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無能と呼ばれ剣聖になった男  作者: 悠渡
第一章 大商帝国と神秘の森
9/22

第三話 《グランアーサー》開幕 ※

 誠に誠に誠に、遅くなってしまい申し訳ありません! 


 予定では、もう少し早く改稿が完了するはずが、新作にうつつを抜かしていたら、いつの間にか時が経っており......これ以上の言い訳は見苦しいですね。


 ええ、恐らくは今後も改稿が遅くなると思います。それでも読んでくれている方には、誠に感謝感激雨あられです。ありがとうございます。


 それでは改稿した第三話をどうぞ(あまり内容は変わってないんですけど)。

「ふあ~あ、眠い。アメのせいで寝不足だ。めちゃくちゃ眠い」

『それはマスターが悪いだろ。私という物がありながら、他の剣を使うなんて言うからだ』



 朝早く、隼人は自室で目を覚ます。窓からは陽光が射し込み、部屋を照らす。そんな部屋の隅で、隼人は目を擦りながら金の刺繍が入った黒いローブに着替える。昨日の夜から一日中アメの怒声が頭の中に響き渡っていたせいで、隼人は地味に寝不足という状況に陥っている。今一度布団に入って眠りたい。だが、時間は有限。一秒も無駄には出来ないため、着替えて闘技場に行く準備をする。



 今日から、闘技大r会《グランアーサー》が開幕する。今日の日程は開会式の後、第一回戦のバトルロイヤルだ。最悪、合気道に近い術なら使えるためそれで勝ち抜く。昨日、シュラに大口を叩いてしまったためここで負けたら会わす顔が無いどころの話じゃなくなる。それに商品も貰えなくなる。だからこそ、なんとしてでも勝ち抜く。そう心に誓い、部屋を出る。隼人が泊まっている部屋から闘技場までは、歩いて十分もかからない。だが闘技場まで直通というわけではなく、一回外に出なければいけない。そこが面倒だ。だが、それをぼやいても意味は無い。だから先を急ぐ。



 外に出て、選手専用の入り口から闘技場に入る。ご丁寧に、ファンタジーなどに出てくる羊皮紙と思われる紙に、墨で"選手専用通路"と書かれていた。こちらの言葉で。読めはしないが、直感でこうなのだと判る。いつか誰かにこちらの言葉を教わろう。



 そんなことを思いながら通路を進み、選手の控え室に入る。。そこには大勢の参加者がおり、全員殺気立っていた。その中には、シュラも居た。声をかけようとしたとき、観客席の方から実況の声が響く。



「さぁて、今年もやって参りました! この日、フュンスの一の日がやって参りましたよ! 実況は(わたくし)、デリア・グランデが勤めさせてもらいます! まあ、前置きはこれぐらいにして。これより! 第十回《グランアーサー》開幕ですッ!」



 実況がそう叫んだのか、闘技場は歓声の渦に包まれる。その声は控え室にも届いていた。シュラの許に付いていたので、一瞬疑問に思ったこの世界での月日の名を聞いてみた。何でもーー



「一月はアインス。二月はツヴァス。三月はドライス。四月はフィアス。五月はフュンス。六月はゼークス。七月はズィベンス。八月はアハス。九月はノイス。十月はツェンス。十一月はエフス。十二月はツヴェルス。か」

「ああ。後、今日はフュンスの一の日だ。《グランアーサー》は毎年フュンスの一の日に開催される。・・・・・・いや、それよりもだ。《グランアーサー》の開催日を知らないのはまだしょうがないでかたずけられる。だがなぜお前はフュンスの名すら知らない?」

「えぇっと、その・・・・・・俺が居た国とは呼び方が違って・・・・・・その、えぇっと・・・・・・」

「ほう、どんな国か聞いてみたいな?」

「えっ! と、そのぉ・・・・・・〝騎士国家〟かなぁ・・・・・・」

「ほう、〝騎士国家〟の【キャメロディア】か。なるほどな。余談だが、俺は【キャメロディア】出身だ」

「えっ、マジで!?」

「ああ、マジだ。それに【キャメロディア】の街の名は全て知っている。となると、お前の言っていることに差異が生まれるな」

「えーっと・・・・・・」

「答えたくない、と言うことか?」

「ま、まあ」

『さて! でわでわ選手の皆さんに入場してもらいましょう!』

「ふっ、まあいい。いつか教えろ。それよりも、そろそろ入場だ」



 シュラが鼻で笑い、目線を控え室の扉に向けてそう言った時、控え室に実況者と思われる女性、デリアの声が聞こえた。その声に促されるまま、隼人やシュラ、その他の選手は控え室を後にする。緊張感からか、やたら長く感じる廊下を歩き、闘技場のリングを目指す。その間も、デリアの声は廊下に響き渡っていた。透き通る、というわけではないが、どことなく無視出来ない声だ。だからこそ、こうも聞き取り易いのかもしれない。



「さぁて! 今大会の出場者、三百五十一人が入場してきました! 今大会の注目選手はやはり、前大会優勝者レガール・バルガ選手や準優勝者のガルム・ズール選手、そして史上最年少出場ハヤト・カンザキ選手などでしょうかね! おおっと。そうこうしている内に、全選手がリングに上がりましたね。では第一回戦のルールを説明させていただきます。1回戦の対戦内容はバトルロイヤル、つまりは三百五十一人での"乱戦"です。最終的に、リング上の人数が八人になった時点で終了となります。リングの上で気絶していても人数にカウントされるので、必ずリングから出してください。では! そろそろリング上の選手たちも、痺れを切らしていそうなので、これより! 《グランアーサー》第一回戦を開始します!」



 実況の言葉と銅鑼の音で、リングの上に居た選手たちは一気に動き出す。隼人もすかさず向かってくる相手を体術で蹴散らしていく。前回優勝者や準優勝者も次々と相手をリング外に出していく。



「すごいな。さすが前大会優勝者と準優勝者だな」

『マスター、そんなことを言っている場合じゃないぞ』

「そうだな」



 アメの言葉に隼人は賛成する。なぜなら、目の前に大物が居るからだ。その目の前には、無精髭を生やし白い道着を着た男が立っていた。その男の名は――――――



「前大会三位のドラゴール・ジョーズ......だったか?」

「フム、奇っ怪な少年だな。誰と喋っている」

「教える必要は無いだろ?」

「そうか。教えないならそれでも構わない」

「痛め付けて聞き出すか?」

(それがし)にそんな趣味は無い」

「そう。じゃあ、戦いますか」

「ああ。かかってくるがいい、少年」



 ドラゴールとの三分にも満たない会話を終え、戦闘に入った。最初の一瞬は純粋な殴り合いだった。でも隼人は、ドラゴールを殴り合いで倒すのは至難だと思い、"真眼"をフルに使って相手の攻撃を見切り、掌打を入れる。見切り、躱し、掌打を入れる。見切り、躱し、掌打を入れる。それを何十回か繰り返すと、とうとうドラゴールは膝をついた。



「くっ、何故攻撃が当たらない・・・・・・!?」

「俺の能力でかわしているんだ。多分もう当たらない」



 そう言っては見るものの、隼人も相当疲れていた。肩で息をしている。もっとドラゴールがタフだったら、今ごろこっちが片膝をついていただろう。そんなときだった。



「そうか、なら此方も本気を出そう」

「っ! なんだこれ」



 ドラゴールが本気を出すと言った途端、ドラゴールを中心に魔力が集まっていく。その魔力は淡い緑色で中々に綺麗だ。いや、そんな場合じゃない。これはヤバイ。今の俺じゃ、絶対に勝てない。



 そんなことを思っていると、ドラゴールからその魔力について説明される。



「これは霊力。正式名称を〝霊気魔力〟というものだ。霊脈からエネルギーを受け取り強化させた魔力だ。通常より威力の高い魔法が撃てたり、身体能力がとても高くなったり、傷の治りが良くなったりと、いろいろな恩恵がある。便利な能力だ」

「とてつもない能力じゃないか、それ」

「ふっ、そうかもしれんな。・・・・・・行くぞ!」

「ちっ!」



 そこからは隼人優勢がドラゴール優勢になり、隼人は〝真眼〟を使って攻撃を回避しようとするが、予知も動体視力も追い付かず一方的な戦いになった。そして、隼人は大量の傷を負い立てなくなり地に伏せたところで、スタジアム内に実況の声と銅鑼の音が響く。



「おっと、ここで第一回戦終了だーっ! これより第一回戦通過者を発表したいと思います! 第一回戦通過者は、レガール・バルガ選手、ガルム・ズール選手、アドレナ・グラン選手、ドラゴール・ジョーズ選手、シュラ・マクスウェル選手、ジュドー・バドン選手、リック・ドーク選手、ハヤト・カンザキ選手、以上の八人です!これより残った八人にはくじ引きをしてもらい、第二回戦での組み合わせを決めてもらいます。まずは、シュラ・マクスウェル選手、くじを引いてください」

「俺が最初か。さて何番か。・・・・・・一番だ」



 シュラは、箱から引いたくじを掲げる。それを見た実況は、くじに書いてある数字を声に出す。



「マクスウェル選手は一番です! 続いてはアドレナ・グラン選手です」

「つぎ、わたしの番・・・・・・なの?」

「そ、そうです」

「わかった。じゃあ、引く・・・・・・四番」



 のんびりとしたペースでくじを引いた少女は自分が引いたくじに書いてある数字を声に出す。



「グ、グラン選手は四番! さすがに、まだ組み合わせは決まらないかっ! さて、次はレガール・バルガ選手です!」

「次は俺の番か。・・・・・・七番だ」

「バルガ選手は七番です! 続いてズール選手です!」



 実況が腰に剣を携えた長身の男がくじを引いたことを確認した後、次の巨大な体躯を持った男にくじを引くよう促す。



「カハハハハ! 次は俺様かぁ。・・・・・・カハハハハ! 俺様は二番だ。二回戦はあの小僧とか。楽勝だな!」

「ふっ、今のうちに散々喚いていろ。後々、泣き言すら言えなくなる」

「なんだと小僧がっ! 言ってくれるわ! 今ここで殺してもいいんだぞ!」

「それは観客に迷惑だ。その憤怒は明日まで溜めておけ」

「この小僧が! 言わせておけば!」

「ま、まあまあ。ここで争ったら失格になりますよ?」

「・・・・・・ふ、ふん! 興が削がれたわい」



 隼人が一触即発の雰囲気のズールを宥めると、ズールは気分を悪くしたのか闘技場を後にする。



「すまないな。お前が出てくる場面でもなかろうに」

「いや、いいって――――――」

「ズ、ズール選手は二番! マクスウェル選手との試合になります! 続いてはカンザキ選手です」



 シュラが謝ってきたが、別に気にしてはいない。寧ろ、ここで戦闘を始められたら困る。自分のためにやったことだ。気にする必要はない。そう言おうと思ったのだが、実況の言葉で遮られる。なんと、次は自分らしい。



「――――――って、俺の番か。・・・・・・うわ、マジか」



 隼人は苦虫を噛み潰したような顔をする。いつまでも眺めているわけにはいかないので、くじを掲げる。



「おぉーっと! カンザキ選手は八番! ということは、バルガ選手との試合だ! この組み合わせは面白くなるだろう! いや、なる! ならないわけがない! ・・・・・・っと。すみません興奮し過ぎました。続いてはジュドー・バドン選手です」

「僕ですか・・・・・・三番ですね」

「バドン選手は三番! グラン選手との試合です! 次はドラゴール・ジョーズ選手です」

(それがし)の番か・・・・・・フム六番だ」

「ジョーズ選手は六番! これで必然的にリック・ドーク選手は五番となります。では組み合わせを簡潔に発表させてもらいます。組み合わせはこうなっております!」



 デリアはそう言い、組み合わせを簡潔に発表する。



 第二回戦 第一試合 シュラ・マクスウェルvsガルム・ズール

     

      第二試合 ジュドー・バドンvsアドレナ・グラン


      第三試合 リック・ドークvsドラゴール・ジョーズ


      第四試合 レガール・バルガvsハヤト・カンザキ 



「組み合わせは以上となっております。第二回戦の第一試合は、翌日陽刻九時からです。選手の皆様は遅れないように! これにて、《グランアーサー》一日目を終了します!」



 デリアのその言葉で、闘技場が拍手の音に包まれた。その拍手と共に、《グランアーサー》一日目が終わった。そのなかで、隼人は少し驚いていた。理由はこの世界にも、地球と同じ時刻の概念があったからだ。



 シュラも時々時間を口にしていたが余り詳しく考えていなかったので、この際シュラに訪ねてみた。シュラ曰く、太陽の動きで時間を計っているらしい。〝陽刻〟は朝の六時から夜の六時までの十二時間、夜の六時から朝の六時までの十二時間が〝月刻〟と言うらしい。地球でいう時計の類いの機械もあるらしいが、シュラに「常識なのに何故知らないんだ」とまで言われた。なるべく早く、俺が異世界人だと言わないといけないだろう。



 現在は陽刻の三時。まだ明るいので、隼人は前から気になっていた場所に行くことにした。



『マスター、どこに向かってるんだ?』

「ん? ああ、〝武器市場〟だよ。もう一つぐらい剣を持っておいてもいいかなって」

『なに! あのとき言ってたことは本当だったのか!?』

「当たり前だろ? お前は燃費が悪すぎるんだ。異常なほどに魔力を持っていくから、リヴルム戦みたくあの技を一度撃っただけで倒れたら意味がないだろ。それに、お前が飛ばされたりしたら、俺丸腰になるし。それを防ぐためにも、もう一振り剣を持っておきたいんだ」

『むうぅ~・・・・・・まあ、そう言うことならいいが』

「それじゃあ、剣を選びますか」



 アメとの会話を終えたのと同時に、武器市場に到着した。ここには、数多の鍛冶師が自身の作品を売りに来ている。見たところ、百名近くは居るんじゃないだろうか。出店がすごいことになっているし、行き交う人もすごく多い。



「一人で来たほうがいいな。これは・・・・・・」

『確かに、すごい人の数だな。一度はぐれると危険だ』

「ま、一人だし心配ないだろう」

『一人とはなんだ! わたしが居るだろう!』

「ああ。じゃあ、訂正。一人と一体な」

『一体とはなんだ! 一体とは! 一人だろうがっ!』



 あーだこーだ言うアメを無視しつつ、出店を物色していく。中々お目に叶うものがない。条件が高過ぎるのだろうか。だが、あまり妥協し過ぎると使うとき自分自身が困る。



「う~ん。だからといって、この剣と同じのは嫌だしな・・・・・・」



 アメが宿っている剣は一般的な西洋の剣がベースとなっているが、刀身はなかなかに大きくマイナーだがブロードソードと呼ばれる剣に近い。白銀色で統一されており、長い分取り回しが難しい。隼人は、長剣や短剣が嫌いだ。長くてもダメだし、短すぎてもダメだ。個人的には刀が良い。だが人間族の間では刀は邪道らしく、世間一般の両刃の剣しか無かった。だから刀は期待していない。でも、刀がいい。



「なかなか良い剣がないな」

『マスターは、どんな条件の剣が欲しいんだ?』

「普通サイズで、使い回しの効く剣が良い。あとはまぁ持論だが、最終的に手に馴染む剣が良いと思う。結果としては、刀」

『じゃあその条件で探せばいいだろう?』

「もう全部の店を回ったって。・・・・・・ん? あの店は回っていない気がする。行って見るか」



 赤を基調とした剣を並べている出店。その前に行き品物を物色する。



「いらっしゃい! 好きに見てってくれ。持ってみても良いぞ」



 店の品を見ていると店長らしき人物が声をかけてきた。容姿は赤髪黒眼、髪は肩までかかるぐらいの長さで、後ろで少し縛っている。目が少し鋭いが、気のいいお兄さん感が漂ってくる。整った顔立ちは、まさにイケメンという言葉が相応しいだろう。珍しい赤髪だなと、思っていると一つの剣が目に入った。



「店長、この九本の線が入った剣はなんなんだ?」

「ああ。この剣は"連接剣"と言ってな、魔力を注いで見ろ」



 店長にそう言われ、剣に魔力を注いでみた。すると刀身が柄から離れ、十個に別れて宙に浮いた。不思議に思った隼人は、からくりを店長に聞く。



「どうなってるんだ? これ」

「これはな、通称〝乖離石〟という鉱石を使っている。正式名称は〝魔力受信乖離反応石〟。だから乖離石なんだ。名称の通り、乖離石は一定以上魔力を受信すると、石同士が離れる。魔力を注いでいる間は、常に石は乖離した状態だ。付かず離れずだからバラバラにならない。ま、同じ鍛冶師仲間からは、駄作だなんて言われるけどな」

「へぇ。なあ、これは振るうとどうなるんだ? 鞭のようにしなるのか?」

「ああ。剣先は振るった二秒後ぐらいに追い付くって感じだな」

「なるほど、そうか。十分戦闘でも使えるな。俺は結構こういうタイプの剣は好きだぞ」

「その剣の良さを判ってくれるか! やっぱそうだよな、俺の中でも最高傑作の一つなんだよ。うんうん、判ってくれるやつが居てくれてうれしいぜ。あ、良かったらその剣やるよ」

「っ! 良いのか? 一応商品だろ? それじゃあ商売にならないんじゃ・・・・・・」

「いや、いいんだ。この感情が共有出来ただけでも嬉しい。良かったら貰ってくれ」

「・・・・・・ありがたく頂戴するよ。出来れば名前を教えてもらえないか? これからひいきにするから」

「そうか? 俺はヴェルクロム・デミウルゴス。そしてその剣の名前は〝大蛇の連接剣〟。もし武器のことで何かあったら教えてくれ。なるべく安くしよう」

「俺はハヤト・カンザキだ。宜しくな」

「こちらこそ宜しく」

「じゃあ、またいつか」

「おう、じゃあな」



 剣をただで譲ってもらい、隼人は足早に店を後にする。新たな剣を手に入れて浮かれながら、ホテルに戻った。



「アメ、連接剣をなるべく速く自分のものにしたい。練習しに行くぞ」

『了解だ』

「じゃあ、訓練場に行くか」



 隼人はアメと会話をしながら訓練場に向った。隼人やシュラたちが泊まっているホテルには訓練場があり、大会参加者なら自由に使えるようになっている。そこを利用しようと思い、向かった。






~~~~~~~~~~






「んん~......眠いな」

『昨日夜遅くまで練習なんてするからだ。早寝早起きは常だろう?』

「まあ、それもそうなんだが・・・・・・」



 あの後、隼人は夜遅くまで連接剣の練習をして、眠りについた。そして今日は第二回戦が行われる。そのため、隼人は身支度を整えてからスタジアムに向かった。



 まずは一試合目、シュラ対ガルム・ズールだ。



「ふん! やっとお前をぶちのめせる! このガルム様がお前をギタギタにしてやるよ!」

「弱い犬ほどよく吠えるものだな」

「なんだと小僧がぁっ!」

『さ、さぁて! これより《グランアーサー》第二回戦第一試合を行いたいと思います! それでは、試合開始です!』



 デリアの試合開始の合図と共に、銅鑼の音が会場内に響く。それを聞いたリング上に居る二人は、一気に走り出す。ガルムはこれと言った武器を持たず、徒手空拳を武器としている。一向シュラは、人間としては珍しい左腰に携えている反りの有る剣、〝刀〟を抜刀する。



「があっ!」

「ふっ!」

「んなっ!?」



 シュラに突っ込んだガルムは、シュラが抜刀と共に刀を振り抜いたことで発生した氷に包まれ、身動き一つとれなくなってしまった。



『し、試合終了ーッ! 第一試合勝者、シュラ・マクスウェル選手』

『凍結させて攻撃を封じる。真っ正面から向かってくるズール選手には有効な手段と言えますね。あ、わたくしは解説のウォリスです。よろしくお願いします』



 デリアの横に座っている男、ウォリスは右斜め前、正面、左斜め前にそれぞれ向き、頭を下げる。



『誰に喋ってんですか、ウォリスさん? まあ、それは置いとくとしましょう。次は第二試合目、ジュドー・バドン選手対アドレナ・グラン選手です。準備の方をお願いします。さて、ウォリスさん。バドン選手とグラン選手、どちらが有利ですかね?』

『わたくしの見解ですと、大会唯一の魔術師であるバドン選手が一見有利に見えますが、グラン選手の方が有利に思えますね』

『ほう、それは何故ですか?』

『魔術というものは、詠唱が必要になります。故に時間が必要となりますが、グラン選手はあの眠たそうな外見とは裏腹にとても速い。第一回戦では彼女に誰一人触れられていませんでした。以上のことを鑑みると、グラン選手が有利だと思われますね』



 自身の見解を話しているウォリスは、どこか自慢気だった。ただ、それは的を射ていたのか、皆が聞き入っていた。



『なるほど、なるほど。むむっ、話している内に時間が結構経ちましたね。両者、リングに上がりましたので、これよりっ! 第二回戦第二試合を執り行います! それでは・・・・・・試合開始っ!』



 銅鑼の音が響き渡る。それと同時に、バドンは詠唱を行う。



「〝青き水よ、凍てつき凍れ、凍土とかせ〟ッ!」

「ッ!」



 バドンの詠唱が終わるのと同時に、リング全体が凍りつく。アドレナはその場でジャンプし回避する。



「〝忍技 五月雨〟」

「なっ!」

『おぉーっと、これはぁ! アドレナ選手が投げたクナイが、いくつものクナイに分裂しまるで雨となっている!』



 デリアの言葉通り、アドレナが放ったクナイが無数に分裂し、クナイの雨を作り出してる。それを魔法を唱えて防ぐ、も。



「終わり・・・・・・」

「ぐっ、降参です・・・・・・」

『おぉっと、ここで降参宣言! 第二回戦第二試合勝者、アドレナ・グラン!』



 二試合目はアドレナとかいうやつが勝った。クナイによる広範囲攻撃。中々に厄介と見た。



『さてさて、さぁて! どんどん参りましょう! 次はリック・ドーク選手対ドラゴール・ジョーズ選手です。両選手は準備のほどをお願いします』



 デリアは、肩を落としながら退場するバドンと無表情のまま退場するアドレナを見送った後、ドラゴールたちに準備を促す。



『さてさて、ウォリスさん。率直なところ、ドーク選手とジョーズ選手どちらが有利でしょうかね?』

『今回は、単純にジョーズ選手の方が有利でしょう。ドーク選手は予選で搦め手を使っていました。罠による奇策。ですが、ジョーズ選手は単純な力でドーク選手を凌駕しています。よっぽどのことがない限り、ジョーズ選手が負けることはないでしょう』

『なるほどなるほど。さて、両選手の準備が終わりましたので、これより! 第二回戦第三試合を開始いたします。それでは、試合開始ですっ!』



 デリアの試合開始の合図と共に鳴らされる銅鑼の鐘。ドークは後ろに後退し、準備をしようとした、が。



「はあっ!!」

「なっ! ......がはっ!!」



 ドークの体を、ドラゴールが放った拳圧が襲った。瞬殺、その一言に尽きた。



『し、試合終了ォーッ! 勝者、ドラゴール・ジョーズ選手ですっ!』

『やはり、ジョーズ選手の勝利でしたね。しかし、まさかあそこまで瞬間的に拳圧を飛ばすとは。去年より一層技と力により一層磨きがかかっていますね』

『ええ、確かに。ただいま、ドーク選手を医務室へ移送中ですので、暫しお待ちください。さて、ウォリスさん。まさかの瞬殺。我々ももう少し時間がかかると思っていましたが、ここまで圧倒されると実況の仕事が無くなります』

『そうですね。まあ、仕事をせずにお金を貰えるのなら、それに越したことはありません』

『少し黙っててもらえます? 税金泥棒』

『んん~辛辣な言葉、ゾクゾクきますね』



 変な事を言い出したウォリスを傍目に、デリアは暫し呆然としてしまう。会場もまるで凪がごとく静まり返り、誰一人、その沈黙を破ろうとしなかった。そんな数分の間にレガールと隼人は準備を終え、リングに上がっていた。



『・・・・・・あ、さ、さて、次はレガール・バルガ選手対ハヤト・カンザキ選手です。両名は準備をしてください。というか、もう準備終わってたんですね。では、これより! 第二回戦第四試合を開始します!』



 デリアの言葉と同時に鳴り響く、試合開始を告げる銅鑼の音。



 その銅鑼の音が会場に鳴り響くのと同時に、試合は決する――――――はずだった。



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