キッチンカー
王宮でお寿司を振舞った後、用事も終わったので露店通りへと足を進めた。
今日は何を売ろうか。
おでんの仕込みはしていないので、仕込み要らずの手軽に出せるメニューが欲しい。
取寄せで購入できる物を見ていくと、金貨五十枚で買えるものがあった。
キッチンカーだ。
今の屋台には愛着もあるので、手放したくはないのだが
移動手段にもなるキッチンカーのことを考えると悩んでしまう。
移動の燃料はガソリンでいいのだろうか…。
詳細を確認すると、魔力で動くと書いてあった。
これは…。
もしかしたら魔石の使い道がこれなのかも。
現在は、資金も潤沢なので
多少悩みはしたが、キッチンカーを購入した。
このキッチンカーだが、使用したい料理によって内装が変わるという。
これは便利だ。
これ一台で、いくつもの調理方法で料理が出来るのだから
金貨五十枚でも安いといっていいだろう。
そして、今日の売り物も決まった。
まだ陽は高く、ジリジリ照り付ける太陽が肌を焼く。
こんな時はアイスクリームだ!
ソフトクリームではなく、アイスクリームだ!
本心では、デッシャーをにぎにぎしたいだけなのだが…。
メニューはメジャーなところを選択した。
バニラ・チョコ・ストロベリーの三種類だ。
購入したキッチンカーは、魔石を使わなくても動いてくれた。
通りを最徐行で走っていると、住民達が物珍しさに釣られて追いかけてきた。
「アイスクリーム。 アイスクリームはいかがですか。 暑くて辛いそんな日に、安くて冷たい至高のおやつ。 アイスクリームはいかがですか」
適当に喋りながら車を走らせ、露店通りの端に車を止めた。
今日はこれからの開店になるが、既に追いかけてきていたお客さんが目の前に沢山いる。
「なあ、ここはクロジク…なのか?」
ああ、そうか。
屋台の外装どころか屋台そのものが変わってしまったのだから、わからないのも無理はない。
「ええ、繁盛してくれたのでこんなに立派な屋台になりました。 これも偏にお客様のおかげです」
「そうか。 今日も変わったものを売っているが、美味いのか?」
「それはお客様次第ですかね。 俺の好きなものではありますよ」
「はっはっは! それなら心配いらねーやな! よし、一つずつ売ってくれ!」
最初に付いたお客さんのおかげで、未知の食べ物であっても躊躇う人は少なかった。
今日も気分良く商売をしていたのに、招かれざる客というものは本当に空気を読んでくれない。
「おい、貴様! 昨日はよくも脅かしてくれたな」
ルカリスだ…、ダブルルカリスだ…。
「おやおや、これはルカリスさん。 お出かけですか? それともアイス買います?」
「ふざけるな! ばかにしやがって!!」
怒っていたので頭を冷やしてもらおうと、アイスをサービスしようとしたら手を弾かれた。
手渡そうとしたアイスが地面に転がる。
「あーあ、散々忠告はしたのに。 これは喧嘩売ってきたってことでいいんですかね、アローネさん」
「気付かれていたか。 透殿、こやつ等は既に国民ではありません。 お好きなように処分なさってください」
その言葉を聞いた俺の口角が吊り上げた。




