OLF内戦闘
さて、正体不明船改め海賊船が近づいてきた事により新たな事実が判明した。それは海賊船が2隻だった事だ。
うんっ、これは海賊の常套手段です。海賊って2隻以上で艦隊を組んで獲物に近づく時、相手に過度に警戒されないように思いっきり接近しあって隻数を誤魔化します。これは連邦宇宙軍もよくやる手なんだけど、その接近間隔は宇宙軍より海賊たちの方が遥かに近い。もう、お前らロープで繋がっているんじゃないの?ってくらいくっついて近寄るのだ。そうゆう意味では海賊って操船に関してはプロよね。もしくは馬鹿。
さすがは張ったりで世間を生き抜いているだけの事はある。あいつらの辞書には安全基準という文字はないのかね。あっ、そもそも馬鹿だから辞書を持ってないのか。あららっ、勉強嫌いの学生みたいだわ。
そんな漸く正体をあらわにした海賊船のサイズは10万トンクラスで隻数は2隻。成る程、2隻併せて20万トンね。はははっ、優秀じゃないか重力センサー。足し算ができるとは大したもんだ。まっ、それだけ海賊船が接近していたって事なんだろう。
「おーっ、10万トンクラスが2隻だって。これは相当に大手ね。ん~っ、どこの組織だろう?」
私は海賊船のトン数と隻数から向かってくる海賊の組織を推測する。でもそんな私の問い掛けにリリィが答えてくれたわ。
「縄張りからしたら、ここいらは『マオーン・シンジゲート』のシマだけど、あいつらはこの前、連邦宇宙軍とやりあってかなり戦力を削がれたらしいから連邦関係の船は襲わないと思うわ。」
「そうかぁ、でもそうゆう意味ではここは『カリビアン・パイレーツ』の勢力範囲外だし。となると残る大手は・・。」
「ワイルド・ブラザーズっ!」
私とリリィはハモりながら予想される海賊の名前を挙げた。うんっ、私たち息がぴったりねっ!・・でもあんまり嬉しくない。だってリリィとはさっきまでアンソニーの件で喧嘩してたからねぇ。
宇宙海賊『ワイルド・ブラザーズ』はここいらの宙域において『マオーン・シンジゲート』と縄張りを張り合っている最近頭角を現してきた新興勢力だ。連邦の公式情報によると保有する海賊船の数は200隻以上。構成員の数は2万人を超えるとある。この数値が本当なら確かに海賊業界でも一大勢力だ。数値だけなら海賊業界の四天王のひとつに数えられるわね。
因みに海賊業界の最大手は『カリビアン・パイレーツ』だ。それと双璧を成すのが『聖銀河教会』。うんっ、なんか海賊らしくないネーミングよね。当然ながら銀河教会という名前の正式な宗教団体は存在しません。
そして規模としては少し小さくなるけど『マオーン・シンジゲート』と『ワイルド・ブラザーズ』が続く。昔はこれらとは別に『ドレイク・ファミリー』とか『ムスタファ・パシャ』なんていう大海賊もいたけど、今は宇宙軍に殲滅されて廃業したか残っていても落ち目です。
これ以外にも海賊組織は沢山あるけど、それらは殆ど地域限定の雑魚海賊だ。はい、海賊業界は寡占化が進んでいるのよ。なので規模が小さいところは大体大手の傘下に吸収合併されています。だから海賊の所属に関してはこの四つの組織の名を挙げれば大抵は当たります。
あっ、『イースト・インディアナ』と『神聖天空騎士団』てのが辛うじて中堅どころとして独立しているかな。後は『大日本帝国神軍』なんてゆう海賊もいた気がする・・。でも最近耳にしないから生き残っているかは不明です。
さて、私たちが向かってくる海賊船の所属に関して推理をしていると、ご丁寧な事に向こうの方から答えを教えてくれました。
「あーっ、聞こえるか?こちらはワイルド・ブラザーズ所属の『ダークナイト・ガブリエル』だ。既にお前らの頭は抑えた。なので大人しく制圧隊を受け入れろ。抵抗したら一発お見舞いするからな。」
はい、停船命令です。とは言っても実際は速度とベクトルを同調させて相対的に止まっているようにするだけなんだけどね。でも、あいつらこっちからの問い掛けは無視したくせに命令してくるとはいい度胸じゃない。やっぱりミサイルで歓迎すべきか?
だけどそんな私の考えを無視してリリィがさっさと返事を返してしまった。
「いや~ん、海賊だなんて怖いですぅ~。大人しくしますから乱暴しないでぇ~。リリィ泣いちゃいそう。」
うんっ、ちょっとずっこけた。多分海賊も同じだろう。こいつ、言うに事欠いて海賊相手になんつう対応をするんじゃっ!しかも画像通信じゃないから席にふんぞり返って鼻くそほじりながら言ってるよ。凄いなそのメンタルはっ!お前には乙女の恥じらいってもんがないのか?
「なっ、なんだぁ?う~ん、まあいいだろう。これから制圧隊を送るからな。ハッチを開けておけっ!もう一度言うが抵抗したら皆殺しにするからなっ!」
「は~い、わかりましたぁ。お待ちしておりまぁ~す。」
そう言うとリリィはミサイルの発射ボタンのセーフティーを外してミサイルサイロの装甲扉をオープンにする。うんっ、こいつ言葉と行動が一致していない。いや、歓迎するという意味ではあっているのか?
そしてまさか私たちが歓迎の用意をして待ち構えている事を知らない海賊の制圧隊は暢気に2機の輸送機でラブリー・ペガサスに向かって来た。
う~んっ、海賊船本体は接舷させてこなかったか。中々用心深いじゃないか。
さて、海賊の制圧隊を乗せた輸送機はリリィが放った近接防御用のミサイルで呆気なく粉々に爆散した。うんっ、ここら辺は本当にあっけないから描写しません。だってどうせならみんなだって宇宙船同士のバトルを見たいでしょ?それに無防備に近づいてくる輸送機を撃破したからって全然自慢にならないし。
あっ、でも輸送機の機種は私たちのおフネにも積んであるやつと同型だった。う~んっ、さすがはベストセラー機だね。海賊も使っているのかぁ。
「まずはヒヨコを撃破。次は親鳥を唐揚げにしてあげるわっ!エルっ!戦闘回避機動は任せたわよっ!」
何人かの海賊を宇宙の藻屑にしたと言うのにリリィは何の感情も表に出さずに海賊船を親鳥呼ばわりしてる。はははっ、さっきの猫かぶりはどこにやったんだ?
でもまぁ、そんな事はどうでもいいわ。と言うか、これからはちょっと真剣にやらないといけないので、いちいちからかってなんかいられないっ!
さて、輸送機を撃破された海賊たちは慌ててデゴイミサイルを放出しながらラブリー・ペガサスから距離をとろうとしている。因みにデゴイミサイルってなに?って人は自分で調べてね。でもそれすら面倒だという人用にさらっとだけ説明します。デゴイミサイルとは欺瞞用のミサイルの事です。はい、これで意味が判らない人は多分調べても無駄だから忘れていいわ。
そんな海賊船に対して私はミサイルの最適投射位置へとラブリー・ペガサスを持っていくべく艦の位置を変えていった。まっ、基本ミサイルって誘導されるから射程内ならどこから撃ってもそんなに変わらないんだけど、お値段の事を考えると出来れば無駄弾は撃ちたくない。
でもだからと言ってケチると失敗した時に痛い目にあう。ここら辺は痛し痒しだ。なので命中させる確率を上げる為にも出来るだけ相手に対して有利なポジションから攻撃したいのよ。
「まずはジャブっ!そして右フックで決めてやるわっ!」
はい、今リリィは格闘ゲームでもしているかのように火器管制システム相手に指示を出してます。まっ、火器管制システムはボイス入力じゃないので実際の指示はタッチパネル上での操作です。なので言葉は関係ないです。所謂独り言みたいなもんね。
因みに今のリリィの言葉を翻訳すると、まず多弾頭ミサイルで相手の迎撃レーザー網の対応能力を飽和させて、そこに間髪入れずに本命の対艦ミサイルを撃ち込んでやるって言ってます。う~んっ、リリィのあの独り言の意味が判っちゃうなんて私たちも付き合いが長いわねぇ。
「エルっ、右回りでミサイルが来るわっ、数量12っ!任せたわよっ!」
あーっ、はいはい、了解です。攻撃はリリィ。防御は私ですか。まっ、どっちでもいいけどね。
なので私はリリィがミサイルを発射し終わるのを待ってラブリー・ペガサスをぐーっと螺旋軌道を描くように加速させた。そしてミサイル迎撃用の近接防御レーザー砲を自動モードで発動させる。
あっ、ミサイルを発射したところの描写も欲しかった?えーと、ドゴォーっ!って感じでした。いや、実際は音なんかしないわよ?だってここ、真空空間だもの。
でも艦内を伝わる振動は肌で感じられます。それでもミサイルサイロからこのブリッジまで150メートルは離れているから大したもんじゃないです。ボケっとしていたら気づきもしないはず。
そしてリリィはミサイルを24発も発射していました。内訳はかく乱用の多弾頭ミサイルが20発。本命の対艦ミサイルが4発です。はははっ、金額を計算するのが怖いな。
でもまぁ、これで10万トンクラスの海賊船を2隻撃破出来たならコスパはかなりいい。でも多分無理ね。2隻の操船技術から推測するにあいつらは相当な腕と経験を持っているはず。多分連邦宇宙軍との実戦も経験しているはずだ。当然、防御システムだって高性能なものを装備しているだろう。
だけど私は慌てない。はい、そんなのは既に織り込み済みなのよ。海賊との戦闘では相手を舐めちゃ駄目なの。虎はウサギを狩る時も全力で襲うって言うけど、それは宇宙船同士の戦闘でも同様です。だって宇宙船って1発ミサイルが当たれば忽ち機能の半分を失うからね。それくらい真空という場所は過酷なのよ。
なので対ミサイル戦では船に直撃される前に撃ち落すのが鉄則です。そしてそんな時に頼りになるのが近接防御レーザー砲なんだけど、OLF内ではちょっと辛いものがある。だって速度を同調させているとはいえお互い光速の何倍もの速度でかっ飛んでいるからねぇ。OLF内ではレーザーのエネルギー光線ってカメより遅いんです。だから撃った途端後方に置いて行かれます。
ならなんでそんな使えない装備を準備したかというと、これにはちゃんと抜け道があってマリー・アフロディーテが影響を及ぼしている範囲内ならレーザー砲もその能力をULF、つまり光速以下領域と同等に発揮できるんです。はははっ、意味解った?まっ、ざっくり言えばラブリー・ペガサスから100キロメートルくらいの範囲ならレーザーも役に立つて事です。
だけどミサイルだって負けてはいない。ミサイル単体には光速を突破できるような能力はないのだけどOLF内では何故か慣性保存の法則が成り立ちます。なので発射した艦の速度を保持して且つミサイルの加速度を加味した速度で相手に向かってゆく。
そんなミサイルの単体最終速度は速いやつなら100km/sを軽く超える。ラブリー・ペガサスの巡航速度である8400km/sと比較するとカメのように遅いと感じるかもしれないけど、ミサイルはその発射母体であるラブリー・ペガサスの速度を保持したまま更に増速してくるので燃料が残っている限りラブリー・ペガサスより遥かに速い速度で飛翔するのだ。
もっともその速度まで加速するのには2分くらいかかるから、その間にミサイルは距離として7千キロメートル程飛翔する。なのでミサイルに最大限の速度を持たせて敵に突っ込ませるにはそのミサイルに積んである推進剤の燃焼完了時間ぎりぎりとなる辺りの距離で発射するのが一番効果的なのだ。なのでさっき海賊たちはラブリー・ペガサスから距離をとったのよ。
因みにOLF内で外れたミサイルは燃料が切れて加速が出来なくなると空間抵抗により速度がだだ落ちする。そして光速以下まで速度が落ちた途端、空間に衝突して爆発します。しかも核融合爆発ね。これは弾頭に核爆弾を装備していたんじゃなくて通常弾頭でも核融合爆発を起こします。つまりマリー・アフロディーテの庇護から離れたものは、光速以下の速度になった途端、そのミサイルを構成していた金属原子が一気に圧縮され、その結果核融合を引き起こすのだ。凄いね、空間の壁って。OLF内では下手にポイ捨てもできないわ。いや、別にOLF内じゃなくてもしちゃ駄目だけどね。
しかし、鉄って科学的には一番核融合を起こし難いって聞いた事があるんだけど、それらすら空間の壁は核融合させちゃうんだ。いやはや、半端ないわ~。
で、ならその爆発エネルギーを敵に向けて使えばいいんじゃないかと思ったかもしれないけど、高々500kg程度の質量では如何な核融合爆発でも宇宙空間では線香花火より弱弱しい。しかもその質量の殆どが熱エネルギーに変換されちゃうから相当近くで爆発しないと宇宙船にダメージは与えられないのだ。
まっ、中性子とかは飛び出してくるけどマリー・アフロディーテが稼動していれば全く影響はない。だって中性子は質量を持っているからマリー・アフロディーテが展開する重力捕獲フィールドに弾かれてしまうからね。あれ?説明してなかったっけ?ん~っ、駄目だなぁ、ナレーションの人は何やってんだ?
因みにULF内で外れたミサイルはそのままです。自爆させません。何故ならその方が安全だから。自爆させちゃうと破片が爆散しちゃってかえって面倒なのよ。なので宇宙空間で使用するミサイルや砲弾なんかには連邦内の規則としてそうゆうシステムを組み込んでおく事が定められています。
あっ、起爆装置は不活性化させるので仮にぶつかっても爆発しません。でも質量と速度は維持されているから危ない事には変わりないんだけどね。なのでみなさんもくれぐれも不法投棄はしないように。巡り巡っていずれ自分に帰ってくるぞっ!
さて、ラブリー・ペガサスに向かって来た12発のミサイルの内、半分は私が迎撃ミサイルで破壊した。そんで残りのやつも近接防御レーザー砲が撃墜しました。でもその中で1発がギリギリだったのは近接防御レーザー砲を担当していたアッシーの名誉の為に黙っていてやろう。まっ、同じAI同士での騙し合いだからね。こうゆうのは基本攻撃側が有利だからさ。
「ミサイルは全数撃破を確認っ!ウチのはどう?」
私は取り合えず一仕事終えたのでリリィに自慢を兼ねて報告する。おらおらおらっ、私はきっちり仕事したんだからあんたもちゃんと結果を出さんとアンソニーから手を引いて貰うからねっ!と言うか引けっ!
だが、私の願いも虚しく、リリィもちゃんと結果を出してました。まっ、24発も撃ったからな。これで外していたら新人たちに笑われてしまう。実際、私も新人の時に笑ったもんな。
うんっ、あの先輩はとんだ大恥を掻いたもんだ。もしかしてヤラセだったのかしら?新人に失敗するとこうゆう目に会うと身をもって示したのかもしれない。だとしたら大したもんだ。先輩の鑑だね。
で、リリィが発射した24発のミサイルに対し海賊たちは当然迎撃ミサイルで応戦してきたらしい。だけど連邦宇宙軍の最新アルゴリズムを導入しているラブリー・ペガサスのミサイルはそんな迎撃ミサイルをひらりとかわして突入、見事欺瞞用のデゴイを撃沈しました・・、ってちょっとっ!私さっき自慢してやったのにその体たらくはなんじゃいっ!ちゃんと仕事せんかいっ!
はい、ちょっと口汚く罵ってしまったけど、ここはデゴイの欺瞞性能の方が上だったという事にしておこう。そもそもデゴイを撃破したミサイルはかく乱用のやつだしね。だからある意味ちゃんと仕事はした事になる。
だってその後、本体である海賊船にちゃんと本命の対艦ミサイルが命中したんだもん。これは先行したミサイルがデゴイを潰した事により本物を見破りやすくなったからに他ならない。うんっ、さっきはすまんかった。お前の仕事は大したもんだったよっ!
さて、そうは言っても残念ながら海賊船に命中した対艦ミサイルは1発だけだった。他のミサイルは全て海賊船の近接防衛レーザー砲にて迎撃されてしまった。でもまぁ相手は10万トンクラスが2隻だからね。初っ端の手合わせで半分脱落させたんだから大金星と言える。
とは言っても当たりどころが良過ぎたのかミサイルが命中した海賊船は爆発もせず未だに航行を続けている。いや、ちょっと針路が維持できていないか?あーっ、微妙に離れていくな。うんっ、これなら大丈夫。あれが海賊たちの欺瞞でなければ後数分であの船は戦闘可能範囲から外れます。
となれば残りは1隻。だけどそんな手負いの海賊船はなんと最後の足掻きだろうか6機の艦載機を飛ばしてきたのよ。でも海賊ってやっぱり馬鹿なのか?ここってOLF内なのよ?マリー・アフロディーテの保護下から出た途端、艦載機なんてあっという間に置いてかれるつうのっ!
だけど海賊も全員が馬鹿ではなかったらしい。なので艦載機もマリー・アフロディーテの保護下ぎりぎりのところで引き返していきました。ただ置き土産としてミサイルを発射しやがったわ。その数全部で24発。むーっ、海賊も結構お金持ちなのかしら?
でもまぁ、それにより私は海賊たちの意図を理解した。つまり多分、私たちのミサイル攻撃により海賊船自体のミサイルサイロに何か異常が生じたんだな。もしくは誘導管制に不都合が生じたのか。だから海賊船本体のミサイルが使えなくなったのだろう。どちらにしてもラブリー・ペガサスが放ったミサイルはきちっと仕事をしてました。
でもそれでも手を変えて攻撃してくるんだから海賊も大したものと言える。いや、別に褒めてなんかいないわよ?だって相手は海賊だもん。あんなやつらはゴキブリ以下だからねっ!
しかも無傷だった方の海賊船も艦載機の攻撃に合わせるかのようにミサイルを発射してきた。しかもこちらは36発もであるっ!
こらこらっ!お前らは対費用効果って言葉を知らんのかっ!そのミサイルのお金を誰が払うと思っているんじゃいっ!
いや、今は別に海賊たちのサイフの心配をしている場合じゃなかった。あれが命中したらミサイルの代金どころじゃない損害を会社に与えてしまう。うんっ、値切ったとはいえラブリー・ペガサスは高かったんだからなっ!当たってたまるかっ!と言うか外れろっ!
本当は宇宙郵便船『レッドペイパー』編は全て投稿するつもりだったんですが事情により出来なくなりました。
一応2022年の春から再開予定ですけどどうなるか未定です。うんっ、ちょっと暗雲が立ち込めているんですよ。




