Big Dream 誕生秘話
大夢の祖父、大吉は元高校球児。
決して体格には恵まれなかったが、
躍動感のあるフォームから繰り出すストレートとドロップカーブを武器に、
多くの三振を奪い、様々なピンチを切り抜け、チームの勝利に貢献してきた。
当初は家を継ぐために地元の工業高校に入ったのだが、野球もまた強かった。
しかし、県大会はそれほど良い実績はあったものではなかった。
大体ベスト8止まりだったのである。
その高校は大吉の最終学年で県準優勝を成し遂げる。
もちろん全試合大吉が投げ続けての結果だ。
大吉はとにかくよく人を褒める。
良いところを探すのが得意である。
人の話に耳を傾けるのも得意だ。
そのため、後輩からは一番慕われていた。
こんなエピソードがある。
下級生がエラーしたせいで、負けた練習試合がある。
当時の体質なのか、上級生が彼を一方的に罵っていたのだ。
もちろん下級生はやる気をなくしていた。
大吉はそんな彼を見て、一声かけた。
「よう、お疲れ様」
「はい、おつかれさまです・・・」
後輩は気のない返事をした。
「なんだ、またあいつらに言われたのか。そんなことより、あのピンチで落ち着いてダブルプレー完成させたろう。でなかったら9回まで互角に戦えなかったぞ。」
「はい・・・でも大差で負けても僅差で負けても一緒って言われたんですよ・・・出れなかった先輩もいたんで恨み買っちゃったようで。」
「今日の試合は負けは負け。それ以上何を追求するんだい?」
「いえ、だってエラーしたのは自分ですし・・・」
「まぁまぁ、できなかった奴らのあら探ししたって前に進みやしねぇよ。試合に出たのは、君に可能性があったからであって、君を潰すためではない。だから、あいつらの言うことを鵜呑みにするな。とにかく今日の試合、君はよく頑張った。」
「はい、でも・・・」
「気にすることはない。僕は君に感謝している。毎回の練習で声だしているし、君より気配りしてくれる同期なんていない。同期は僕の実力を妬んでいる。その妬みのせいであいつらは本来の力を出し切れてないんだよ。」
「にしても気配りですか・・・自分そんな大したことしてないですよ。よく言われるんです、エースもエースで甘ったれだ、と。」
「誰が言ったんだそれ?あったまくるなぁ!」
大吉は続ける。
「甘ったれてんのは、人にしてあげているのに礼もろくに言わない奴らの方だ。あいつらは愚痴ることにエネルギーを費やしてるだけで、本当に野球うまくなろうっていう気持ちが伝わらないべ。もう許さねえ。」
「大吉さん・・・」
「ちょっと、明日から投げ込みに付き合ってくれ。もうあいつを座らせて投げ込むもんか。」
大吉は仲間に恵まれないのを言い訳にせず、信頼できる人を自ら見つけ、黙々と自己研鑽に励んでいた。
結果として大吉のワンマンチームになってしまった感が否めなかった。
しかし、大吉は前を見据えていた。引退しても腐らなかった。
こんなことを大夢は何回も耳にたこができるくらい聞いてきた。
今度は僕がじいちゃんを甲子園に連れて行くんだ!
その前に、中学野球をしっかりやりましょう、大夢君。
焦るな大夢。負けるな大夢。
世代を越えた挑戦が今日も始まる。
次回は、榛名vs箕郷。




