結奈!宮殿の舞踏会にいく。
グリーンマイン国、宮殿において開かれる、舞踏会の時間が迫っていた。
カーマイン家のお屋敷では、結奈が舞踏会い行く為に、侍女長マーサと他3名の侍女達の手に係り、支度に振り回されていた。
「マーサ!もういいわ!十分よ!」
「結奈様!何を、言っているのですか?他の貴族のお嬢様方は、こんな者ではございません!」
結奈は、自分の姿を鏡に映して見てみる。
これでもゴテゴテと宝飾されている。此以上に、身に付けられたら、思うように身体を、動かす事も出来ないではないかと思う。
「でも、マーサ?これくらいにしないと、私、動く事も歩く事も出来なくなると思うから、それではお城にも行かれないでしょ?」
「結奈様が、そこまで言われるのでしたら、お支度はこれにてまあ~・・宜しいでしょう。」
「マーサ!ありがとう!助かるわ。」
「では。応接の間で、ロナルド様がお待ちで御座います。お手をどうぞ」
私は、マーサさんに手を曳かれて、階下に降りて行った。
俺は、結奈が終わるのを、緊張しながら待っていた。
舞踏会には、今まで何回も、行っている。
今日に限って、初めて行くような気持ちだ。
俺は何時から、初な少年になったのだ。自分自身に呆れてため息がでる。
そこに、マーサに手を曳かれた結奈が来た。
俺は一瞬、心臓が止まったかと思うほど、結奈の姿に見取れてしまった。
彼女は、光沢のある深い海のような青のドレスに身を包み、そのドレスは身体の線に沿って、優雅に流れている。胸元は鎖骨が見えて、真珠の首飾りが結奈の胸で上品に光を放っている。髪はアップに纏められて、同じ真珠のピンでちりばめている。
シンプルなスタイルだけに、彼女の魅力がでて、とても美しい。
「ロナルド!待たせてごめんなさいね。」
「結奈!凄く綺麗だ!君を、城には連れて行きたくなくなったよ。このまま俺だけの結奈でいて欲しい!駄目かなあ~?」
「ロナルド!駄目に決まっているでしょ!寝ぼけた事言わないでいきましょう!」
「結奈!何だか張り切っていない?そんなに舞踏会が楽しみなのか?」
「いえ!舞踏会が楽しみでは無いのよ。まあ~?私この国の事も、まして一庶民として宮殿を見てみたいのよ。興味本意!それだけよ!」
「そうだね!俺は結奈をエスコート出来る身が嬉しいよ!我が姫君!」
私達、二人はそれぞれマントを着て馬車に乗り込んだ。
屋敷から城までは、1時間位の距離で、石畳の道なので馬車の揺れも、苦にはならなかった。門の前で一度止まり、門番の検閲を受けて城の中へ進んだ
宮殿近くには、沢山の馬車の行列で込み合っている。ロナルドが馬車から降りて、私の手を取り、馬車から下ろしてくれた。自分が、映画の中のヒロインになった様な錯覚になる。
「結奈、俺の腕に手を回して!俺が君の側にいるから大丈夫だ。安心して結奈!緊張している?さあ!素敵な君の姿を見せてやろうよ!」
「ロナルド!私、凄く緊張して落ち着かないの。冗談を聞いている程、余裕は、私にはないからね!」
「ははは・・・俺が、結奈に冗談で言っていると思っているの?俺は真剣なのに!結奈!ここは笑顔でね。君は何もしなくてもいいよ。只俺の側で、笑みを浮かべて頷いていればいいよ。」
ロナルドはそういうと、私が彼の腕に回した手を重ねた。私達は、宮殿の中に繋がる長い階段を上った。
宮殿の中に入ると、広いホールは、豪華に着飾った紳士淑女が溢れかえっていた。天井には沢山のシャンデリアに明かりが灯り、生オーケストラの演奏と話し声で騒然としている。壇上の上には王様と王妃様の席があり、まだ、主賓の王家の方々はお出ましにはなっていない。
その時、ファンファーレの音がした。騒然となっていたホールは、一気に静かになった。侍従らしき人が王家の入場を伝える。この場に居る者全員頭を、垂れて待っている。威厳のある声がした。
「皆の者、頭を上げてくれ!今夜は、他国の姫もこの舞踏会に来て貰った!今夜は、皆楽しんでくれ!」
王様は、そう言葉を残すと、自分の席に座った。その隣には王妃様も座り、王様の横には、エンドリア殿下だ。
順番に招待客の挨拶を受けているのが見える。
自分には関係ないと思い、ロナルドと共に、ホールの角にあるテーブルへ移動した。
テーブルの上には、色々な種類の料理やデザートが置いてある。
テーブルの反対側には、メイドが控えていて、客の要望を聞きお皿に取ってくれる。
お盆の上にお酒の入ったグラスを乗せて、大勢の人の間を縫って、優雅に、お客様に配っていくメイドの姿には、見取れてしまう。
流石メイドのプロだと思った。私は変な処で関心をしていた。
興味を持ち、私に近づいて来た人物には、気が付いていなかった。
「ロナルド!来ていたか!」
「はい!宰相様。今夜は豪華ですね。さぞかし準備でお疲れでしょう?」
「ロナルド!お前の側にいる綺麗な、お嬢さんを、いつ紹介してくれるのだね?」
「申し訳ありません。実はこんな場所ではなく、宰相様がお屋敷に戻られてから、紹介したいと思っておりました。こちらは、遠く東の国よりこられた結奈様です。森のマジョリッタのお弟子になられた方です。」
「結奈、グリーンマイン国のカーマイン宰相だ。」
「カーマイン宰相様、ご挨拶が、遅れました。私は結奈です。どうぞ宜しくお願いします。」
「お嬢さん。貴女にお聞きしたいことがあるのだが?」
「はい。私で解ることでしたら、お答え出来るでしょうか?」
「これは、お嬢さんしか、応えられないことです。ロナルドの事を、君はどの様に思っているのかね?」
「父さん!その話は屋敷に戻ってから、僕が父さんに話すから!」
「お前に、聞いているのではない!」
「宰相様は、ロナルドのお父様でしたか?知らなかったとはいえ失礼をしました。ロナルド様には、此方に来てから色々お世話になりました。ロナルド様は、私の様な不審者にも親切に接して頂き、とても感謝をしております。領地では、マジョリッタさんに、出会うチャンスを、くれたのもロナルド様でした。私はここで、良い友人に出会うことができて、良かったと思っています。」
「お嬢さんは、息子の事は、友人だと言うのですか?恋愛感情は無いと?」
「えっ!・・・恋愛?感情?つまり私が?ロナルド様の事をですか?」
私は、ロナルドのお父さんが、何でこんな話をするのかが解らない?
「お父さん!息子に、恥を掻かせたいのですか?まだ結奈には、俺の気持ちを、告白もしてないのですよ。告白も、しないうちから嫌われてしまいますよ。お願いですから、今は黙っていて下さい。」
「宰相様は、心配していらっしゃるのですね?見ず知らぬ者が、大事な息子を奪うのではないかと?大丈夫ですよ!私はロナルド様を取ったりはしません!私には、帰らなくては行けない場所があります、そこには、私を待っていてくれる人達がいるのです。私とロナルド様とは、宰相様が危惧するような事にはなりません。どうぞ、御安心をなさってください。」
「そうよね?ロナルド!貴男だってそう思っているわよね。こんなに息子の事を、心配してくれる宰相様を、裏切るような真似はしないわよね、友人としても認めないわ。」
「わはは!・・・これは失礼しました。お嬢さん・・結奈さんと言いましたか。」
「宰相様!結奈と呼んで下さい!私は庶民ですから。」
「結奈。誰もが、息子を冷静沈着で何事にも動じない、ましてや女性に興味を示すとは、思ってもみなかった。ここまで陥落させられるとは、面白い!精々仲良くしてやってはくれないか。」
「えっ!・・・・・?」
そこへ、また面倒な人が現れた。私は、この場から逃げ出したくなる。
「結奈!君が来てくれて、僕は嬉しいよ!さあ!僕の両親に会ってくれ」
私は困惑する。エンドリアの両親は国王陛下でしょう?何故?私が会う必要があるの?
殿下は私の手を取ると、ホールを横断して国王の前に私を連れて行った。
周囲の視線が突き刺さるようだ。
「父上と母上!彼女が僕の好きになった結奈嬢です。」
私は、殿下が何を言い出したのか?どうしてそんな事になるのか?解らずに唖然として殿下の顔を見つめていた。
国王様も王妃様も驚いて、私のほうに視線を投げかけられた。私は、咄嗟に言葉をだす。
「殿下!突然何を言い出すのよ!何時、何処で、どうしたらそんな事になるのよ!殿下には常識はないのですか?こんないい加減な人とは付き合っていられないので、私は失礼します。国王様も王妃様にも、殿下の言われた言葉は、聞かなかった事にしてください。」
「エンドリア殿下!物事には、順序があります。人との付き合いも同じ事、順序を飛ばして結論を出しても、巧くいく訳がないです。
まして殿下は、この国の跡継ぎになられる人!矛盾だらけの話を、誰が信じますか?解っていただけたのなら、私は帰らせてもらいます。」
「父上!解っていただけましたか!結奈は、僕がこの国の王子であろうと、間違っていれば意見できる人なのです。だからこそ、僕の側には結奈が必要なのです。」
私は益々、混乱してきた。このバカ殿下!私の身にもなってよ!これでは身体が、いくつ有って足りない。
国王の口から、ギロチンの刑罰が言い出されるかも知れない。
結奈はシャロンとの約束も出来ずに、自分はこの異界から姿が、消えることになると思っていた。
「ははは・・・この娘は、エンドリアに堂々と意見しておる。実に面白い結奈ともうしたか?そなたを、この城に逗留する事を許す。しばらくは、ゆっくりとここの生活を楽しんでくれ。」
またも結奈は驚愕する。なんで?この国の人は私の事を面白がるの?
変でしょ!普通この場合は、無礼者ここに直れ!侮辱罪で処罰が待って居るはず、なんで?全く私には理解に苦しむ。
周囲の中でも、王妃様とオース国のマリー王女、そしてサウス国の王女ヱレイン達の、結奈を、射抜くような視線を受けながら、その場に呆然と立っていた。
私は、元の自分が恋しい!人と関わり合うのは、面倒な事と今更思うとは、私も相当鈍くさい人間なのだと、我ながら呆れる。
二人の王女と、その取り巻き達の一行に、エンドリア殿下が捕まった機会に、私はその場を逃げ出した。




