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解決

解決編です。

三重オチです

最後の駆け足感は放っておいてください…

03


「よし。」

 僕は考えをまとめ、現場の隣の教室に四人を集めた。

「警察が来るまであと十分。ここでひとつ、僕の話を聞いてもらえますか? 」

「久我山の話? こっちは宮間先生が亡くなって動転しているんです。くだらない話はやめてください。」

「まあ小島先生、そういわないでください。いやなら聞かなくてもいいです。この教室にいてさえくれれば。」

「僕は聞くよ。宮間くんとは一番親しかったんだ。その僕が親しかった人間の最も期待している生徒がこの状況でなにを言うのか楽しみだよ。この、奥川君にしか犯行を行えない状況からどう推理を展開するのか、ね。」

 余裕ぶった口調だが、声は震えていた。きっと彼も、一番の親友であった宮間先生を亡くして悲しいのだろう。

 しかし、宮間。僕のことをそこまで買っていたとは。今更ながらに涙が出そうになる。

「え? 奥川君にしか犯行を行えない? 」

 そういったのは田所先生だった。

「ええ。聡明な福山先生は気づいたようですが、確かにいやな話です、気が付かないのも無理ありません。しかし、現場を見る限り犯行を行えるのは奥川だけなんです。」

「俺じゃない!」

 ずっと下を向いて震えていたが、このときばかりは強気に言い返す奥川。

「ああ、わかっているよ。僕は、どうしたら君以外に犯行を行えるかどうかを思い付いたわけだから。」

 そういうと彼は安心したようなしかしそれでいて不安に満ちた表情をしている。

「まずはこの事件の状況を説明します。」

 そう前置きして僕は先ほど整理したものをつらつらと述べた。

「……確かに彼以外に宮間先生を殺すことができた人はいないわね。」

 そういって心なしか奥川から距離をとる田所先生。

「今からそれを覆します。楽しみにしておいてください。小島先生も。」

 教室の端にたたずんでいた小島先生に一声かけ、僕は自分の考えを披露する。

「この事件、何が謎か、何が不思議なのかをまず考えてみてください。」

「…誰が殺したのか。」

「そうですね。一番は誰が殺したのか。です。しかし、意外と見落としがちだけれど大切なのはこれです。」僕は下唇を舐める。

「なぜ、あんな派手なやり方で殺したのか。」

 それを聞き福山先生が納得したような顔になる。

「確かにそうだね。ただこ、殺すだけなら一撃目の心臓を一突きするだけでよかった。」

「そう。そこにまず疑問を抱きました。そしてもう一つの疑問点は。」一呼吸置き

「今福山先生が述べられた、一撃目についてです。」という。

「一撃目? 」

 わけがわからないといった顔で田所先生が聞き返す。

「福山先生は一撃目の心臓を一突き、と言いました。しかし考えてみてください。」

 そう、ここが第一のポイント。

「いくら宮間先生でも、無抵抗に前から来るナイフに刺されるでしょうか? 」

「無抵抗? 」

「争った形跡が現場にはありませんでした。花瓶が倒れていましたが、それは水をかえていた途中だったからでしょう。よって犯人は後ろから近付いて一撃目を放ったと思われます。」

「ああ、そこまではいい。」

「しかし宮間先生は、正面から刺されていました。つまり」肺に入っていた息をいったんすべて吐き出す。

「一撃目は絞殺です。後ろから近づき、首を縄で縛った。」

「……」

「やりようによれば、素人でも一分と掛からずに意識を落とせるらしいですよ。ここで意識を落とし、窓に吊り下げ、心臓を刺した。犯行の順序はこうです。」

 言い放つと納得したような表情を浮かべる先生方。しかし福山先生は新たな疑問にぶつかったようで質問をしてくる。

「犯行の順序については納得したよ。でも、ここではじめの疑問に戻らないかい? どうしたそんな無駄なことをしたのか。」

「そうです。僕は実際ここでつまりました。そして一度は、ただの頭のいかれた人間の奇行、で片付けそうになったのですが、ここで考えたのです。」

 この行動にも意味があったのではないか、と。

「だってそうでしょう。奥川が犯人でないとして、ここまでの密室を作り上げた犯人が、そのようなことをするでしょうか? しないと思います。ここでこう思いました。この殺し方の派手さが、密室のカギだ、と。」

「この殺し方が、密室のカギ? 」

「そう。そしてそこまで思い至ってようやく思い出しました。教室は花瓶が割れている以外にもう一ついつもと違う点があったことを。本当に些細なことで、見逃しがちでしたが、そうです、掃除箱があいていました。」

「掃除箱というと、ホウキとかが入っている? 」

「そうです。小学生の時、よくあそこに隠れませんでしたか? 実はあの中、大人でも十分入れるくらいのスペースがあるんですよ。」

「……つまり久我山、君は犯人があの箱の中に隠れていたと言うのか? それはさすがに、くだらなさすぎないか? 」

「いいえ。本気です。先生、実際鍵を開けた瞬間目の前にあんな派手な死体がいたら、どうします? 」

「……僕たち大人でも、あそこまで派手な死体を見たら気が動転するね。」

「犯人の狙いはそこです。しかし、詳しいことはあとで言います。ここでは、犯人は掃除箱の中にいたと仮定してください。」

「わかった、続きを聞くよ。」

「あくまで僕は、奥川以外が犯行を行うとすればどういう方法がとれるか、ということを考えただけであって、今からはなすのは本当に馬鹿げた空想の物語かもしれません。そのことを頭に置いたうえで、僕の仮説を聞いてください。」


「犯人は、誰よりも早く学校に行き、まず職員玄関を開けた。そして、あの教室の鍵を開け、鍵は職員室に戻した。今、この高校には犯人が一人、そして鍵の開いた教室が一つあります。」

 僕はかみしめるように一言ずつ発する。

「ここで宮間先生が学校に到着し、犯人と合流します。そこで犯人は宮間先生におそらくこのようなニュアンスのことを言いました。『宮間先生、生徒から人気だけど、いつも朝なにしているのか教えてよ。もう君の教室開けてあるから行こう』という風に。そしてともに教室に向かい、宮間先生はいつも朝行っていること…花瓶の水をかえたりします。その瞬間、犯人は宮間先生を後ろから首を絞めて殺害しました。ここは先ほど述べた通りで、この後吊し上げ、胸を刺し、掃除箱の中に隠れます。」

 さあここからだ。

「ここで奥川が到着し、職員室から鍵をとり、扉を開けます。絶叫し、教室から出ていきます。ここで犯人は飛び出し、教室から出ました。」

 しかし。

「ここで誤算が発生します。その誤算のおかげで僕は気づきました。そう。廊下の奥から僕の声が聞こえてきたのです。」

 このままだと奥川は出し抜けたが久我山に見つかってしまう。

 そう考え慌てた犯人は、廊下の窓を開け、そこから出て行った。

「廊下の窓の鍵がここだけ開いていたというのは確認済みです。」

 あのとき頭を冷やすために窓を開けなければ気が付かなかった。

「そして犯人は、密室を作り上げた、と。」


 僕は話し終えた。

「……確かに、多少厳しいところはあるが、全然いい。あり得る話だ。」

「ありがとうございます。」

 警察がもう少しでくる。おそらく彼らも同じ推理をするだろう。

「でも、久我山。お前、まだ肝心なところ話していないぞ? 僕はもうすべて理解したが、田所先生や奥川、そして、小島先生にも最後まで話してやれよ。」

 やけに小島先生の部分を強調する福山先生。

「わかりました。」

 僕は少しだけ隠していたオチにあたる部分を語る。

「では誰が犯人になりえるか、というところまで話しましょう。犯人は窓から逃走したのち、そのまま帰ってこなかった、という可能性はとても高いです。ですが、それ以外に一つ可能性がありますよね。」

 一呼吸、ふた呼吸、三呼吸。

「小島先生。どうして、体に雪が積もっているのですか? あなたは今日、車で来ているはずだ。」

「……」

「え、もしかして宮間先生を殺したのは………え?小島先生、その体の雪は、窓から出て行ったときに…」


 その時、教室のドアが開いた。

「警察です。」

 小島先生はずっと黙ったままだった。



「へえ、面白い事件だったね。」

 簡単な事情徴収をうけた翌日、僕はことはらさんにすべてを話した。

 ちなみに警察に先ほどの仮説は述べていない。結構確信はあったが、警察もすぐ気付くだろう。

 学校は一週間ほど休校になる。

「でも久我山君。今日の新聞読んだ? 」

 ことはらさん…琴原さんにメールを送ったところそのような返事が返ってきた。

 新聞? 

 僕は新聞を読む。そこには。

「つ、捕まったのは小島先生じゃなくて、少年Aだって? 」

 そう、捕まったのは小島先生ではなく、奥川だった。

「なぜですか。僕の推理はあっていたはず。確かに奥川に犯行が行えるということを否定したわけではないですが、そうじゃないと掃除箱があいていた理由、窓が開いていた理由。それに小島先生に雪が積もっていた理由も説明できないじゃないですか。」

 そういった抗議のメールを琴原さんに送った。

 返信がくる。

「掃除箱は前日から開いていた。窓は宮間先生が換気しようとしていったん開けたが、雪があまりにも強かったので閉めた。その時に鍵をかけ忘れた。小島先生に雪が積もっていた理由は、ただ単に車から降りた時についた。何か反論は? 」

 反論はできなかった。

 確かにそう考えれば小島先生が犯人じゃないと言い切れる。

 もう一通メールが来た。

「そして君の推理は一つ重大な欠陥があるよ。」

 重大な欠陥? どこですか、と慌てて返信したらシンプルな答えが返ってきた。

「中庭は雪の更地だっただろ。」

「あ。」

 気付いた。

 そうだ、あの頭を浸すために窓を開けた時、確かにそこは足跡一つもない更地だった。確かに雪が降っていたとはいえ、数分前についた足跡が消えるほど降ってはいなかった。

「その通りですね。」

「理解が速くていいね。そう。だから結局、奥川以外に犯行は無理なんだよ。」

「……あれ? でも、昨日は全然気にならなかったんですが、返り血は? 人を刺した経験がないので何とも言えませんが、返り血を浴びる、とかよく言うじゃないですか。」

「人を刺した経験があればあったで困るけど。そこは簡単だよ。君の高校、学ランなんだろ? 殺したときはカッターシャツで、久我山君とすれ違った時は上を羽織った。そして君が自分で言っていた通り、往復三分で行ける道のりのなぜか五分くらいかかっていたんだろう? きっとそのすきにカッターシャツを…うーん、例えばトイレに流す、とか? まあ詰まると思うから違うかもしれないけれど、そのような処理をしていたんじゃないかな。」

 納得できた。

 確かに奥川以外に犯行を行える人はいないや。

「ありがとうございました。」

「いえいえ。」

 そして最後に僕は一番気になっていたことを聞いた。

「僕が琴原さんにはなしたプロットとほぼ同じことが起きたわけですが、あなたは何をしたんですか? もしかして、奥川に犯罪方法を教えた、とか? 」

 いつもはすぐに返ってくるメールだが、このときは少し間があった。

「ふふ、それこそ、馬鹿げた空想の物語だよ。」


 それ以降彼と連絡は取っていない。




「書けた。結局琴原の正体がわからないままだったけど、まあいいか。」

 琴原一成は小説家志望である。

「へえ、読ませろよ。……なに、この清水っていうヒロイン最初だけしか登場しないのか。てか、なんだよ、このことはらの設定、結局何をしている人なのかあいまいじゃん」

 響京介は琴原一成の親友である。

「まあいいんだよ。推理物に挑戦したのは初めてだったんだから。これからさ。」

 琴原一成は筆を置いた。


ありがとうございました!

調子に乗って推理ものとか書いてしまって申し訳ありませんでした

でも書いていて楽しかったですのでおーるおっけー

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