猫草ってイネ科の……なに?
リハビリ中なので、文章が変な所あったらすみません。
そして猫草がイネ科かどうかも知りません。(調べたけど忘れた)
それはとても晴れた朝で、眩しい太陽が木々を照らす、清々しい空気と青空が綺麗な日だった。遠くにはあびゃびゃびゃと鳴く大型の鳥のような生き物が左右の目を上下反対に交互に動かしながら優雅……、うん、多分優雅? に飛んでいく。
たまに見かけるこの鳥? は、この世界ではルルソン鳥と名付けられているらしい。とある冒険者組合の支部長が言うには、筋肉野郎御用達の、筋肉野郎達の手塩にかけて育てている筋肉の為に生まれたような鳥なのだそうだ。心底どうでもいいが、とても美味しいらしい。
本日上空を飛んでいる個体は、体毛というか羽根色というか、なんかそんなやつが全体的にオリーブ色をしている。大型の鳥には珍しく、個体によって様々な色を持つのが特徴であるらしい。知らんけど。
それは置いといて、そんな優雅? な朝に、三人のおっさん達が住むデカくてイケてるギルドハウスから、聞いたこともない大きな音が周囲に響き渡った。
ズンドコゴンガンドンドコドーン! という感じの、それはそれは大きなものだった。
その音のした場所は、エントランスだ。
ちょうど正面階段の前で三人がそれぞれ不可思議かつ斬新なポーズで、見事にすっ転がっている。
金髪のエルフは潰れたカエルが乾涸びた後にそこから取れて、仰向けになったみたいな体勢。
一際身体の大きい白い龍人はビーチフラッグを取りに行った人のように片手を高く挙げ、水色の長くてフワフワしたものをがっしりと掴んでいる。
そして、水色の猫獣人はというと、前転を途中で止められたかのような、なんていうか、足の間から顔が見えているアレな体勢である。
早い話が、三人が三者三様にすっころんでいるのである。
では、ここからは彼らに一体何が起きたのか、の確認をしていこう。
まず、その日最初に目を覚ましたのは水色髪チャライケオジ猫獣人こと、ユーリャ・ナーガである。
そして彼が起きると気配で目を覚ますのは白肌白髪天然イケオジ龍人こと、ドラゴ・アイス。
「ユーリャさんおはおー」
「おはー」
「ハーツさんおきてー」
「あい」
ここでドラゴ氏に布団をベシベシ叩かれて起こされながら眼鏡を装着するのが、金髪優しげ食いしん坊イケオジエルフこと、フレア・ハーツである。
「なんかこの体になってから寝た気しなくね?」
「わかるー」
「これが年齢かもしれませんね」
「やめてこわい」
三者三様にグダグダ言いつつダラダラと起床し、そのまま一階のキッチンへ行こうと廊下を歩き、中央階段へと踏み出したハーツ氏の足が何かによって盛大に滑った。
そして、勢いよく宙に投げ出されかけた彼の手は近くに居たドラゴ氏の膝裏を見事にカックンさせる。
寝起きのパヤパヤした状態では通常の判断力もなく、その体重が重力に引っ張られるままバランスを崩したドラゴ氏は何故か体ごとバク転。
しかしそこは階段の上段である。流石に焦った彼は、近くにあるものを急いで掴んだ。
ユーリャ氏のシッポである。
突然の蛮行に彼は飛び上がり、しかしその勢いは掴まれたシッポによりビンっと停止され、結果として三人は無言のまま階段を転がり落ちて行った。
それが、事の顛末である。
色々と頑張って説明したものの、つまるところ滑って転んだだけである。
しかし考えて欲しい。彼らはこの異世界では規格外の肉体を持っている。そんな彼らが転んだらどうなるだろうか。
『あーーーー! せっかく作ってもらった階段と床が!!』
物の見事にボコボコのベコベコのバキバキである。
ツルツルでピカピカしていた大理石の床と階段が凹み、割れ、一部が粉々になり、階段の手すりさえもメキッともげている。大惨事である。
はいどうも、元神の* * *、あ、神名剥奪されたんだった、えーと、ワタナベです。
「いや、こっちの心配しろよ」
「そういうとこやぞ」
「酷い話ですね」
大理石の砂埃をパタパタと叩いて落としながら、三人は冷静に起き上がった。
『すっ転んでもイケオジ健在ってどういうこと???』
「知らんがな」
そんな彼らもカッコイイので許す。
「ていうかドラゴさん、手をお離しくださいませんすか」
「んぇ? なにこれ」
「アタシのシッポっすよ!! はよ!!」
「ユーリャさんよく起き上がれたね」
「良いから離せ!!」
「はぁい」
そんなやり取りしている彼らを見て、しみじみと思う。
『朝からイケオジがイチャイチャしてるの、意外と美味しいのかもしれませんね……』
「イチャイチャとは」
「出来れば三次元はお断りしたいです、わたし」
解せぬ。
「ていうかなにが起きたんすか?」
「そういやなんだろうね。なんか急にハーツさんから膝カックンされた」
「ハーツさんなにしてんの?」
「いや、わたしもあんまり覚えてないんですが、何か柔らかくてぬるっとしたものを踏んだんですよ」
「滑ったの?」
「寝起きなので滑ったみたいです」
確認の為に、ハーツ氏が滑った箇所を探そう一同で動き始めたその時だった。
どこからか不思議な音が聞こえて来た。
『ック、ック、ック、ック……』
ユーリャ氏が唐突に目を見開く。普段猫っぽく細目でばかりいる彼が急に開眼した事にその場の全員が身構えた。
「ユーリャさん……!?」
「突然どうしたんですか……!?」
「この音は、まさか……! くそ、間に合え!!」
真剣な顔で音のした方を振り返り、彼は勢いよく駆け出す。そして、そんな彼を慌てて追う一同。その先に居たのは。
『けぱぁ』
二階の寝室にしているベッドの上でびちゃびちゃの毛玉と何かの草を吐き出す一匹の銀色のペルシャ猫型ケット・シーと、それを両手で受け止めるユーリャ氏の姿だった。
「う、ぅおおおおぁぁ……」
間に合った安堵感と、両手の生暖かさと、なんとも言えない嗅覚にダイレクトアタックをかましてくるそれの臭いに、ユーリャ氏の顔面が物凄いことになっているが仕方ないとしか言えない。
『さすがダーリンねぇ、アタシの毛玉を受け止めてくれるなんて……♡』
「クリスちゃん、なんでわざわざベッドの上で吐いてんすか、っていうかゲロ臭いんで顔寄せて来ないでお願い」
『あらやだ、急に出るんだもの仕方ないじゃなァい?』
「ベッドの上だけはやめて」
『かしこまりぃ〜☆』
野太いイケボで喋られると脳がバグるんで、ちょっと黙ってて欲しい。
その時、ドラゴ氏が何かに気付いた。
「なるほど、分かったぞ」
「何がですかドラゴさん」
「ハーツさんが踏んだの、毛玉だ!」
「あぁ、うん、まぁそうでしょうね」
ドヤ顔でキメているが、ハーツ氏からはスルーである。かわいいね。
「それよりもケット・シーって毛玉吐くんすね」
「ユーリャさんはそういうの良いから手洗って来て」
「はぁい」
手を洗いに行ったユーリャ氏を見送った二人の視線の先に、ふと、紺色の丸いもちもちしたケット・シーが姿を見せた。
「あ、べにさん」
『あらごしゅじ、ん、っく、ック、ック』
次の瞬間のドラゴ氏の行動は早かった。アイテム欄から皮の袋を取り出してケット・シーの前に差し出したのである。しかし。
『けぱぁ』
なんでか皮袋から顔を背けて床に吐き散らかした。
「どうして!!」
全力である。
『皮の匂いがなんかヤなんだよ〜』
「そっ……かぁ……」
アイテム欄から布を取り出して毛玉ゲロを拭き取りながら、ドラゴ氏はなんとも言えないしょんぼり顔である。かわいいね。
なお、生き物に馴染みの無い人にも分かるように説明すると、猫や犬などの自分の毛を舐めたりする動物は、胃の中に、舐めた際に抜けた毛の塊が溜まってしまうことがある。
そしてそれを体外に排出する為に草を食べた結果、上手く押し込まれ便として排出されるか、毛玉と胃液と草を、しゃっくりのような独特の痙攣の終了と共に口から吐き出されるか、ふたつにひとつなのである。
その上で、ここまで立て続けに吐き散らかされるとどうなるか、皆様もお分かり頂けるだろう。
『ック、ック、ック、ック』
階段の手すりの上に、小さな白いケット・シーが。
『けぱぁ』
「つくねちゃん!!!」
貰いゲロである。
しかしハーツ氏はそこでテンパりながらも頑張った。階段に落ち切る前にゲロごと床をぶん殴ったのである。
もちろんハーツ氏の腕力で殴れば床は消失する。ついでにゲロも吹っ飛ぶかと思いきや、落ち切る前だったこともあり周囲に粉塵のごとく飛び散った。
「う、うわぁあああ……」
最悪である。
あまりにも悲惨な状況に、ハーツ氏から掠れた低い悲鳴が上がった。
「え、ちょ、ハーツさんなにしてんの?」
「タイミングを間違えました」
「違くて、なんで破壊してんすか」
「テンパりました」
「どうして」
手を洗い終わったユーリャ氏が両手をプラプラさせながらヤレヤレしている。
そんな中でハーツ氏の、スンとした真顔が地味に腹立つ。
本当にどうしてそんなことになったの。
『ちなみになんですが』
「なんすか」
『アイテムとして収納すれば掃除楽ですよ』
「なんで今それ言うの」
いやむしろもう少し早目に気付いても良くない?
「もー、これ誰が直すと思ってんのさー。どう考えても自分だよー?」
「申し訳ございません」
ドラゴ氏の言葉に謝罪の言葉しか出ないようである。でも出来ればわたくしにも謝って欲しい。せっかく頑張って用意した家なのに。
「ていうかさ、なんで急にこんなことになったんですかね」
「猫草に似たようなもの食べたんじゃないすか?」
三人がそれぞれ散らばったゴミや石やゲロをアイテム欄に収納しつつ話している。
迷惑にも程があるんですけど。猫草なんて一体どこから見つけて来たんでしょうね。
「猫草か……、アレって稲科だっけ?」
「稲……?」
「まさか……!」
何かに気付き、顔色を悪くさせたハーツ氏が突然凄い速さで外へと駆け出した。
「え、ハーツさんどしたんすか、え、あ、まさか!?」
「えっ、あっ!」
突然のことに困惑していた二人だが、そんな二人も何かに気付いてギルドハウスの外へと走り出す。
そして。
「あ、ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 米ぇええええ!!!」
食いちぎられて無惨な状態の、育てている途中の米の苗。
ビニールハウスの中でぬくぬくと育てられていたはずのそれが、何故だかビニールハウスの外に出ているだけでなく、なんでかあちこちにちらばっているのである。さすがの三人もガックリと膝をついた。
全力で落ち込む三人を見て、ケット・シー達はというと不思議そうに首を傾げ、そしてわたくしは、そんな三人をデジカメでパシャリと納めるのだった。
落ち込むイケオジもいい。




