駅弁
「やあ、おかえり。 スープをあげる前にちょっと聞いていいかい?」
面倒を見ている人数を確認したかったのだが、少年の肩が跳ね上がった。
「ああ、大丈夫。 スープは持っていっていいよ、ちょっと聞きたいことがあっただけなんだ」
少年はほっとした表情を見せて、口を開いた。
「ありがとう! 何が知りたいの?」
ちゃんと礼を言える子が、路上生活しているのは少し心が痛む。
「君の兄弟の人数を知りたいんだ。 足りなくて喧嘩になったら辛いだろ?」
少年は、俺の質問に対して首を縦に振った。
「人数は、僕を含めて八人です」
「あれ? 十人はいなかったっけ?」
お姉さんが横から顔を出してきた。
「確かに最初はいたけど…、食べ物を十分に分けることが出来なくて五日前に…」
そっか、とお姉さんは呟いたが
その表情は、明るかった先程とは真逆のものだった。
「そっか、八人か。 ちょっと待っててくれ」
暗くなった雰囲気を紛らわすために駅弁を購入。
カニとイクラがたっぷりのった駅弁、十個で銀貨五枚だ。
辛いことや悲しいことがあった時は、美味しいものを食べるのが一番だからな。
「ほら、これ持っていきな! 八人分だ!」
購入した駅弁の内、八個は少年に持たせた。
「いいの? 嬉しいけど売り物なんじゃ…」
「ああ、今日は稼ぎが多かったからな。 幸せのおすそ分けだ、持っていけ。 それと…」
横を向き、お姉さんにも一つ渡した。
「色々と教えてもらったお礼です。 美味しいんで、よかったら食べてください」
これは、少年が気にし過ぎないようにするためのものだ。
お姉さんもそれに気付いたのか、遠慮なく受け取ってくれた。
「ありがとうございます! 何か出来ることがあったら、いつでも言ってください!」
そういって何度も頭を下げ、少年は兄妹達と一緒に帰っていった。
「私まで貰っちゃって本当に良かったの?」
少年が見えなくなってから、お姉さんが聞いてきた。
「いいんですよ。 これは日持ちしないので、二つあっても俺は食べきれないですから」
お姉さんは首をかしげている。
わかる、わかるよ。
日持ちしないのに、なぜ十個も持っていたのか気になっているのだろう。
「気になることがあるとは思いますが、これに関しては内緒です」
「わかった、気にしないことにするよ。 丁度お腹も空いてるし、食べてもいいかな?」
どうぞ、どうぞと勧めて一緒に食べる流れになった。
あー、久しぶりのお米の味だ。
「これはカニで、こっちはイクラって言うんです。 俺の大好物なんですよ」
こうして話に花が咲き、楽しい食事の時間は過ぎていった。




