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Bloody Code  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第90話 おでこの刻印

 12月15日 10:35―― GGスタリオン


「むっちゃん、一緒に攻撃ってどういう意味?」


「ワタクシと天月あまつきさんと一緒って……」



 太地たいち月人つきとは黙って六太むったの話を聞くことにした。



成美なるみ、お前の弓術をさっき見てたけどよ、和弓わきゅうだよな。世界の三大強弓の一つだ。エンドサーフェイスが成美のBloody Codeをスキャンニングして、その弓と矢を作り出していわけだが、そこにはこれまでの弓道で培ってきた経験が反映されているわけだ。つまり、和弓だ』


 驚いた表情で六太むったを見つめる成美。このお馬鹿と思っていた黒ポメ、何でそんなに知識があるんだ……



『三大強弓とはいっても、和弓は120mから400m程度、イングランドロングボウの最長距離も大して変わらねぇ、トルコ弓で800mとも言われているが、その辺はまぁ、諸説ある。そうだろ?』


 ゆっくりと頷く成美。


『時間がないから簡単に言うぞ。弓の飛距離を飛躍的に伸ばす方法を今からオイラが成美に授けてやる。10kmくらいは射抜くことができるレベルだ』


「はぁ⁈ 10km! 無理ですわ!」


「成美先輩、むっちゃんの話を聞いてみましょう」


 太地が成美を落ち着かせる。月人も頷いている。



『まず、オイラが一時的に成美のスキルを数段高めてやる。そして成美はその的へ向かって明確なイメージを持って矢を射ればいいんだ』



「そんな遠いマトを明確にイメージするなんて……」


千鶴ちづるが目となるんだ。スキル【見透かされた世界】で遠方を正確に見通せる千鶴のスキルを活用するんだ』


「……私の見えているものをそのまま権田さんに見せるのね」


『そうだ。千鶴がやりたがっていたことだ。今はエンドサーフェイスのリンク共有から実現するのは難しいから、オイラが成美と同様に助けてやる』



 全員が六太むったの意図を理解した。問題はできるかどうかだ。


『成美は千鶴とオイラを信じて矢を放てば必ずできる。弓も矢も成美のBloody Codeとスキルで作り出したものだ。つまり強い気持ちで作り出した矢と適当に作った矢ではその能力に大きな差が出るんだ』



 六太むったは続ける。



『さっきの戦闘でわかったことだが、太地と成美の連携にはまだ精度が足りない。お互いの動きを理解できてねぇからだ。特に成美は容易に矢を射ることができねぇだろ』



「その通りですわ。太地さんに当たりそうで……」



『次の敵はもっと強い。だからもっと矢を射るチャンスは少なくなる。だったら距離が遠いところから魂込めた矢を放って、あのポンコツ二人をサポートしてやればいいんだ。 成美と千鶴の二人でな』



「……了解しましたわ!」


「むっちゃん、やってみるわ!」



 月人がニヤリと笑ってまとめる。



『よし! 話はまとまったな。戦闘時はそれで頼んだ! もうすぐ目的地に到着だよな。悪いけど千鶴、また索敵頑張ってくれ』



「うん。任せて!」



 千鶴が力強く返事を返した。 



 * * *

 12月15日 11:05―― GGスタリオン


 日光市上空に到着し、天月は索敵を開始する。世界遺産の日光東照宮を真上から眺められるという、普通に考えると貴重な状況だが、緊迫した状況で誰も意識すらしない。誰もが天月の一挙手一投足に注目している。



NFNF(エヌフ)を感じられない……)



 同時刻に高杉から連絡が入る。水戸の方でも反応はない。NFNF(エヌフ)のテロはこのエリアではないのか⁈



「次の場所へ移動しますわ! 宇都宮市へ行ってみますわ!」


 その後も、鹿沼かぬま、宇都宮、真岡もおかとまわってみたが、反応は無かった。時刻は既に11時半を過ぎていた。



「このまま北へ行ってみますわ!」


『千鶴、そろそろリポメタンMを飲め』


「うん、ありがとう」



 GGスタリオンが高根沢町とさくら市を通過し、更に北上していたその時!



《……くそ、なんで軽井沢で爆破しなかったんだ! 十番隊は一体何を……》



「っっ!!!!!」


 全員が天月の反応で理解する! NFNF(エヌフ)を見つけた。




《栃木県矢板市です! 矢板市にある栃木県庁塩谷庁舎が次のテロのターゲットです!

 小松部長、すぐに庁舎に連絡を! 時間がありません!》



《でかした天月!!!》



 時刻は11:45、爆破予告は12:14だ。 


「県の庁舎か……規模がでかい。全員が避難するには時間がギリギリ過ぎる」


 太地の不安をかき消すように天月が大声で話す。


「いや、大丈夫! 庁舎の中にいる職員の数がそこまで多くないわ!」



『まじか!』


 那須町役場の爆破テロ以降、この辺りの地方自治体は予告時刻のタイミングで職員をできるように出勤人数を調整してテロ対策をしていた。時刻を開示してた予告文が職員の避難を円滑に進める助けとなったのだ。



「これはいけますわ! 避難用にローダーを派遣する必要は?」


「大丈夫! 必要ないわ!」



『千鶴、NFNF(エヌフ)の位置はどこだ⁈』



「庁舎西側を流れる川の川辺に潜んでいます……約100人赤色の能面をつけています。我々の存在に気づいたようです」



 川辺から出てきたNFNF(エヌフ)のローダーは庁舎の方向へ進み始めた。太地たちから庁舎まではまだ距離がある。



『成美! ここから攻撃するぞ。千鶴は成美の背中に触れるんだ!』



 六太むったはそう言って、成美と千鶴の額に触れながら何かを施す。


『よし! 二人とも集中してスキル発動だ!』


「「 はい!」」


 すると二人の額から白い光が! 前足の肉球マークが額に刻印されて光っている。



「えっ! こ、これは何の罰ゲームですわ!」


「むっちゃんの温もりを感じるわ……」



 腹を抱えて笑う太地。キレる成美と喜ぶ天月。



『おい! おもしれーけど今は真面目にやれ! ポメ公!』


『馬鹿野郎! オイラは至極大真面目だ! 千鶴、今だ。見透かされた世界で赤鬼部隊にフォーカスしろ! 成美の背中に触れているその左手は絶対に離すなよ!』


「はい!」


 そして六太が千鶴の左手と成美の背中に触れて集中する。



『構えろ! そしてオイラ達を信じて矢を放て!』



「……見える! はっきりと敵の姿が……」


 距離にしてまだ2キロはあるはずだが、成美には的が見えている。そして不思議と『できるはず』と強く感じた。 



 ググググ……ヒュッ!


 放たれた矢は瞬く間に先頭を走っていたNFNFローダーに突き刺さった。


「当たりましたわ! 届きましたわ!」


「やった……すごいわ」


『喜んでいる場合じゃねぇぞ! 成美、次だ! どんどん矢を放て! 千鶴は先頭のローダーをフォーカスし続けろ』


「「はい!」」



 太地たちには見えないが、一人、また一人とNFNF(エヌフ)を撃破していく。 当然NFNFには動揺がみられ、庁舎へ向かう足が遅くなる。



『よし、太地。俺たちはこの辺りから出陣だ』


「了解!」



「むっちゃん、成美先輩と天月さんをよろしくね!」


『おう! 任せとけ!』




 二人はGGスタリオン後方のテイルカーゴランプから躊躇ちゅうちょなく一気に飛び降りた。よくあるアクション映画のワンシーンのように。


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