へっぽこ貴族
街の入り口から続く道を歩いているのだが
露店が多い。
それも食べ物ではなく鉱石や武器、装飾品等が多いのだ。
大きな馬車を横付けして購入しているものも多く見られる。
恐らく他国で売り捌くための物なのだろうが、あんなに購入して大丈夫なのだろうか。
露店を眺めながら歩いていると、遠くから馬車が走ってきた。
「どけ! グラートル元帥がお通りだ! 道を塞ぐ者は死罪とする!」
物騒な…。
死罪にされるつもりはないし、絡まれても面倒なので横に避けておこう。
「待ちなさい!!」
えっ?
「グラートル元帥! 貴方の悪事の証拠は既にこちらにあるのよ! 他国に逃げようとしても絶対に許さないんだから!」
ああ、そっちね。
丁度いいタイミングで俺の後ろから声がかけられたので、てっきり俺が何かしたのかと思ってしまったではないか。
少女の声に反応してか、俺のすぐ目の前で馬車が止まった。
「なんだ、また貴様か。 いくら探しても無駄だといったであろう。 その様な証拠など在りはしないのだからな! ハハハハハッ!」
「証拠なら既にあると言った! 声も聞けなくなったのか!」
「ふん! 男爵令嬢如きが偉そうに吼えおるわ。 そこまで死に急ぎたいのなら良いだろう。 この私自らの手で介錯してやる!」
少女も受けて立つつもりか、元帥とやらを見据えて動こうともしなかった。
何もなければ、街の探索で穏やかな一日を過ごせたというのに。
よりにもよってこの二人は、俺を挟んで前後に陣取って口喧嘩をしているのだ。
それだけならば構わないのだが、両者ともに武器を構えたことがいけなかった。
直線で走ってきて切り付けた場合、間違いなく俺が斬られることになる。
勿論、いくら油断していたとしてもその様なことはありえないのだが…。
俺は気にしない。
だが、それを黙っているペットはうちにはいないのだ。
双方の随分と綺麗に装飾された剣を、ポチが粉砕してしまったのだ。
実際には、ただ食事をしただけなのだが…。
そして、双方の視線は俺に向けられた。
「貴様、いま何をした。 言わねば極刑に処すぞ!」
「そうよ! よくも我が家の家宝を壊してくれたわね! 絶対に許せない! ここで死になさい!」
こいつら馬鹿じゃねーの…
「弁償はしない、だから君達との関わりもこれまでだ!」
極力穏便に、双方のミスを慰めあってくれればいいのだが
そういうわけにもいかないようだ。
「貴様は何者だ? 只者ではない予感がする」
無駄に感が鋭いのは、女神様の悪戯なのだろうか。
「うるさいな。 ただの馬鹿者だよ、愚か者さん」
ざまあみろ、このへっぽこ貴族め。




