<3>蛸。考え、及ぶ。
察しの良い者ならもうわかっているとは思うが、これは最初に名言しておくべきであった。
この星は、本日私が想像した。想像し創造した。
ふと、なんの感情もなく、世界を想像してやろうなんて思いもせず、人間が痒い頬をかくように、心中に何か具体的なワードを浮かべたわけでもなく。
ただ事実として私がこの星を想像したという事象が眼前に広がる。
この開いた口が塞がらない「少年」も、教室から見える沈みかけの恒星も。
先程述べたように彼の頭の中の数分で出来上がった十数年生き凝り固まったかのような常識も。
この「少年」の、砂城唯人という名さえも。
哀れである。自身の名、ルーツさえ他者に起源がある。人間は生まれた時に親から名を与えられる。
始まりから与えられる立場。その立場すら私に与えられたものにすぎない。
人間が真に自ら、誰からも与えられる事なく獲得したものなどあっただろうか。
人間は盤上の駒を上手に動かせてもその駒は作り出せない。
私は改めて自身とその他の違いを認識させられた。この事実が毎回やるせない気持ちにさせる。
では、どうするか。やるせないほどに違いのある他者との邂逅。
現状、私はこの場を逃れられるほどの余力を残しておらず、また何故今回この場から想像が広がり続けているか理由がわからない。
眼前の「少年」は蛸がこのような場にいるわけがない、喋るわけがないというご立派な価値観、常識に囚われている。
もしも問いかけに応えようものなら「少年」はどうするだろうか。
教員を呼び撃退されるのだろうか。おいしいたこ焼きにでもなるのか?ソースとマヨネーズまみれになるのはまっぴらだ。または水槽にでも入れられワールドカップの結果を永延と占うはめに合うかもしれない。
このまま応えず時が経とうものならどうだろうか。
最善策。
最善策はなんだ。
価値観の凝り固まった他者に、その価値観に沿い逆らうこと無くこの場を切り抜ける策。
価値観。価値観。価値観。
蛸はこのような場にはいない。喋らない。
私には無い価値観。
今、私には無い価値観が運び込まれようとしている。
運び込む。
他者に自分の価値観、考えを運び込み、伝える。
しかし私は喋らない。
そんな何か檻に囚われているような感覚に陥る。
常識に囚われている。そう感じた。
そうか、囚われているのは
私だ。
ここまで来て漸く及んだ。
私は問いかけに応じる。蛸が喋るわけがないという常識を逸脱した行為にでる。
「そんなにおかしい事なのか?」
私は鳩に豆鉄砲を撃つ。
読んでいただきありがとうございます。




