ルカリス
「よくきてくれた!」
それが王様の最初の一言だった。
「いえ、お会いできて光栄です」
無難に返せたと思うが、どうだろう。
「貴様! 発言の許可を取らずに喋るとは何事か! 打首だ! 兵士共! こやつの首を斬りおとせ!!」
え、何それ怖い…。
「そうですか…。 問題を起こさないようにと大人しくしていましたが、そちらがその気ならいいでしょう」
緊張していたのが馬鹿みたいだ。
自分の周りを固定し、鯰の魔物の顔が空間から出てきた。
「精精、後悔しないよう足掻いてくださいね」
当然、生きているのだから収納空間から出せば暴れるわけで…。
「はあ、待ってくれないか。 今回はこちらの落ち度だ、許して欲しい。 ルカリス! 貴様は出て行け! 呼びもしないのにやってきて、邪魔をするとは…。 追って沙汰を下す。 待っておれ!!」
よくわからないが、あのルカリスと言うおっさんが独断で暴走していたようだ。
「はあ、気をつけてくださいよ。 俺はこの国の人間ではないので、腹が立ったら暴れますよ。 それはもう、大袈裟なくらいに」
「はは、すまなかった。 奴は貴族なのだがな、ろくに働かず悪事を企む男だった」
「もしかして、狙ってやりました?」
「ははっ、何のことかな? それよりも、女神様に関しての話があると聞いたのだが。 気が変わっていなければ報告してくれないか?」
いい国王なんだろうけど…。
俺はあまり好きになれないな、この人。
女神様のためだし、ここは我慢だ。
「では、一つだけ。 神殿の周りに生えていた木はどうしましたか?」
「む? 報告ではなく質問か?」
イラッ
「そうですか、答えたくなければ構いません。 俺も何も言わずに帰ります」
勿論、本気ではない。
「わかったわかった。 すまなかったな。 神殿の周りに木があったことを知っている人間は少ない。 景観が悪いと言われてな、貴族共が切倒してしまったのだ…。 果実は美味かったからな、一部を肥えた地に植え直したりもしたのだが育たずに枯れてしまったよ」
植え直そうとはしたのか。
「当然ですよ。 その木に成る果実は、女神様の大好物なのですから」
王様の顔が青褪めていく。
「女神様に怒られたくなければ、ウワナーの神殿にお願いして幼木を貰って植えてください。 ピークの…あ、失礼。 神殿の周りに生えていた木ですが、木の実はピークというんですよ。 で、ピークの木ですが、あれは女神様の加護がなければ育ちません。 つまり、神殿の周りでないと育たないと言うわけです。 対処は早い方がいいですよ」
それからの行動は早かった。
謁見は急遽終わりをつげ、俺達も追い出された。
折角教えてあげたのに、酷い話だ。
まあいい、俺も屋台を作らないといけないからな。
「それじゃ、俺はここで。 また騎士さん達がきたらそのときに」
警備兵さんに別れを告げて、俺は森の方に足を進めた。
一度鯰の魔物を見せているので、次のときは話がスムーズに進みそうだ。




