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番外編 公爵令嬢ロレッタ

いい人とかいい子なんてつまらない。


私は面白いことや楽しいことがとにかく好き。そして人は美しくなくちゃ嫌よ。


私の父のラシーヌ侯爵は、いい人かもしれないけどつまらない人なのよ。

いつも私の顔色を窺うだけでびくびくしている。


私の養父のハウアー公爵は、美しくて威厳があるのはいいと思うけど、王族だけに堅苦しい。

優しいけど厳しいところもあって、侯爵の父よりはマシだから好きよ。


義兄で従兄のイーサンは優しいけれど少し気難しい。

私の我が儘が過ぎると、無視して相手にしてくれなくなる。


怒らせると一番怖いかもしれない。


「父上も叔父上(ラシーヌ侯爵)もこれ以上ロレッタを甘やかさないでください。ゴネまくるなら放置でいいのですよ」


なんてお父様達に言っていたのよ。


それは嫡男として自分が子どもの頃から厳しく育てられたからかもしれないけど。


美形でモテるのに、身持ちは堅くて、なかなか婚約者を決めようとしない。

慎重過ぎるのよね。


だからお兄様もつまらない人なのよ。


それに、お兄様が昔からカミーユ(王女殿下)を好きだということを私は知っていたわ。


私もカミーユは嫌いじゃないわ。


だから私がカミーユの婚約者を奪ってあげたの。

婚約者と破談になれば、お兄様に嫁ぐこともできるでしょ?


それに私も堅物の自分の婚約者は大嫌いだったから、これで破談になれば一石二鳥よ。



私は王族とか貴族はとにかく窮屈で嫌なの。


マナーやしきたりとかが面倒くさ過ぎる。

社交界は面白そうだけど、もっと気軽なパーティーの方がいいわ。


結婚するなら、できれば貴族じゃないお金持ちの人がいい。


ザマーデスに来て知り合った貴族の友人に、豪商の息子がいたの。


その人は超美形で大人で物凄くお洒落で、毎日楽しいことばかりしている富豪という、私の理想を絵に描いたみたいな人だった。


貴族の令息なんて目じゃないのよ。


彼には他にも恋人がいたけど、私が隣国の公爵令嬢だと知ると、彼の方から近寄って来てくれたの。


「私、あなたと結婚したいわ」と言ったら「ああ、いいぜ」って承諾してくれたのよ。


それから毎日楽しく彼の豪邸で遊んで暮らした。


私はとっても幸せだった。私にうるさいことを言う人は誰もいなかったから。


そうしたら、突然警団(ザマーデスではそう呼ぶ)に踏み込まれて私まで捕まってしまった。


「どうなっているの!?」

「お遊びは終わりだ」


彼は富豪だったけれど、悪どいことをして儲ける詐欺師だったの。

ザマーデスで知り合った貴族達も被害者だったみたい。


保釈金も出してもらえず、ハウアー公爵家から絶縁されてしまったし、侯爵も大人しく刑を受けろとか言って来て、本当に信じられない!


いつか復讐してやる!!って思ったわ。



捕まってからしばらくして、私宛に無名で差し入れが届いたの。


それがよく知らない修道院のビスケットで、聞いたことがなかったけど、どうやらマセットでは有名な『奇跡のビスケット』とかいうものらしかった。


私はひらめいて、そのビスケットが欲しい人に高い値段で売りつけたの。

一箱36枚入だったのを、一枚単位で競りにかけて一番高値の人に売りつけて、最後は空箱まで売ったわ。


留置場にいるのにお金を持っている人って結構いるものなのね。


それで保釈金ができて、私は自由の身になったの。


本当に奇跡みたいでしょ?



「あんたはビスケットは食べなくていいのかい?」


ビスケットを食べて持病が治った看守にそう言われて、一枚だけ取っておくことにした。


外に出てから味わって食べようと思っていた。


釈放される時に手荷物を返されたので、宝石とドレスは取り敢えず換金した。

これからどうしようかなって思っていたら、目の前の店でその場で引ける宝くじを売っていた。


運試しに買ってみたら、大当たり!


私ってツイているわ!


当分遊んで暮らせるだけのお金が手に入ったの。


そのお金でロレッタとはわからないように顔を変える手術を受けて、名前も変えて暮らすことにした。


私はこれから憧れの平民となって自由に生きてゆく。


お店を買ってオーナーになって、私は働かないで儲けて遊ぶの。


そして平民の素敵なお金持ちと結婚してみせるわ。



ビスケットは食べずに御守りにしようと思う。


この『奇跡のビスケット』を差し入れてくれた人に心から感謝するわ。



(了)

ロレッタお嬢様は根は悪くはないけれど、とにかく短絡思考、無駄にポジティブでアクティブだからトラブルメーカーになって行く人。

それでもなぜか強運(?)の持ち主なので、そのせいで反省もせず懲りずに欲望のままに突き進むのでした。


実際にいますよね(笑)、こういう人が······。



最後までお読みくださってありがとうございました!

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