アメとの出会い、そして旅立ちの時 ※
改稿済み
――――――とても暗く、何も見えない真っ暗な闇。
そこは、円柱状に切り抜かれたような岩場。その地面に、一つの影。いや、この際その表現は間違っている。一つの呻き声。痛みを堪えるような、呻き声だ。
「うぅ・・・・・・ん? どこだ、ここ・・・・・・真っ暗で何も見えないぞ」
そう呟いたのは、誰かの魔法で崖に落とされた隼人だった。だがすぐに自分が動けないことに気づく。
(ヤバイな。全く動けないぞ、これ。って言うか、何でこんなとこにいるんだっけか・・・・・・そう言えば、魔法で崖に落とされたんだったな。はあ、これ仕組んだの、あの三バカトリオだろ。ったく、面倒なことをしてくれたな。どうする、崖から出てあいつらのもとに帰るか。いや、このまま一人旅でもするか。ん~、本当にそれでいいだろうか。いや、迷うことも無いだろう。一人旅でけっ)
『くくくっ、あははははは! 面白いな小僧。お前、ここから本当に出られると思っているのか?』
一人悩んでいると、何処からか声が聞こえた。若干男口調だが、声のトーンからして女性だろう。
「誰だ、誰かいるのか?」
『ここだよ、ここ』
「どこだよ?」
『はぁー、頭を上げてみろ』
「は?」
そういわれ頭を上げてみると、若干この暗闇に慣れた目が、台座に刺さった一振りの剣を捉える。だが、その女性はどこにも居ず、再度問う。
「どこに居るんだ?」
『だぁ~か~ら~、ここだって言ってんだろうが! お前が見ている剣が私だよ!』
「は? 剣がお前? 何で剣が喋ってんだよ」
『それは、私が剣についてる精霊だからだよ』
「精霊? 何だよそれ、いや待てよ。・・・・・・精霊ってあの精霊族か!?」
『ほぉ~、察しがいいな。そう私は精霊族の内の一精霊だ。まあ、今は封印されているんだがな』
「封印? まあいいや、それより何で精霊族がこんなところにいんだよ。精霊族って確か、滅多に見れないんだろ?」
そう精霊族は滅多に見れない。何故なら、まず何処にも里と呼べる場所が無く、滅多に人前に現れないからだ。だから、精霊族を見たことがあるものは限りなく居ないに等しい。だから精霊族は滅多に見れない。見れたら奇跡とまで言われるほどだ。
『まあ、色あったんだ。以前契約していた人物との契約が破棄されてから、ずっとここに封印されているからな。退屈で仕方がない』
「誰もここに来ていないのか」
『ここはダンジョン最深部、最終階層だからな。私が封印されてから誰も来ていない』
「最終階層? もしかしてここって第百階層なのか!?」
『そうだが、何か問題でもあるか?』
「大有りだろ! そうか、だからお前は俺のことを笑っていたのか」
ダンジョン最新部。今まで文献でしか確認されていなかった、未知の領域と呼ばれる場所。魔獣の強さも、上の階層の百倍近いとかなんとか。そんな場所に落ちていたのだ。痛くて動けないし、例え動けたとしても上まで辿り着けないだろう。一階層上がる前に瞬殺だ。あの、攻撃が通らなかったニズヘッグみたいな奴が蔓延っているのだ。最悪だ・・・・・・
と、思っていた時だった。謎の精霊から、助け船が出された。
『まあな。だが、決して出られないと言うことでも無いぞ』
「本当か!? どうすればいい?」
『簡単なことさ。私が宿っているこの剣を抜き、私と契約すればいい。そうすれば、お前の傷もある程度は癒えるぞ』
「何かリスクはあるのか?」
『無い』
「そうか。・・・・・・なら、まず俺の体を治癒してくれ」
『少ししか治癒出来ないぞ』
「少しでも動ければいい」
『了解した』
黄金の光が、隼人の体を包む。そして、光が消えるのと同時に傷が癒え、体が動かしやすくなっていた。
「よし、これである程度は動けるな。それじゃあ契約開始だ。どうすればいい?」
『私を抜き、天に掲げこう叫んでくれ・・・・・・』
精霊の言葉に耳を貸し、契約の言葉を教えてもらう。
『よし、じゃあ行くぞ』
「《我、汝と契約する者なり。汝の力を我に捧げ、我の力を汝に捧げよう。我は汝と共にあり、汝は我と共にある。今ここに、汝との契約は成される》・・・・・・これでいいのか?」
『ああ、それでいい。すまないな。これでまた冒険が出来る。気持ちが高鳴るなぁ』
「そう言えば、お前の名前は何て言うんだ?」
『名前かぁ、う~ん。・・・・・・そうだ、アメでいい』
「アメか。判った、これから宜しくなアメ」
『おうよ。こちらこそ宜しくな、ハヤト。いや、マスターと呼ばせてくれ』
「ああ、いいぞ。・・・・・・それよりもさ。一つ気になったんだけど、何故に男口調?」
率直な疑問を述べてみた。いやだって、十中八九女性だろう。なのに、男口調。疑問に思うのは、何も間違って無いだろう。
『ん? その事か。えーっと、先々代の契約者が、こんな口調だったんだ。初対面の奴には、この口調で通す』
「そうか、判った。それより腹が減ったな・・・・・・そういやあの竜の肉って、食えるんだろ、アメ?」
『まあ食べられないことはないが、黒い部分は食べるなよ。魔石の周りの部位は、魔獣以外には毒だ』
「判ってるって。それじゃあ、食うか。......って、どうやって食べよう?」
その瞬間、腰にさしてある剣が光り、魔力が溢れ出す。そして、その魔力を帯びた光が人型に成っていく。その姿は、金髪金眼でスラッと伸びている手足が特徴的な、整った顔立ちのまさに絶世の美女と呼ぶに相応しい姿だった。
「ムフフ、やっぱり動くならこっちの姿だなぁ」
「あ、え? どうなってんだよ」
「自身の魔力で変化したんだ。可愛いでしょ、この姿」
「精霊族って、皆変化出来るのか?」
「無視!?」
「いいから教えろよ」
「むぅ~、まあいいけど。精霊族が変化するには、主に二つ条件があるんだ。一つ目は、誰かと契約していること。二つ目は原初に近いこと。このどっちかを満たしていれば、変化出来るよ」
「ふーん、あのさ、原初って何?」
「精霊っていうのは、この星アーカルディアが生み出した存在なんだ。最初に生み出された十二体が原初と呼ばれる存在で、その次に生み出された十五体が第二世代、そしてさらに生み出された十八体が第三世代。この第二世代と第三世代が、原初に近い存在なんだ」
「ってことは、アメは原初に近い存在なのか」
「私は・・・・・・原初の次に生まれた存在だから、第二世代だよ」
「ふーんそうなのか。それよりアメ、火を起こす方法を知らないか?」
「ちょっと待ってて」
アメがそう言うと、突如虚空に火が出現する。隼人は、その火でニズヘッグ死したニズヘッグの肉を焼く。こんがり焼けた肉を、アメと共に完食した。
「よし、腹が膨れたし脱出するか」
「私も少し食べれたし満足かな。じゃあ脱出しよう」
またもやアメの体が光り、剣に収まっていく。
『脱出開始だ』
アメがそう呟くと、隼人の背中から魔力の翼が生え、飛び立った。
「ちょ、ちょっと待ったアメ! 速い速い速い!」
『ふふふ、気持ちいいなぁ』
「アメ! 聞いてるのかアメ! ちょっとアメ、待て待てま・・・・・・!」
岩で出来た通路を、隼人が貫いていく。ダンジョンに鳴り響く音は、とても強烈だった。
『スタッとッとッと。ふう~、やっぱり飛ぶのは気持ちいいなぁ。マスターもそう思うだろ・・・・・・ん? どうかしたのか、マスター?』
「気持ち悪い、っつか頭痛い」
『情けないなぁ、マスター』
「・・・・・・まあいいや。それより冒険の始まりだ。行くぞアメ」
『わかっているぞマスター』
「んじゃ取り合えず、しゅっぱーつ!」
そう叫びながらダンジョンを跡にする、こうして神崎隼人の冒険が始まった。
序章あと一話です。次はクラスメイト視点です




