学校に、たった一人しかいない。
「お前、確か俺とは中学からのダチだよな?」
「あ、あぁ……!」
「だったら、知ってんだろ? 俺が、そういうの無理だって事」
「…………」
勝也が似合いもしない溜め息を吐いて目を背けるまで、健二は呼吸もできなかった。
そして勝也は、持っていたパンをまた食べ始めた。
「ってことで、この話はシメーだ。次こんな話振ってきやがったら歯折るからな」
「うわ! リアルにやりそうで怖っ!!」
そうやって、おどけるのが精一杯だった。




