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優しい刃

生命の保証書のもう一つのエンディング。

 私は今、喉元に鋭利な刃の剣先を突き付けられている。優しい言葉の鋭利な刃を。

「来れるようになったら電話ちょうだいね」

 上司の優しい言葉。しかし、この言葉には隠された言葉が存在する。

「確実に休まず(・・・・・・)来れるようになったら電話ちょうだいね」

 という事だ。

 これは、私の深読みなのかもしれない。しかし、よく考えてみろ。連続勤務が当然か否かを。勿論、当然である。あてにしていた戦力が、意図も簡単に休まれては、信頼を失う原因になってもおかしくない。

 そこで私は考える。

『どうすれば、休む事無く出勤出来るかを』

 一日出勤すれば、次の日も連続で出勤すれば良いだけ。なのだが、私の場合そうはいかない。

 もし月曜日から出勤するとしよう。私の固定休は、火曜日と金曜日である。その為、月曜日から出勤すると、火曜日は公休になる。そして水曜日、この日を乗りきれば良い話なのだが、それが上手くいかない。どうしても身体が怖じ気付いて出勤出来ないのだ。

 これには理由がある。月曜日に出勤した時に、職員から受ける視線。これに、幻聴を乗せてしまうのだ。

【あれ? 辞めたんじゃなかったの?】

【まだ居たんだ】

【あれだけ休んでおいて、よくもまぁ顔が出せるもんだね】

【もう辞めたら?】

【顔を見るのも鬱陶しい!!】

【どうせまた、すぐに休むんでしょ?】

【いい加減にしたら!?】

 等々……。エスカレートすると、ネガティヴ思考もエスカレートする。

【ん? 生きてたんだ】

【早く死ねよバ〜カ!】

【死にたいんじゃなかったの?】

【消え去れ! 今すぐ目の前から!】

 そんな思考から、負の連鎖が始まる。ネガティヴ思考だからこそなのか、ネガティヴ思考じゃなくてもこうなるのかは確かじゃないが、負の連鎖は続いていく。

 では、水曜日から出勤すれば良いのでは? と考えるのが妥当であろう。しかし、水曜日からだと何だかキリが悪いような気がして、水曜日や土曜日からの出勤を避けてしまう。これは完全な現実逃避、もしくは自己肯定にしかならない事は百も承知なのだが。

 喉元に突き付けられた鋭利な刃。これを刃と感じなくならないと、私は先に進めない気がする。

 もう少し、職場から距離を置いた方が良いのだろうか……。しかし私の脳裏に過るのは、今迄裏切られてきた現実。でも今は、私が職場を裏切っている現実。

 はた迷惑な話。

「来れるようになったら電話ちょうだいね」

 優しいようで鋭利な言葉。私の未来は、前途多難に満ちている。

『いつになったら、確実に休まず(・・・・・・)行けるようになるのだろうか』

 そればかりが頭を過る。<二度ある事は三度ある>じゃいけないんだ。<三度目の正直>じゃないと……。

 そんな事ばかりを考えてしまう、ネガティヴ思考の今の私。






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