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新世界へ

深夜のテンションに任せての意味不明文章。連載にするのもどうかと思ったので、区切りは悪いが、短編にて投稿しました。

反響があれば、やや嬉しいかも(笑)


 死とは無。

 無とは黒。

 黒は闇や漆黒にあらず。四方八方が黒。

 何故それを知るか。

 何故それを知ってしまったのか。

 答えは簡単。私は先日、黒を体感した。激しく咳き込んだ末、一時的に呼吸が停止し、黒の世界を視た。個は無く、全も無く。己すらも黒の一部。

 それが死。無とも言える死。万物は其処から生まれ、其処に帰す。

 生命とは残酷なものなり。常に一秒先に進むしか道はなく、振り返ろうが立ち止まろうが常に一秒先に進んでいる。

【色即是空、空即是色】

 この言葉を聞いた事はあるだろう。

 しかし、これが万物の理であり、万物の逆らえない法則なのだ。一寸先が闇でも、万物は一秒先にしか進めず、背後には奈落があるのみ。奈落を視る事は叶わず、目の前には一秒先の未来が広がるのみ。

 故に、後悔など関係無い。過去は副産物にすぎない。経歴や経過は、過程であり、既に奈落に沈んだもの。引きずり出すことも叶わず、取り出すことも叶わず。

 贄は奈落に堕ち、贄たる確証も無きに等しい。

 生きるという事は、時を捨て去る行為であり、流れた時を取り戻せぬ行為でもある。一秒先には生者しかいなく、死者は黒に飲まれ、奈落へと堕ちた者。

 崩れ行く世界を見るのもまた、生者の務めであり、世界を崩すのもまた、生者の務めとも言える。

 喜怒哀楽や苦しみ等の感情は、その場で切り捨てても何も変わりはしない。過去は奈落。色即是空、空即是色。己の先にあるのは、座して待とうが、走ろうが歩こうが、一秒先でしかない。


「過去を振り返る暇があるなら一歩でも前進しろ!!」

 頭の中に聞き覚えのない声が響き渡った途端、目が覚めた。どうやら私は、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。眠っていた時間は……と、ズボンのポケットに入れた懐中時計を開く。まぁおおよそだが、十五分程度といったところか。

 目の前には、アルコールランプで煮沸されたフラスコの中身の液体が、濃い黄色から赤色に変わっていく過程であった。

 これで何度目であろうか。人工的に人間の体内に流れる液体、血液を作り出そうとするのは。

「失敗を嘆くな!! 前だけを見ろ! 失敗を嘆いたところで何も変わらん!!」

 頭の中に直接鳴り響くような声。記憶には無い。しかし、相手は私を知っているようだ。

 私の進めている研究。それは、人工血液を作る事。これが成功すれば、輸血に困る事も無くなり、増血剤等も不要となる。何よりも、現状の人口減退の打開にも繋がり、今、別の研究施設で行われている新型クローンとの併用にて、人口の増加を推進出来るのだ。

 そうすれば、我々人類はもう一度地上の支配者として君臨し、新たな高度な技術をもって、新しい文明を築く事が可能になる筈なのだ……。


 神歴二千八百七十四年、十一月二十六日。海に浮かぶ小さな孤島に、宙から飛来したと思われる謎の隕石が落下。六つの大国から成り立っていた世界は、国議を行いその飛来物を調査する事に決定する。何が飛来したのかも判らないまま、調査隊が落下物付近に到達すると、森林のほぼ中央に円柱型のカプセルを発見。調査隊は、未知の素材で作られている可能性も考慮した上で、慎重にカプセルを調べようとしたところ、調査隊の一人が指を一本触れた瞬間、カプセルは半分に割れた。中には何も無く、カプセルも半分に割れた途端、腐蝕を始め、そのまま消え去った。調査隊はその旨を各国の上層部に報告。それを聞いた六つの大国の首脳は、現状維持を発令。しかしこれが悲劇の始まりだった。

 人間を除く全ての生物が肉食化し、世界から草食動物、草食昆虫が断絶したのである。人類は成す術も無く、シェルターを構築しそこに隠れ住んだ。しかしそこにある生物が天敵となった。以前であれば、どんな隙間からでも侵入する黒光りをする雑食系の昆虫であったが、地下シェルターに隠れるようになり、あの黒光りをした昆虫は見なくなった。しかしながら、どんな時でも天敵は無条件に現れる。それは、……蟻だった。強固な顎と牙を使い、コンクリート等の壁は容易く破壊され、元々地中に生息する奴等は、シェルター内にも意図も容易く侵入してきたのだった。すぐさま各国の研究者達は、害虫駆除内蔵のシェルター壁を開発する。そしてそれは各国に普及され、現在のシェルター構造に至る。国々はシェルター間にトンネルを張り巡らし、地中、海中トンネルが幾つも作られた。

 しかしながら当然と言うかなんと言うか、直面する危機は食糧難であった。あのキリンや象、カバや鹿迄もが肉食動物と化し、バッタや蝶、ミミズといった、これまでそんなに害があった訳でもない昆虫ですら肉食動物と化しているのだから。しかも何故か、人間は他種族から一番獲物にされ易い動物に成り下がっていた。

 一応人間は、この窮地を逃れる為、食糧調達の狩猟班、人類保管計画の為の研究班、いざという時の為の軍事班を作り、地下のシェルター内居住区にて細々と生を永らえていた。


「よう! 五二五、調子はどうだい?」

「よう。七〇三。絶好調! と迄はいかないが、取り敢えず順調だよ」

「取り敢えず……ってのは歯切れが悪ぃな。なんかあったのか?」

「いや別に大した事じゃないんだけど、一応人工血液は完成してる。でも人間には個体差があり、皆が皆同じ血液を共有している訳でもない。下手に輸血でもしたら、拒絶反応を起こして即死なんてケースも考えられる。だから、個体差を埋める研究を今しているとこ。って七〇三、何か用があってここに来たんじゃないの?」

「おぉっと、忘れるとこだった。ほらよ! メシ! 狩猟班が象だのサイだのと自慢してやがったが、どうせその辺のリスか猫程度だろう。どう考えても大きさが合わねぇ」

 そう言って七〇三は、手に持っていた香ばしい匂いのする肉を私に手渡し、机に肘を突いた。

「そうかも知れないね。でも、食糧がある事には感謝しないといけないね」

 そう言って笑い掛けると、七〇三は部が悪そうに頭をボリボリと掻きむしると「まあ、そうだわな」と一言ポツリと言って、出ていった。

 何か変な事言ったかなぁ……。と思いつつも、またフラスコに目を向ける。今度こそ! 今度こそ! と自分に言い聞かせながら。


「警告!! 警告!! 避難事項発令!! 警告!! 警告!!」

 赤いランプが点滅する中、大きな警告音が鳴り響いている。

 ん! と背伸びをしてから起き上がり、状況を確認する。どうやら、パイプラインで繋がれた南の大国、フレデンシアがシェルター内に昆虫を侵入させてしまったらしい。警告音が鳴り響く中、大きな機械音が聞こえる。きっと、他国への侵入を遮断する為、パイプラインの防護壁を下ろしているのだろう。まあフレデンシアには悪いが、一度侵入させてしまったのであれば、この対応は致し方無いと言わざるをえない。しかしながら、私にとっては、またとないチャンスでもあった。他国の開発している新型クローンに対抗して、開発途中にあったホムンクルスの実用性を試せる絶好の機会でもあったからだ。

 シェルター内の壁に内蔵した電子ロックキーを素早く押し、隣の秘蔵シェルターを解放する。その中で、培養液に浮き沈みするホムンクルスを数体抜き出すと、防護壁が降りるパイプラインの一つに列べ、前進、外敵殲滅の指示を与える。ホムンクルスはクローンと違い、感情も痛感も持ち合わせていない。言わば不屈の戦士。クローンはどうしても、遺伝子情報を元に培養する為、感情や感覚を持ち合わせてしまう。それに比べてホムンクルスは、無からの培養人間。人工的に作られた命であるが故に、感情、感覚の一切を持ち合わせていない。防護壁が閉まりきる前に、ホムンクルスを防護壁内へと進出させ、その活躍振りを部屋のモニターにて確認する。しかしまぁ、流石にホムンクルスである。肉体の一部を喰い千切られようと、片腕を失おうと顔色一つ変えずに、目の前の昆虫を一つ一つ踏み潰している。これはこれで使えるな。そう思いながら、モニターに目を向け直すと、そこには小さな珍客が待ち構えていた。蟻である。あの防護壁をくぐり抜けて来たのであろう。一匹、されど一

匹。その蟻は、私の足に噛み付くと皮膚と皮下細胞との間を這いながら、私の頭まで上り詰めてきた。私の思考を乗っ取るつもりなのであろうか? そうは考えたものの、放っておく訳にもいかず、私はおもむろに首にナイフをあてがうと、そのまま頭を切り落とし、その頭を保存液の入った大きなビーカーへ入れ、ホムンクルスの頭を一つ取り出すと、私の頭に付け替えた。……ふむ。少し脳内スペックが下がってしまったか……。とも思いながら、先程のビーカーに蓋をし、ホムンクルスが奮闘中のモニターへ目を向ける。しかしながら、もう雑音しか聞こえない乱れた画像があるだけだった。

「五二五! 大丈夫か!?」

 おもむろに扉を開けた七〇三だったが、私の頭が変貌している事に気付き凍りついた。

「ふむ。また、予想以上の反応だな」

 凍りついたままの七〇三の肩をポンと叩くと、七〇三はビクッと身体を跳ね上がらせると、「ま、まぁ、だ、大丈夫そう……なんだな……」そう言って顔面を蒼白にしながら退出していった。全く……あの馬鹿は、いつになったら慣れるんだ? これで何度目だと思っているんだ。と苦笑しつつも、心配してくれた腐れ縁の奴の蒼白の顔面を思い出して、思わず吹き出してしまった。

 さてと、だ。先ずは……と、先程ビーカーに入れた先程迄この肩の上に乗っかっていた頭を観察する。蟻は、状況が掴めず困惑し、且つ呼吸の出来ない状態に陥り、パニックを起こし、私の旧頭から離れて暴れている。しかし、密封されたビーカーの中には保存液しか入っておらず、暫くすると窒息し、頭から離れた状態で浮遊していた。まあ、生物である以上仕方のない事か……。と考えつつも、保存液の中から旧頭を取り出し、別の培養液の中へと移す。蟻は、電子顕微鏡にて隅から隅まで観察する事にした。


 現状、大陸は動植物と昆虫の弱肉強食の楽園と化している。しかし、人間もこのまま地下で生き続ける気など毛頭ない。決戦の日がいつかは判らないが、その時には、私のホムンクルス達に役立ってもらおう。そう、いつの日か……。七〇三、君は後、何年生きるんだい? 私は身体を付け替えながら、大陸を取り戻す迄、半永劫に生き続けるのだが……。








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