塩ラーメン
今回はお客さんが既に並んでいるので、商品を試食させることは出来ないのが残念だ。
今回の焼鳥は、全て塩にしてある。
まだ焼鳥の味を知る人がいないのだから、まだタレで出す時期ではないと考えたからだ。
珍しさに押し寄せるお客さんにの注文を聞き、せっせと商品を受け渡す。
普通に焼けば、それだけで時間がかかってしまうので
こっそり魔法を使って、加熱の時間を早めている。
その忙しさを抜けると、焼鳥も在庫が十本くらいにまで減っていた。
しかし、残った十本も少し待つだけで売れてしまった。
最初に焼鳥を買った人が、買いに戻ってきたのだ。
これならば、焼鳥の方も問題なく売れる。
今日の売上げは、銅貨で1400枚だ。
焼鳥を少し割高にしていたせいで、商品自体は少なかったのに
昨日の稼ぎの半分近くまで稼いでいる。
そして、今日のお昼ご飯だ。
今日はラーメンを食べるんだ!
出汁の中で泳ぐしらたきを見ていて、どうしても食べたくなってしまった。
久しぶりのラーメンなので、あっさり塩味にしておこう。
「マーシャさんも食べますか? ラーメンっていうんですけど、美味しいですよ」
マーシャさんは少し考えると
「貰ってばかりも悪いし、食事代くらいは払わせてくれないかい?」
気にしてたのか…。
マーシャさんの方が年上に見えるし、マーシャさんも年下と思っているのだろう。
そう考えれば、少し失礼な気がしないでもないな…。
「わかりました。 では、銅貨十枚になります」
勿論、利益はゼロだ。
「はい、十枚ね。 ありがとう!」
マーシャさんから銅貨を十枚受け取り、仕舞った。
「これも君の故郷の食べ物なのかい?」
「ええ。 簡単に食べられる物もあれば、手間をかけた物もあります」
では、とフォークでラーメンを食べ始めるマーシャさん。
俺も麺がのびてしまう前に食べよう。
二人でズゾゾと、音をたてて食べていると
屋台のカウンターから視線を感じた。
「えっと…、今日は完売してしまって閉店なんです」
お客さんだと思い、失礼のないようにこちらから声をかけたのだが
「知ってるさ、知っているとも。 客が並んでいないのだ、確かに完売したのだろう。 しかし、そこに珍しい食べ物があるじゃないか」
何だこいつ…、珍しい食べ物ってラーメンのことか?
「悪いがこれは売り物じゃないんだ。 次の営業は明日の予定だ」
接客にはあるまじき態度だが、嫌な予感がしたので突き放すような態度で接した。
「ははは、明日の予定ということは材料はあるのだろ? 問題ないではないか!」
「悪いがこれは売り物じゃない。 今のメニューは、おでんと焼鳥だけ。 それ以外は出してないよ」
断っているはずなのに、なかなかしつこいぞこいつ。
「何を口論している! 露店通りでの治安を乱す行為は許されていないぞ!」
聞いたことのある声だった。
声の方を向けば、アローネさんが私服で立っていた。




