プロローグ2
あれから数年間。
みんな、それぞれ、異世界『アルトクラン』で新たな人生を歩んでいる。
だけど、私一人だけ、女神様のために、異世界TVのアナウンサーの仕事をしていた。
異世界『アルトクラン』の状況を見て回っているけれど、他のみんなみたいに、新たな人生を歩んでいない。
正直、現実に置いてきぼりにされたかのようだった。
いろんな感情が湧き上がって、あの日の出来事を思い出すたびに涙が出そう。
ひしひしとそう思っていると。
「その……星の大精霊、アウリス・クロエ様。今日の『アルトクラン』のお天気はどうなっていますか? 女神様が催促されていますが」
ふと我に返った。
カメラを向けている、テレビの精霊さんがおそるおそる声をかけてきたからだ。
「はいはい。天気予報の時間です。王太子の頭の中は、今日も『お花畑』。口から出る言葉は、『暴風雨級の暴言』となっています」
自暴自棄になった私は精霊の力で感じ取った、今日の予報……もとい、ルージュ王国の近状予報を女神様に伝える。
「なお、このあと、聖女の加護が消失するため、国全体に『不穏の大雨』が降る見込みです」
その滾る感情は、不本意な現状を解消するための熱量へと変わった。
異世界TVのアナウンサーを任された星の大精霊という立場だけど、いつか私も、みんながいる『アルトクラン』に住んでみたいものだ。
星の大精霊だから、星の力を自由自在に操れるし、契約すれば実体化もできる。
ふわふわ空を漂いながら、異世界を満喫できるはずだ。
想像を巡らせるのは楽しく、ああでもない、こうでもない、と吟味しながら、今日もまた、『アルトクラン』の状況を報道している。
いつか、異世界に住みたい。
でも、女神様への異世界報告があるからな。
なかなか難しい。
今のところ、特段の方法はなく、検討中である。
「うーん。誰か、私を召喚してくれないかな?」
召喚されれば、女神様も、私の異世界行きを止めないだろう。
狙いはやはり、異世界に行った自分たちだろうか。
しばし、良い気分で考えたところで、はたと気づく。
「そうよ! 聖女の私なら、私の……精霊の声を聞くことができるはずだわ! 召喚して契約もできるはず!」
そうと決まれば、話は早い。
私は踵を返し、肩の髪を払って、ふわふわと宙へと舞い上がった。
昨日までより、ちょっと春に近い今日。
聖女による大精霊召喚、すごく楽しみだ。
一気にワクワクしてくる。
異世界に行ったら、何をして過ごそうか?
アナウンサー兼レポーターとして、『世界のダンジョン特集』、『日本の料理お披露、異世界グルメ特集』など、現地取材したら、女神様も満足してくれるかもしれない。
新たな冒険の幕を開ける風が、私の背中を優しく押してくれた。
運命と理想は隣り合わせ。
これは10人の私と、星の大精霊の私、アウリス・クロエの規格外波乱万丈な異世界奮闘記である。




