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【聖獣機神ガオガオン】特A級AIエンジニア、手作りスイーツで美少女聖獣たちをテイムして最強機神のマスターになる件  作者: 月神世一


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EP 1

限界社畜とボロボロの獅子

「……あ、赤信号がマカロンに見える」

深夜の東京。

ビルの谷間を縫うように歩く俺――百夜玲王ひゃくや れおの視界は、現在絶賛バグり散らかしていた。

72時間。

それが、特A級AIエンジニアである俺が、一睡もせずにサーバー室のキーボードを叩き続けた時間だ。

プロジェクトリーダーは突然失踪し、下請けが納品したコードはスパゲッティも真っ青の絡み合ったクソコード。それをたった一人で全て解読し、最適化し、なんとかメインサーバーの崩壊を防いだ帰り道だった。

致死量のエナジードリンクと、デスクの引き出しに備蓄していた大量の角砂糖で無理やり命を繋いだ肉体は、とっくに限界を突破している。

「このコードをプッシュ(提出)したら、家に帰って最高に甘いフォンダンショコラを焼くんだ……」

無意識のうちに、絵に描いたような死亡フラグを口走っていた。

脳が、細胞が、致死量の糖分を要求している。早く帰って、オーブンの予熱を開始しなければ。俺にとって、ミリ単位で分量と温度を計算するスイーツ作りは、唯一にして最大のストレス発散デバッグなのだ。

ふらつく足取りで、俺は旧新宿エリア――数年前に突如出現した『ダンジョン・トーキョー』の境界線付近の路地をショートカットしようと足を踏み入れた。

民間ハンターたちが一攫千金を狙って群がる危険地帯だが、今の俺にとって最大の敵はモンスターではなく『睡眠不足』だ。

ガキンッ!

「……痛っ」

路地裏の暗がりで、俺のつま先が重い金属のようなものに蹴躓いた。

見下ろすと、そこにはスクラップの山……いや、違う。

「なんだこれ……犬? いや、ライオンか?」

体長1メートルほどの、メカニカルな獅子だった。

本来なら黄金色に輝いていたであろう装甲は黒く焦げ付き、至る所からバチバチと火花とオイルを散らしている。

『……警告……メインコア、活動限界……エネルギ残量、0.02%……』

機械の獅子が、苦しそうに電子音を漏らした。

その青いセンサーアイは明滅を繰り返し、今にも完全にシャットダウンしそうだ。

「くそっ……俺がここで倒れたら……誰が、あのポンコツ共(魔将機)を食い止めるってんだ……!」

メカライオンが、人間の言葉で毒づいた。

普通なら「喋るロボット!?」と驚くところだろう。

だが、72時間不眠の特A級エンジニアの脳髄は、正常な判断力をとうに失っていた。

俺の目に映ったのは、未知のオーパーツでも恐ろしいモンスターでもない。

『たった一人で全てのバグ(敵)を背負い込み、過労死寸前で倒れている、哀れな同類(社畜)』だった。

「……おい、お前」

「あ……? なんだ、人間か。ここは危険だ、早く離れ……」

俺はフラフラと膝をつき、メカライオンの顔を覗き込んだ。

「お前、何時間残業した?」

「……は?」

「冷却ファンが悲鳴を上げてるぞ。エネルギーの循環システムもボロボロだ。仲間は定時で帰ったのに、お前だけサービス残業で戦ってたんだろ? わかるぞ……その駆動音は、72時間耐久デスマッチを強いられたシステムの泣き声だ」

「な、何を言ってるんだお前は……! そもそも俺の仲間パーツは定時退社どころか、ずっと前からシャバで遊び呆けて――」

「喋るな。これ以上エネルギーを消費したら、お前のコアが焼き切れる」

俺はパーカーのポケットから、最後の切り札を取り出した。

俺の脳髄を極限駆動させるための最終兵器。『最高級ベルギー産クーベルチュールチョコレート』と、『純度100%のブドウ糖ブロック』だ。

「いいから、これを食え。脳みそ(CPU)にガソリンをぶち込め」

「むぐっ!?」

俺はメカライオンの顎を無理やりこじ開け、チョコとブドウ糖を強制インストール(物理)した。

「なっ、なんだこの甘ったるい塊は……!? ふざけるな、俺のエネルギー変換炉は未知の鉱石や魔力しか受け付け――」

メカライオンが文句を言おうとした、次の瞬間。

『ピロリンッ!』

路地裏に、やけに軽快なシステム起動音が鳴り響いた。

「な……なんだこれ!? エネルギー変換率が異常な数値を叩き出している!? 凄まじい高純度のエネルギーだ……それに、なんだこの口の中に広がる至福の『甘み』とやらは……!!」

バチバチと漏れていた火花が瞬時に収まり、暗く沈んでいた青いセンサーアイが、車のヘッドライトのようにカッと強烈な光を放つ。

「ふはっ、ふはははは! 力が……最高のエネルギーが全身の回路に漲ってくるぜ!! おい人間、お前がこれをくれたのか!?」

「あぁ。で、お前、名前は?」

「俺は聖獣機神のメインコア、ガオンだ!! 恩に着るぜ、変な人間!」

ガオンが力強く立ち上がった直後。

ズシンッ、ズシンッ……! と、地響きと共に路地の奥から巨大な影が姿を現した。

ダンジョンから溢れ出した機械と魔の融合体――『魔将機』だ。

四脚のクモのような無骨なフォルムが、赤黒いセンサーで俺たちをロックオンする。

「チッ、また湧いて出やがったか! 下がってろ人間、今の俺ならあんなスクラップ――」

ガオンが前に出ようとしたのを、俺は手で制した。

「……なぁ、ガオンって言ったか」

「あ?」

「あいつの動き、なんかカクついてないか?」

俺の目には、迫り来る巨大なバケモノが、恐怖の対象には見えなかった。

(……前傾姿勢からの跳躍。だが、左後脚のダンパーに異常な負荷がかかっている。着地後の次弾装填プロセスに致命的なボトルネック……)

俺は、メガネのブリッジを中指で押し上げた。

72時間の残業明け。脳内を駆け巡る高純度のカフェインと糖分が、俺のAIエンジニアとしての思考を異常な領域ゾーンへと加速させていく。

「見過ごせないな。あんな『バグだらけのクソコード』が、俺の街を歩き回ってるなんて」

最強のメカライオンと、限界突破した特A級社畜。

これは、俺たちが東京のダンジョンを完全に『ホワイト化』するまでの、甘くて過酷な労働記録の始まりだった。

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