EP 9
絶対装甲(ブラックICE)を叩き割れ。特A級のゼロデイ攻撃
「オラァァァァァッ!!」
深紅に染まった巨神――聖獣機神ガオガオン・オーバークロック形態が、大地を蹴って跳躍した。
背中の朱雀が限界突破の推進力を噴き出し、白虎の右腕が黄金から赤熱へと変色しながら、巨大な蟲の要塞へと鉄拳を振り下ろす。
ゴガァァァァァァァァァァンッ!!!
新宿のビル群が揺れるほどの凄まじい衝撃音が響き渡った。
だが。
『……ハァーッハッハッハ! 無駄です、無駄ですよ特A級!』
モニター越しに、魔人ギアンの嘲笑が響く。
ガオガオンの渾身の右ストレートは、クイーン・アント要塞の表面に展開された『六角形の光の障壁』によって、完全に弾き返されていたのだ。
『我が社が誇る死甲虫型の絶対装甲。それはあらゆる物理的干渉、光学的エネルギーを反射・無効化する最強のファイアウォール(ブラックICE)! 貴方たちの残業も、この装甲の前には全て無に帰すのです!』
「チィッ! マジで硬ぇぞ玲王! アタシの拳が弾かれやがった!」
右腕の白虎が悔しげに呻く。
続く青龍のレーザーも、玄武の重力プレスも、絶対装甲の表面を滑るように無効化されてしまった。
無尽蔵に死蟲を生み出し続ける要塞と、一切の攻撃を通さない絶対装甲。
防衛省の坂上たちも、その絶望的な硬度に息を呑んだ。
「……絶対装甲だと?」
だが、コックピットの中。
鼻血で口元を赤く染めた玲王は、熱暴走で視界が揺れる中、特注のPCメガネの奥でギラリと猛禽のような光を宿した。
「そんなものは、ただの『硬直化したレガシーシステム』だ。どんなに強固な装甲だろうと、物理的に動いている以上、パーツとパーツの間に必ず『通信のラグ(継ぎ目)』が存在する。そこがお前たちの脆弱性だ」
玲王の特A級の脳髄が、超高速で演算を開始する。
巨大要塞の表面を覆う数万枚の甲殻。その動きのパターン、結合のタイミング、摩擦係数。
すべてを解析し、0.0001秒だけ生じる『ミリ単位の隙間』を特定していく。
「青龍。出力120%。対象座標X28、Y104。……ビームを1ミリに圧縮しろ。俺が指定したタイミングで、装甲の継ぎ目に『ポート(穴)』を開けろ」
『了解しました! 玲王様の計算、一寸の狂いもなく出力します!』
青龍がメガネを押し上げ、左腕に全エネルギーを集中させる。
「そこだッ!!」
玲王のエンターキーと同時。
青龍から放たれた極細の紅蓮レーザーが、要塞の絶対装甲がコンマ数秒だけ見せた『ミリ単位の継ぎ目』に正確に突き刺さった。
ジュゥゥゥゥッ!!
分厚い装甲の間に、針の穴のような極小の『脆弱性』が強制的に開けられる。
『な、何ィ!? 私の完璧な装甲に穴が……ッ!?』
ギアンが驚愕の声を上げる。
「ポートは開いた。……白虎、物理的ペイロード(鉄拳)をそこに叩き込め!! ゼロデイ攻撃(こじ開け)だ!!」
『任せなァッ!! アタシの怒り、全額受け取りやがれェェェ!!!』
白虎の雄叫びと共に、ガオガオンの右腕がその極小の穴へとねじ込まれた。
ありえない力技。しかし、オーバークロックによって赤熱化したガオガオンの装甲と、白虎の凄まじい馬力がクサビとなり、絶対装甲の亀裂を内側から強引に押し広げていく。
メキッ……メキメキメキメキィィィッ!!!
『バ、バカな!? そんな強引な力技で、我が社のセキュリティが……!!』
「セキュリティじゃない。お前のはただの『引きこもり』だ」
玲王が、血に染まった歯を見せて不敵に笑う。
「さあ、外殻(殻)は割れた。……中身のクソコードごと、まとめてデリートしてやる」
ガシャァァァァァァァンッ!!!!
白虎の拳が完全に装甲を打ち破り、クイーン・アント要塞の絶対装甲(ブラックICE)が、まるでガラス細工のように粉々に砕け散った。
防御を失い、無防備な巨体を晒すブラック企業の巨大要塞。
特A級社畜と神々による、容赦のない「最終面談」の準備が完全に整った。




