ダンジョンでの戦闘 そして予期せぬ裏切り ※
改稿済み
朝早く、ダンジョンに向かうため王城を出た。道中戦闘は無く、予定より早くダンジョンについた。そしてずっと歩いてきたため、ダンジョンの前で少し休憩をしてからダンジョンに入った。ちなみにメンバーは担任、副担任含む非戦系メンバー、そして戦うのが怖いものたちを除く、クラスメイト十五人+騎士八人だ。
「ダンジョンってまんま洞窟じゃないか」
「そうですね、薄暗くて気持ち悪いです」
隼人と愛莉の何気無い会話が終わった途端に、モンスターの群れがハヤトたちを襲ってきた。その数は、ゆうに二十体をこえている。そこにレンジの声が響く。
「気をつけろ、こいつらはボーンデッド、一体一体は大した強さじゃないが十体二十体と群れで行動して連携をとってくる。油断はするな」
ボーンデッド、人型の骸骨が剣や槍、弓矢を持っている。こちらが戦闘態勢に入るのと同時に、あちらが攻めてきた。
そして、戦闘が始まった。
ボーンデッドは、相当高度な連携をとっている。近づこうとすれば槍、剣に阻まれ、逆に遠ざかれば弓矢の餌食となる。魔物の弱点は、魔力でできている〝魔石〟と呼ばれている部分らしい。そこをつくか、モンスターの魔力がつきるまでダメージを与えないと、倒せないと言っていた。そこでレンジが、ボーンデッドの弱点を教えてくれる。
「ボーンデッドは、命令を出している司令塔を倒せば統率が取れなくなり、連携攻撃が無くなる。取り敢えず司令塔を探して討ち取れ、司令塔はひときわでかいからすぐ見つけられる筈だ」
「わかりました。皆、司令塔のような奴を見つけたら教えてくれ」
柊の言葉に、皆は「うん!」とか「わかった」という声が響く。そんな中でハヤトは、柊と反対の方向を見ていた。
(・・・・・・と言うか、どう見てもあれが司令塔だろ)
隼人が見ていた方向には、一際大きく王冠をかぶったボーンデッドが居た。一本道の奥に居て、魔法でも弓矢でも届かない距離だ。眠っているのかどうか判らないが、全く動かない。
(あれって、ゲームとかのフィールドボスの類いか? ・・・・・・いや、中ボスかな。ある一定の距離に入ると、強制的に戦闘開始なんだろうな。どうする、柊に教えるか? ・・・・・・いや、まずレンジさんに相談してみよう)
そう考えたので、この事をレンジに伝えようとしてレンジに近づくが、剣を持ったボーンデッドが邪魔をする。
(くそっ、ほんと数が多いな。湧いてきてるんじゃ無いのか、これ!?)
そう思いながらボーンデッドたちを蹴散らしつつ歩を進めていくと、レンジのもとに辿り着いた。
「レンジさん、あっちのほうに王冠をかぶった大きいボーンデッドが居たんですけど、どうしますか」
「ボーンデッドキングか。くそっ、まだ一階層なのに何故そんな奴が居るんだ? ・・・・・・まあいい、迂回ルートを行くか。皆聞いてくれ! 諸事情で迂回ルートを行くことにした! 俺たちについてきてくれ!」
そう言われたので、皆レンジについていく。そして何回か戦闘をしながら、いよいよ五階層に到着した。相当疲労が溜まっているだろうということで、近くにあった大きな部屋でひとまず休むことにした。隼人は壁に寄り掛かり、ふと、今の自分のステータスが気になったので、確認してみる。
ハヤト・カンザキ 性別 男(16) レベル10
HP1500
MP1200
ATK1300(1400)
DEF1400(1500)
SPD1500
MIA1000
MID1400(1500)
DEX1300
能力
不明 魔力操作 第六感 異世界人補正
(また増えてるちょっと確認してみるか)
そう思い、〝魔力操作〟を押してみる。
能力《魔力操作》
"魔力を消費することで、身体や武器の性能を強化できる。また、魔力を防護壁や弾丸のように放出できる"
(これまた便利な能力だな。使い方によっては、相当な戦力になるな。いい能力だ)
「よし、休憩は終わりだ。先に進むぞ」
隼人が能力について考えていると、レンジから号令が発せられる。皆レベルが七以上になったので、そのまま一気に十五階層に入った。一本道の廊下や崖が多く、気を抜けば挟み撃ちに遭いそうだ。それに、モンスターも格段に強くなっているように感じ、苦戦することもあった。そんな時、二つの崖を繋いでいる一本の通路に、地鳴りが響く。そこに現れたのは、巨大な体躯の竜だった。
「まさかニズヘッグか! でも何でこんなところにいるんだ。・・・・・・くそっ! 考えてる暇なんてないか。皆逃げるんだ! こいつにはまだ勝てない! 逃げろ!」
「大丈夫ですよレンジさん、今の俺らが負ける訳がない!」
「駄目だ、逃げろ! くっ、全騎士に告ぐ! こいつらを守れ!」
相馬や柊達が、ニズヘッグと呼ばれた竜に攻撃しようとしたところで、レンジが号令を発する。その号令と共に、騎士たちが柊たちを囲むように守る。だが、次の敵の攻撃で呆気なく騎士たちがやられた。
「ガアアァァァァッ!!」
「うわぁぁぁ!!」
(どう見ても、あのモンスターはヤバイだろ。早く気づけ、相馬!)
相馬に対して、心の中で訴える。声に出して叫ぼうとしたが、ニズヘッグの攻撃による恐怖で、体が竦み上がってしまっている。
そこで隼人は、とある作戦が浮かんだ。だが、それはとても無謀。五割、いや七割近い可能性で手痛い一撃を食らう。その程度では済まないかもしれない。死ぬ可能性だってある。だが、相馬や柊を制止させるにはこれしかないだろう。いや、考えればまだ別の作戦だってあるだろう。だが、そんな時間は無い。そして隼人は、決意を固めて竦み上がっている体を無理に動かし、レンジの許に向かった。
「レンジさん、俺が囮になるから、あいつらを連れて逃げてくれ!」
「・・・・・・無理だ。俺はお前らを守るよう命令されている。一人たりとも欠けさせない」
この言葉は、彼の性格と自信から来るものだろう。
守ると誓った相手を、守り通すという信念。
一瞬、その信念に自分の決意が揺らいだ。だが、どのみち今はこの策しか無い。誰かがやらないといけないのだ。なら、この中で最も役にたたないであろう、自分がやるべきだ。
「レンジさん、どのみち誰かがこの役をやらなければいけない。なら、対した能力の無い俺がやるべきでしょう」
「・・・・・・判った。だが合図をしたら戻ってこい、いいな!」
「判りました」
レンジは隼人の言葉を聞いた後、苦虫を噛み潰したような顔をした。だが、それも一瞬。すぐに隼人に視線を向け直し、言葉を放った。その言葉に隼人も賛成し、ニズヘッグ目掛けて走り出す。
「はあっ!」
そう叫びながら〝第六感〟と〝魔力操作〟をフルに使い攻撃をする。だが攻撃力が足りないのか、それとも相手がの耐久力がずば抜けてるのか、それはさだかでは無いが、全く攻撃が入らない。いや、両方だろう。ともかく、今は全神経をニズヘッグに注ぐことで、相手の行動を間一髪避けている。
(やっぱ勝てないな。ダメージも与えてるのかこれ? まあいい、合図が来るのを待つか)
合図が来るのを待ちながら、攻撃を避けつつ斬撃を放つ。そして、数分もせず内にその時が来た。
「よし、ハヤト。戻ってこい!」
「やっと来たか・・・・・・」
小さく呟く。素っ気なく見えるが、相当歓喜に満ちている。そして、レンジや柊達が集まっている場所に走る。
「魔法の準備をしろ、ハヤトが戻ってきたら撃つぞ!」
「「「了解!」」」
(よし、これで取り敢えず無事に逃げられる)
そう確信した瞬間、レンジ達が居る場所から十を超える魔法が飛んできた。
「発射!!」
風切り音などがする、いろいろな魔法が放たれる。その時、隼人を含む誰も気づいていなかった。魔法の準備をしている一人の口許が、弧を描いていることを。そして、そのうちの一つが狙いを変え、隼人に迫る。強烈な音を上げて、隼人を通路の無い崖へ誘い込む。なんとか耐えたが、ニズヘッグとの戦闘や魔法が着弾した影響で、廊下が攻撃に耐えられなくなり崩壊を始める。
(くっ、マジかよ。・・・・・・まあ、備えあれば憂いなしだな。もしかしたらのためにロープを持ってきておいて正解だな)
ロープの先には小さい鎌がついており、即席鎖鎌として使用可能だ。何故こんなものを持っているのかというと、昨日聞いた会話からこういうことも有り得るかもしれないと思い、今朝愛莉が起きる前に作っておいた。一つでも多くの危険を回避するためだ。レンジや柊を含めた誰もが安心した直後―――――
―――――ブチッ―――――
(なッ、マジかよ! 風魔法か!? あ~あ、こりゃ死ぬかもしれない、愛莉ごめんな、先に逝くかも。くそっ、もし生き延びれたら、陰湿なイジメに遭わせてやる・・・・・・)
死を覚悟しながら、崖に落ちていく兄を見て愛莉は、半狂乱になりながら必死に兄の名前を呼ぶ。
「兄さん! 兄さぁぁぁん!」