おでん
開店から数時間、人の列は更に長くなっている。
道幅は広いが、道路の左右両方に露店が並んでいるため
この列が邪魔になっている気がしてならない。
しかし、それもあと少しで終わりだ。
大量に仕入れたおでんの具も、既に底をつきかけているのだ。
初日なので、そこまで売れるとは思っていなかったので
煮込んでいない牛筋だけは、すぐに出せないのでストックがたくさんある。
そして最後におじいさんが購入した、たまごとこんにゃくで今日は閉店だ。
「大変お待たせして申し訳ないのですが、具が無くなってしまいました。 明日もまた販売しますので、どうぞよろしくお願いします」
正面に向かい大声でそう言うと、列はばらけていった。
出汁を別の鍋にあけ、おでん鍋を綺麗に洗っていく。
片付けをしていると、屋台の前には小さな男の子が立っていた。
「すまんな、今日は出せる物が無くてな」
お客さんだと思い、声をかけておいたのだが…
「お兄さん、このスープは売らないの?」
スープって…出汁のことか?
「ああ、飲めなくは無いが…」
蓋をしていたわけではないので、衛生的に問題があるかもしれない。
「貰ってもいいかな…? 弟達が腹を空かせているんだ…」
どうしようか…。
捨てるものとはいえ、へたに食べ物を与えていいものかと悩んでしまった。
すると、横のお姉さんからも声がかかった。
「もし、問題が無ければ分けてやってくれないかい。 この子はね、この辺の孤児を纏めて面倒を見ているんだよ」
豊かに見えたこの街でも、ストリートチルドレンは少なくないそうだ。
他の露店でも、あまり物を分けてあげているそうなので
それに倣って、俺も少し分けてあげよう。
「わかった、鍋を持っておいで。 スープだけじゃ足りないだろ?」
俺の返答を聞いた少年は一度笑顔を見せて、走って鍋を取りに行った。
「お兄さん、ありがとう。 私たちもあの子達が心配でね…。 だけどさ、私たちもその日を生きるので精一杯なんだ。 養う余裕さえあれば、一人くらいは受け入れられるんだけどね…」
「いいんですよ、俺なんかで役に立てるのなら…。 新参者らしく、先輩方に倣いますとも」
チャリチャリと銅貨を数え終わり、今日の売り上げが出た。
売り上げは、なんと銅貨870枚だ!
それは金貨二枚と銀貨三枚、それに銅貨が十枚だ。
十分な稼ぎではないだろうか。
純利益だけでみても、金貨二枚近くもある。
「あの、お姉さん。 この辺りの孤児ってどれくらいいるんですか?」
聞いた理由は単純で、孤児たちにお弁当の一つでも買ってやろうと思ったからだ。
「十人くらいだったはずだけど…、直接聞いてみればいいんじゃないかな?」
ホラ、とお姉さんが指をさした場所には
少年が鍋を持って帰ってきていた。




