うな重
これはどういうことなのだろうか。
先日とは違った場所に屋台を設営したわけだが
まだ具が温まっていないにもかかわらず、既に長いお客さんの列が出来ていた。
大丈夫だ、今日は先日の四倍近く仕入れてある。
牛筋の準備も万端だ!
暫く待ち、具も温まったので販売を開始した。
「ただいま開店しました! ご注文をどうぞ!」
「横で物を売ってもいいかい?」
せっせとお客さんの対応をしていると、横から話しかけてくる人がいた。
先日、横で指輪を売っていたお姉さんだ。
「あ、こんにちは! 先日はお世話になりました! うちの横なんかでよければどうぞ!」
「いやいや、こっちこそご馳走様でした。 有難う、君のところは人が並ぶからね。 待ち時間でじっくりと選んでもらえてさ、売上げも伸びるんだ」
なるほど、そういう効果もあるのか。
「気付いてなかったのかい? 他の露店でもそうさ、列が出来れば物も売れるのさ」
「あはは、俺なんかが役に立てているのなら光栄です」
当たり障りのない会話を交わし、お互い販売に戻った。
多く仕込んだだけあって、人が多くても夕方近くまで戦うことが出来た。
未だ長い列を作るお客さんに閉店を継げて、少年がいつ来てもいいように出汁はしっかり取って置く。
本日も完売!
売上げは、銅貨で3865枚だ。
換算すると、金貨九枚 銀貨十三枚 銅貨五枚になる。
金貨一枚分を仕入れに使ったので、純利益が金貨八枚を大幅に超えた。
本日も大儲けだ!
今日のお弁当は何にしようかな…。
そうだな、今日は結構疲れたから精の付くものが食べたい!!
ぱっと思い浮かんだのが、土用の丑の日だ。
うなぎを食べよう!
安すぎず高すぎずのラインを狙い
結局、銀貨二枚もするうな重を購入してしまった。
勿論、隣のお姉さんも分も忘れない。
「お姉さん、遅くなっちゃったけどお昼でもいかがですか?」
声をかけると、笑顔で答えてくれた。
「いいのかい? 昨日も貰ったばっかりだからさ、ちょっと気が引けちゃうんだよね…」
しかし、その顔は笑顔である。
「ええ、今日のも美味しいと思いますよ。 美味しい物を食べて、明日の活力にするんです」
そしてかなり遅くなったが、お互いに名乗りあった。
そこでお姉さんの名前は、マーシャということがわかった。
のんびりとお話をしていると、野生の少年が現れた!
昨日の少年だ。
「やあ、待ってたよ。 スープは残してあるから、好きなだけ持って行っていいよ。 あと、これな。 俺がこの街にいる間は食うものに困らせないからな」
俺は子供が嫌いだ。
最近の子供は言うことも聞かず、最低限のモラルすら身に着けていないことが多い。
それが酷く気に入らないのだ。
しかし、例外もある。
心根の優しい素直な良い子は、どの世代にも好かれるのだ。
この少年は、その例外に当たる。
だから偽善だとしても、束の間の幸せであったとしても
俺は少しでも支えたいと思ったのだ。
「またお弁当まで…、本当に有難うございます!」
「ああ、いいさ。 良い子は元気に育つのが仕事だからな」
こうして、今日も少年を見送るのだった。




