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転移少女は果てへと至るか  作者: 雰音 憂李
ⅳ 静かなひととき、されど

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44_出立

 五月に入った翌日、酒場に集まった、私たちも合わせた十九人の前で、先生が号令をかけるように言う。

「それじゃ、これより公国救援のための遠征に向かいます。あたしたちは他の班が出立してから向かうので、各自、まずは竹州と公国の境まで向かうように」


 私たち『碧氷の旅団』は桐都から竹州を経て、公国の副都・Vistolen(ヴィシュトレン)を経由し、首都・ベネルーシェへと向かう遠征を、予定通り開始した。

 当然、その旅路は数日で済むはずもない。


 私が――正確には私だけでなくレイも――知らない人とずっと一緒に居ることが不安でたまらないことを知っていた先生の配慮によって、私たちは知己の人間以外の乗らない馬車に振り分けられていた。

 同じ馬車に乗っていたのは、先生とマリさん、そして数日前までの実戦訓練の担当をしてくれていたイツキさんの五人。

 余程のことのない限り、問題は起きないであろうと思った。


 窓辺から見える帝国の街道を見て、不思議に思ったことがあった。

 それは、いくら砂利道であるとはいえ、向こうの世界の、舗装されていない道と同レベルの整備がなされていたことだった。

 帝国による街道の整備は、それほどまでに先進的になっているんだあ、と思うくらいには、であった。


 それを口に出すと、レイや先生には突っ込まれてしまったが。


 二日かけて竹州の中心である筑籠の街へと至り、更にそこから数日かけて公国との国境線である境町へと辿り着く。

 この国の陸の玄関口は全て境町と言うようだから、分かりづらいことこの上ないと思うが、帝国の住人は区別がついているのだろうか。

 この世界の五月は夏の始まりを指しているのだろうか、初夏の暑さも少しづつ顔を覗かせる陽気だった。


「……にしても、随分と人が多いわね。公国全土が、戦火に巻き込まれてるのかしら」

「見てる限りは……そうかも知れません。もしかしたら、桐都には詳細な戦況が後から送られてきているのかも知れませんが、私にはまだなんとも」

 先生の疑問にマリさんが答える。

 確かに、多少のいざこざが見えるくらいには、人であふれかえっていた。


 先生は一息つくと、国境を越えるに当たっての注意事項を話し始める。

「分かっているとは思うけど、この街の中心になっているあの門……あそこを越えれば、公国領へと入ることになるわ。

 当然だけど帝国の領邦外だから、いつも以上に慎重な行動を心がけるように。

 ……特に! そこの第四班の問題児どもは、いつもろくでもない行動しかしないんだから……ちゃんとしなさいよ?」


 名指しされた第四班は、班長――確か、ユリウス君、だったか――は、先生からの忠告を受けてもなお、ヘラヘラと笑っていた。

 まるでそれに同調するかのように、後ろにいた班員たちもクスクスと笑っていた。

 その姿を見て、先生が呆れたようにため息をつく。彼ら五人の態度の悪さは有名であり、『旅団』の内外から問題視、そして白眼視されていた。


「まあ……この際、国際問題にさえしなきゃいいわよ。

 これから、それぞれの班で別々の行動になります。最初の目標地点は、公国の副都であるヴィシュトレン。

 そこで一旦集合してから、首都のベネルーシェへと向かいます。

 恐らく、後続には帝国陸軍の師団、あるいは兵団規模の部隊がじきに入国すると思うし、私たちの前にも、他の武装ギルドも入国しているから。

 後で入ってくる武装ギルドもいるだろうから、まず最初に、各村落の無辜の民には手を出さないこと。

 難民化している場合もあるから、その場合は手厚く保護するように。

 私たちの班ごとの旗は事前に周知してあるので、万一大事(おおごと)になれば、当事者の班の班長、あるいは班の全員が責任を取る必要になります。

 公国の法が適用される場合、は……あんまり変わらないか。最高刑は斬首の上帝国籍剥奪になるわ。

 なので! くれぐれも! 馬鹿な真似はしないように! いいわね!?」


 先生の最後の訓示に、私たち二人以外は一斉に応! と応えた。

 説明の中にさらりと最高刑に関する事項が挟み込まれているのを聞いて、若干寒気がしてきていた。

 私たちがそれまで住んでいた現代の常識で考えてはいけないと、私は改めて思っていた。


「それじゃ、ここから先は各班の班長指示で出立をお願いします。

 あたし達の班は他の班が出国した後に出国するので、その辺り、宜しくお願いします」


「……先生、なんで私たちだけ後なの?」

 他の班が出て行った後に聞いてみると、意外な答えが返ってくる。

「あいつら全員が、信用できるわけじゃないからね。特にさっき注意した落伍班とか。

 そいつら以外にも、怪しいのは結構いるよ。とにかく、サボりたがりの奴らも出て行って貰わないとね」


「……言ってしまえば、私たち以外は、国家への忠誠を試されてるのよ」

 私たち――マリさんは帝国陸軍の軍人なので除く――以外のほとんどの『旅団』の人間は、帝国の中枢から見れば、ただのあぶれ者なのだろう。

 マリさんの補足が、残酷にも思えた。

読んでいただき、ありがとうございます。


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