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無能と呼ばれ剣聖になった男  作者: 悠渡
序章 剣聖の物語の幕明け
5/22

アメとの出会い、そして旅立ちの時 ※

改稿済み

 


 ――――――とても暗く、何も見えない真っ暗な闇。



 そこは、円柱状に切り抜かれたような岩場。その地面に、一つの影。いや、この際その表現は間違っている。一つの呻き声。痛みを堪えるような、呻き声だ。



「うぅ・・・・・・ん? どこだ、ここ・・・・・・真っ暗で何も見えないぞ」



 そう呟いたのは、誰かの魔法で崖に落とされた隼人だった。だがすぐに自分が動けないことに気づく。



(ヤバイな。全く動けないぞ、これ。って言うか、何でこんなとこにいるんだっけか・・・・・・そう言えば、魔法で崖に落とされたんだったな。はあ、これ仕組んだの、あの三バカトリオだろ。ったく、面倒なことをしてくれたな。どうする、崖から出てあいつらのもとに帰るか。いや、このまま一人旅でもするか。ん~、本当にそれでいいだろうか。いや、迷うことも無いだろう。一人旅でけっ)

『くくくっ、あははははは! 面白いな小僧。お前、ここから本当に出られると思っているのか?』



 一人悩んでいると、何処からか声が聞こえた。若干男口調だが、声のトーンからして女性だろう。



「誰だ、誰かいるのか?」

『ここだよ、ここ』

「どこだよ?」

『はぁー、頭を上げてみろ』

「は?」



 そういわれ頭を上げてみると、若干この暗闇に慣れた目が、台座に刺さった一振りの剣を捉える。だが、その女性はどこにも居ず、再度問う。



「どこに居るんだ?」

『だぁ~か~ら~、ここだって言ってんだろうが! お前が見ている剣が私だよ!』

「は? 剣がお前? 何で剣が喋ってんだよ」

『それは、私が剣についてる精霊だからだよ』

「精霊? 何だよそれ、いや待てよ。・・・・・・精霊ってあの精霊族か!?」

『ほぉ~、察しがいいな。そう私は精霊族の内の一精霊だ。まあ、今は封印されているんだがな』

「封印? まあいいや、それより何で精霊族がこんなところにいんだよ。精霊族って確か、滅多に見れないんだろ?」



 そう精霊族は滅多に見れない。何故なら、まず何処にも里と呼べる場所が無く、滅多に人前に現れないからだ。だから、精霊族を見たことがあるものは限りなく居ないに等しい。だから精霊族は滅多に見れない。見れたら奇跡とまで言われるほどだ。



『まあ、色あったんだ。以前契約していた人物との契約が破棄されてから、ずっとここに封印されているからな。退屈で仕方がない』

「誰もここに来ていないのか」

『ここはダンジョン最深部、最終階層だからな。私が封印されてから誰も来ていない』

「最終階層? もしかしてここって第百階層なのか!?」

『そうだが、何か問題でもあるか?』

「大有りだろ! そうか、だからお前は俺のことを笑っていたのか」



 ダンジョン最新部。今まで文献でしか確認されていなかった、未知の領域と呼ばれる場所。魔獣の強さも、上の階層の百倍近いとかなんとか。そんな場所に落ちていたのだ。痛くて動けないし、例え動けたとしても上まで辿り着けないだろう。一階層上がる前に瞬殺だ。あの、攻撃が通らなかったニズヘッグみたいな奴が蔓延っているのだ。最悪だ・・・・・・



 と、思っていた時だった。謎の精霊から、助け船が出された。


『まあな。だが、決して出られないと言うことでも無いぞ』

「本当か!? どうすればいい?」

『簡単なことさ。私が宿っているこの剣を抜き、私と契約すればいい。そうすれば、お前の傷もある程度は癒えるぞ』

「何かリスクはあるのか?」

『無い』

「そうか。・・・・・・なら、まず俺の体を治癒してくれ」

『少ししか治癒出来ないぞ』

「少しでも動ければいい」

『了解した』



 黄金の光が、隼人の体を包む。そして、光が消えるのと同時に傷が癒え、体が動かしやすくなっていた。



「よし、これである程度は動けるな。それじゃあ契約開始だ。どうすればいい?」

『私を抜き、天に掲げこう叫んでくれ・・・・・・』



 精霊の言葉に耳を貸し、契約の言葉を教えてもらう。



『よし、じゃあ行くぞ』

「《我、汝と契約する者なり。汝の力を我に捧げ、我の力を汝に捧げよう。我は汝と共にあり、汝は我と共にある。今ここに、汝との契約は成される》・・・・・・これでいいのか?」

『ああ、それでいい。すまないな。これでまた冒険が出来る。気持ちが高鳴るなぁ』

「そう言えば、お前の名前は何て言うんだ?」

『名前かぁ、う~ん。・・・・・・そうだ、アメでいい』

「アメか。判った、これから宜しくなアメ」

『おうよ。こちらこそ宜しくな、ハヤト。いや、マスターと呼ばせてくれ』

「ああ、いいぞ。・・・・・・それよりもさ。一つ気になったんだけど、何故に男口調?」



 率直な疑問を述べてみた。いやだって、十中八九女性だろう。なのに、男口調。疑問に思うのは、何も間違って無いだろう。



『ん? その事か。えーっと、先々代の契約者が、こんな口調だったんだ。初対面の奴には、この口調で通す』

「そうか、判った。それより腹が減ったな・・・・・・そういやあの竜の肉って、食えるんだろ、アメ?」

『まあ食べられないことはないが、黒い部分は食べるなよ。魔石の周りの部位は、魔獣以外には毒だ』

「判ってるって。それじゃあ、食うか。......って、どうやって食べよう?」



 その瞬間、腰にさしてある剣が光り、魔力が溢れ出す。そして、その魔力を帯びた光が人型に成っていく。その姿は、金髪金眼でスラッと伸びている手足が特徴的な、整った顔立ちのまさに絶世の美女と呼ぶに相応しい姿だった。



「ムフフ、やっぱり動くならこっちの姿だなぁ」

「あ、え? どうなってんだよ」

「自身の魔力で変化したんだ。可愛いでしょ、この姿」

「精霊族って、皆変化出来るのか?」

「無視!?」

「いいから教えろよ」

「むぅ~、まあいいけど。精霊族が変化するには、主に二つ条件があるんだ。一つ目は、誰かと契約していること。二つ目は原初に近いこと。このどっちかを満たしていれば、変化出来るよ」

「ふーん、あのさ、原初って何?」

「精霊っていうのは、この星アーカルディアが生み出した存在なんだ。最初に生み出された十二体が原初と呼ばれる存在で、その次に生み出された十五体が第二世代、そしてさらに生み出された十八体が第三世代。この第二世代と第三世代が、原初に近い存在なんだ」

「ってことは、アメは原初に近い存在なのか」

「私は・・・・・・原初の次に生まれた存在だから、第二世代だよ」

「ふーんそうなのか。それよりアメ、火を起こす方法を知らないか?」

「ちょっと待ってて」



 アメがそう言うと、突如虚空に火が出現する。隼人は、その火でニズヘッグ死したニズヘッグの肉を焼く。こんがり焼けた肉を、アメと共に完食した。



「よし、腹が膨れたし脱出するか」

「私も少し食べれたし満足かな。じゃあ脱出しよう」



 またもやアメの体が光り、剣に収まっていく。



『脱出開始だ』



 アメがそう呟くと、隼人の背中から魔力の翼が生え、飛び立った。



「ちょ、ちょっと待ったアメ! 速い速い速い!」

『ふふふ、気持ちいいなぁ』

「アメ! 聞いてるのかアメ! ちょっとアメ、待て待てま・・・・・・!」



 岩で出来た通路を、隼人が貫いていく。ダンジョンに鳴り響く音は、とても強烈だった。



『スタッとッとッと。ふう~、やっぱり飛ぶのは気持ちいいなぁ。マスターもそう思うだろ・・・・・・ん? どうかしたのか、マスター?』

「気持ち悪い、っつか頭痛い」

『情けないなぁ、マスター』

「・・・・・・まあいいや。それより冒険の始まりだ。行くぞアメ」

『わかっているぞマスター』

「んじゃ取り合えず、しゅっぱーつ!」



 そう叫びながらダンジョンを跡にする、こうして神崎隼人の冒険が始まった。



序章あと一話です。次はクラスメイト視点です

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