第二章 26話 無敵の男と最高峰のナイフ使い
バンシャ「皆さん!蠱毒というものはご存知でしょうか!!蠱毒…それは恐ろしい中国の呪術、呪いの1つでございます。小さな入れ物に毒を持つ生き物を大小入れる訳です。蛇や虫などですねぇ、その生き物たちはその入れ物の中で食い合い、殺し合うのです、するとどうなるか!……非常に強い毒を持つ凶暴な生き物になるのです!」
バンシャ「そして!今宵見せますのは蠱毒の頂点に立った者!どんな毒を持つ生物も体の中で栄養に変える男オジー・ジョンソン!最強の体を持った彼の一芸をどうぞご覧あれ!!」
ウオーー! パチパチパチ ピューーィ
休憩時間を挟んだにも関わらず周りのボルテージは上がっていた。これまで沢山驚かされ、世界には摩訶不思議というものがあるのだと目の当たりにされ、興奮冷めやらぬという感じだ。
凄いパンクの歌と激しい火花が上り腕を天に掲げ現れたのはアイマスクっぽいのを着けたプロレスラーのような図体の男。
っと思ったが脚が細い!!上半身筋肉隆々なのに脚が細い!!
周りの観客に笑いが起こる。
ワグ「何だあれ面白れぇ!チキンレッグってやつだよな!」
シュウ「あそこまでの差はネタですね!」
小張もハハハハッと笑っている。
オジー「HEY!!everybody!!俺は最強の男だぜぇ!!HEY!!」
周りの観客はそのオジーのノリに合わせて歓声をあげる。
オジー「良いぞ良いぞ!俺のmotivationも上がるってもんだぜ!!come on!!my favorite food!!」
ガラガラと謎の大きなスカーフに包まれた台を持ってくる団員。
オジー「今日のshowのbuddyはこいつだ!!」
バサッとスカーフを取るオジー。そこにはなんと、
蠍や蜘蛛がふんだんに入ったガラスのBoxがそこには有った。
そしておもむろに団員は長いピンセットで一匹摘まむ。後ろから山羊を連れてくる団員。そのピンセットで摘まんだ虫を山羊に付け、刺させる。
すると、山羊はすぐに動けなくなり、倒れて生き絶えてしまった。
オジー「これはdangerousだろ?thrillがあると思わないかい?でも俺は最強の男。絶対負けないんだぜ!」
見るからに特殊な手袋を着け、上腕二頭筋をアピールしたあと、
なんと手づかみで虫を捕まえ口に放り込んだのだ!
ウエーー!! スゲェーー!!
シヌンジャネェカ? ダイジョウブナノ?
オジー「パリパリ…ゴクッ……NO!!problem!!実に良いspiceだぜ!」
ワグ「や、やべぇ…良いspiceだってよ…」
小張「もしかしてあれ全部食べるのかな…オエッ嫌な感じ…」
シュウ「本当に毒とか大丈夫なんですかね…」
凄い調子でバクバクと生きたまま生物を放り込んでいく。蛇や蜘蛛や蠍や蛙、蜂や変な芋虫、他にも色んな種類を大量に。
辺りはその光景に言葉を無くしていた。気分が悪くなり途中で退席する人も出てくるくらいだ。
そして、後残りも百足二匹と蠍だけになったときだった。
オジー「ouch!!!」
蠍の針が腕に刺さってしまった。
辺りは騒然とする……
シュウ「…」
小張「…」
ワグ「…マジか……」
オジー「へへへ…ンガアッ!!」バリッ
オジーは臆せず蠍を喰った。その勢いで両腕で百足を持ち食いちぎる。
オジー「俺ぁな!!毒なんざ効く柔な体じゃねぇんだ!!綺麗にごちそうさまだぜ!!」
グッと二頭筋をアピールするポーズを決めて余裕さをアピールする。
ウオオオオオオオオオ!!!!
会場が揺れる程の歓声。
ワグ「ウオオオオオオ!!」
シュウ「う、ウオオオオオ!!」
小張「…なにこれ。」
両腕を天に掲げながら出口へゆっくり歩くオジー。後ろ姿はさながら本物のスーパープロレスラーだった。
シュウ「本当に大丈夫だったのかな…?」
小張「能力者じゃないならもう亡くなってるはずだわ…もしかしたら能力持ちなのかも…」
ワグ「いや…違うな…」
シュウ「え?」
小張「ん?」
ワグは真剣な顔をして言う。
ワグ「やつはスーパーマンだ。」
小張「次はあの時のナイフ使いが出るみたいね。」
シュウ「そうですね、どんなショーなんでしょうか…」
ワグ「シュウも無視するのか?なぁ。」
バンシャ「さあさあ!!フリークショーももう後半に差し掛かったぞ!!次なる公演は我がバンシャフリークショーが誇る最高な精密ナイフ術!変幻自在、百発百中!彼女がナイフを使うとナイフが生命を持つ!アダ・ボールドウィンだ!!」
ウオオオオオオ!! パチパチパチ!!!
ワグ「お!あのエロい姉ちゃんだな!これは楽しみだ!!」
小張「あのナイフ術は確かに凄かったし…本当どんな物なんだろう…」
シュウ「き、緊張しますね…」
明るかった照明は暗くなり、少しの間をおいて二つのライトがいつの間にか奥に置かれた的を照らす。
その後パアッと入口の方を照らす─
バッバッバッ
すると入口の方から凄い勢いでバク転してアダは入場してきた。
的まで数十メートルの距離まで来ると大きく綺麗にバク宙をし、すっと空中でナイフを取り出し、的に向かって投げた!
トトンッ
的の真ん中を狙った!が、大きく外した…っと思った時、辺りは一気に明るくなり─
カランカラン。
二つの的は地に落ちた。
ウオオオオオオ!!!!!
大きな歓声が上がる。
なんと、アダは的を固定している細い鎖二本を正確に当てたのだ。しかも同じタイミングで。
シュウ「す、凄い…」
ワグ「あの感じじゃ的に当てるのは眼を瞑ってもできちゃいますって感じだな。」
そして次は一人の団員が壁に張り付いていた。アダはその場から一歩も動かずナイフを持ち振りかぶる。
そこでドラムロールが鳴り場の空気を盛り上げた。
ドルルルルルルルルル
ダンッ!
その音と同時に高速でナイフを何本も抜いて投げた!
小張「す、凄いわ…」
シュウ「凄い…」
ワグ「すげぇなこれ…」
投げられたナイフはその張り付いた団員の袖や裾に刺さったのだ。団員には少しも傷を付けずに。
パチパチパチパチパチパチ!!!
スゲェーー!! ピューーィ!!
拍手喝采の中、アダは周りをキョロキョロと見渡す。
団員「次は誰か観客のお方一人に力を貸してもらいたいと思います!誰か力を貸して頂ける方御座いますかー?」
シーーン…
やはりこの芸は危険な臭いがするのか誰も手を貸そうとしない。
そして、幸か不幸かシュウとアダは目があってしまった。
アダはニヤリと笑い、シュウに手招きをする。
ワグ「あちゃあ…シュウ、目を付けられちまったな。」
小張「んー…呼ばれちゃったら仕方無いね…」
シュウ「えーー!!俺行かないとダメなのー!?」
アダ「早く来なよboy!怪我はさせないよ!それとも怖気づいて腰が抜けちまったかい?」
その言葉に周りに笑いが起こる。
シュウ「むっ、や、やってやる!」
ワグ「頑張れー!シュウー!」
小張「きっと大丈夫よ!うん!きっと大丈夫!」
シュウ「絶対二人とも任務忘れて普通にショー楽しんでるでしょ!」
シュウは下へ降り、アダの近くに行く。
アダ「あの時の少年ね。御礼にスリル満点のショーをどうぞ。」ボソッ
シュウ「す、すいません…お、お手柔らかにお願いします…」ボソッ
団員「頭失礼しますねー!」
団員の一人はシュウの頭に天辺にリンゴが付いたヘッドギアのようなものを着ける。
シュウ(うわぁこれ絶対的じゃん…)
団員「それじゃあこちらの方にお願いしますね!」
シュウは端の壁に連れてかれ、アダは先程使っていたナイフではなく、一回り細いナイフを用意する。
団員「準備はOKですか?」
その問いにアダは黙ってそっけなく手をあげた。団員が丸のポーズでドラム隊に合図を送るとドラムロールが流れる。
ドルルルルルルルルル!!
団員「一発当たったら横に走って下さい。」ボソッ
シュウ「え、何で!?」
団員「じゃないとアダさん当てに来てしまいますよ?」
シュウ「え、嘘!横に!?普通に!?」
団員「お任せします」ニヤリ
そう言って団員は姿を消す。
シュウ「ど、どうしよ、」
ドンッ!!
スタンッ
シュウ「えっ!」
シュウは頭に重みを感じた。アダは頭のリンゴに一本当てたのだ。
シュウ(うっ!もう構えてる!横に、横にだよね!?うぅ!もうままだ!!)
シュウは横にダッと動く。
スタンッ!タンッ!
ワグ「おおーー!!すげぇ!!」
小張「凄いわ!!」
ワアアアアア!!!
周りの客の歓声を一気に浴びた。
団員「お疲れ様です。ご協力ありがとうございました!」
シュウ「あ、はい!でも一体どうなって……おわっ!」
ヘッドギアを取って見てみるとなんと、リンゴの真ん中にしっかり三本綺麗に同じ所に刺さっていた。
シュウ「凄い!!一体どうやって同じ所に!?横向いて動いたのに!」
団員「一本はブーメランのように弧を描いて、もう一本は同じタイミングでアダさまが横に動いて当てたのです。」
シュウ「じ、常人技じゃない…」
アダがシュウの近くに寄り、片腕を上げさせる。
アダ「今日、このショーを手伝ってくれた勇気ある少年に今一度大きな拍手を!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!
シュウ「あ、ありがとうございました!良い経験になりました!」
アダ「ふふ、楽しんでくれたなら良かった。さあ、席に戻って後半のショーを楽しんで?」ニコッ
シュウ「はい!」
きっとシュウはこの出来事を忘れることがないだろう。このショーのスリルを体験した事もそうだが、冷徹と思っていたアダがとても温かい笑顔を浮かべ、優しく見えたからでもあったからだ。




