短編集No.035 世界教
世界は統一された国家──地球政府によって統治されている。しかし宗教は今なお数多く存在し、その多くが宗派に分かれている。
なぜ同じ人間同士で争うのだろうか。
幼い頃のトキヒサは、常に不思議に思っていた。
今ならわかる。宗教が違うからだと。
宗教が違えば文化も違う。そもそもとして、文化とは宗教というバックボーンに支えられていることが多い。
「あなた方、この地球には本来一つの宗教しかなかったのです。しかし何千年も前に神の怒りに触れた私たちは異なる言語、異なる宗教を信じるようになりました」
今日も信者の前で説経をする。
トキヒサ自身は信じていないが、信者が信じている。
それだけでトキヒサも、次第にそれが真実のように思えてくるのだった。
「ですから、今こそ世界に真実の宗教を広めるのです」
トキヒサは最後にいつもの言葉で締めくくり、信者からの質疑応答に入る。
「トキヒサ様、本日も素晴らしい真実をお教えくださりありがとうございます。
質問です。世界には一神教と多神教とありますが、この違いとはなんでしょうか」
「いつもご清聴ありがとう。
素晴らしい質問です。一神教とはつまり、神とその御使という解釈を行いました。
多神教とはつまり、主神とそのほかの神という解釈を行いました。
つまり、一神教における神は多神教における主神で、多神教におけるそのほかの神は一神教における御使です。
私たちの知る真実の世界は、主神とその他の神の世界です」
トキヒサは最後にいつもの言葉で締めくくる。
「みなさん、世界に真実の宗教を広めるのです」




