恒輝の未練
恒輝は春の市大会ベスト4に貢献したが、悔しさを隠せずにはいられなかった。
大会中盗塁を決められたのは唯一大夢だけだったからだ。
大夢より足の速い選手を刺すことができるのに、大夢を刺せなかったのはなぜだろうか。
毎日のように突き詰めていった。
竹下もサードやレフトの練習をするようになると、
恒輝自身キャッチャーとしての出場機会が与えられることにモチベーションを感じていた。
「俺が目指すのは久しく達成されていない市で一番になること。例年の強いところが、失礼だがこの世代は弱い。むしろ俺たちが1番だと信じている。そのためには接戦をものにしなければならない。誰よりもアウトに打ち取り、誰よりもホームインして最小の点差の中で勝利を積み重ねる。市で一番になれば大きい自信にもなる。先を見据えた時にもっと上を目指していける勇気もまた生まれる。」
今の恒輝は、中学最後の大会をもっと長く戦うことにあった。
そのため、チームメートに言うことも厳しかった。
「こういうこと、本来はキャプテンが言うことだろ?なんで俺が言わなきゃならないんだよ。気付いてるんなら見てみぬふりせず、はっきりもの言った方がそいつだってチームだってためになるんじゃないか。」
またある時は、
「まーたまた、それ前にも言ったじゃんか。なんで同じことを繰り返すんだ?失敗したことは忘れろ、そして同じ失敗はするなよ。そんなことしてたら1年に越されんぞばかやろう。」
と声を荒げることもあった。
「ほらー、それくらい基本的なことだろ、この冬しつこいくらいやったろ。実践ばっかりやって基本を忘れました?今まで何やってきたんだお前はー、みんなが必死になってる時に悠長なことぬかすなー。思い出せ、必死で思い出せ。そのための練習なんだから。」
恒輝は思い出作りなんて微塵も思っていない。
むしろ、これがボーイズと中学の部活との温度差なのだろうか。
恒輝は悩んでいた。一つでも多くアウトを取るためにやらなきゃいけないこと、
そして自分らがいなくなっても新人戦でもちゃんと戦ってくれること。
箕郷中は強豪というイメージをつけていくためにも、恒輝は必死だった。
「自分が大人になった時に、おっ、自分の母校やるじゃんって思えるようになりたい。今のレベルで満足していない。草野球だと思われたくない。誰か1人だけのワンマンチームなんて嫌いだ。人任せな奴らは野球なんか辞めて個人競技でもやってろよ、って言いたくなるね。」
とあるミーティングではこんなことも言っていた。
とにかく恒輝は必死だった。それについてくチームメート。
特に3年生は自覚が芽生えていた。
「大夢、今度こそ勝負に勝つ。今度は違う形でな。」
夏に向けて、優勝を目指して、箕郷中野球部は燃えていた。




