第89話 その先の展開
12月15日 9:25―― 軽井沢町役場
町役場の駐車場中央へ降り立った太地たち。
まず北西侵入経路に太地が向かい、南西侵入経路に月人が向った。その間で少し下がって両方の状況が見渡せる配置についた成美と六太。
その後、直ぐさま敵が襲いかかって来た。
太地がライフルを打ち込むが、一人は食らって吹っ飛んだものの、一人はひらりとかわして前進してくる。
「マジでこれまでとレベルが違うぞ……これが赤い能面か」
太地の攻撃をかわしてそのまま回り込んで進もうとした【増女】ローダーの額に矢が突き刺さる。
成美の弓術だ。とんでもないスピードで太地もびっくりして後ろを振り返る。
そこにはロードして全身をモダンで格好いい弓道着姿になった成美が大きな弓を構えて立っていた。
「すげ〜! ホントにカッコイイなぁ……イイなぁ〜」
「そんなことは後でいいから早く敵を殲滅するのですわ!」
キレる成美に慌てて目の前の敵に攻撃する太地。
一方、月人の方は次々と襲いかかってくる【増女】ローダーを瞬殺していた。そして、最後に【泥眼】がゆっくりと現れる。
「我が名は赤鬼十番隊副隊長の加納鷲雄だ! 貴様らGSDを抹殺する」
『名乗るほどでもねぇから早くかかって来い』
副隊長加納が猛烈なダッシュで月人に詰め寄り、手刀を突き刺そうとするが、何度やっても刺さらない。月人は全て交わして倒れ込んだ姿勢を利用してそのまま側頭部に右ハイキックを食らわせる。
ぐらつく加納にさらに一回転して右ハイキックを同じく側頭部に蹴り込む。
「ガハァ! 我が防御スキルが全く効かない……なんて重い蹴りだ……」
《月人! そいつ自爆する気よ!》
『ちっ! 仕方ねぇ』
月人が右アッパーから浮いた加納の身体を渾身のかかと落としで地面に叩きつける。
《千鶴、こいつから他のテロの場所が見えてこないか?》
《……何も見えないわ》
能面エンドサーフェイスが割れて血だらけの加納に月人が迫る。
『おい、お前たちの狙いはなんだ⁈ 次はどこでテロが起こるか答えろ!』
「……死んでも答えるか……地獄に……落ち……ろ……」
笑ったまま死んだ副隊長加納に苛立つ月人。
《ダメだわ。 他のローダーからも特に情報は入ってこないわ。知っているのはその加納だけだったかも》
『わかった。とりあえず、太地のサポートに行く! こっちに5名程度、ということは太地の方に25人の赤鬼ローダーが……』
しかし、月人の目に映った光景は意外なものだった。苦戦しているかと思われたが太地と成美は割と善戦していた。太地の攻撃を大きく交わした赤【増女】を成美が逃さずに撃ち抜く。太地の攻撃を喰らったものは一撃で倒れている。残りは5名程度だ。
『悪くない。だが、太地に攻めてくる敵に対してはお嬢が弓を放てないでいるな……これは太地もスピード上げて動いているから弓が当たりそうということか』
この時、月人が思った事と同じことを千鶴も感じていた。
(私が二人の視界を共有できればもっと二人はスムーズに動けるはず。攻撃と防御がもっと一体的になるはず……)
千鶴の現状のスキルではその領域に達していない。もどかしさを感じる。月人はサポートには入らず、二人の動きを観察している。
(よし。あれをやってみるか……)
太地はバックステップして一瞬距離をとる。
「possession both arms」
《権田さん! 弓を放たないで》
《天月さん⁈ 了解ですわ》
一気に太地に襲い掛かるローダーたち。太地はしっかり腰を落として敵を引きつけた後、両腕の高速連打で敵を吹っ飛ばす。そして一部致命傷を外したローダーの心臓を成美が射抜く。
赤鬼十番隊全てのローダーを倒した。成美はまだ警戒を解いていない。
そして月人が二人のもとへ。
『お疲れさん。終わったぜ』
12月15日 10:05――
「なんとか全ての爆弾の処理を完了したのですわ!」
千鶴のスキルのフォローもあり、迅速に爆弾を発見し、処理することに成功した。権田支部全てのローダーが死傷者を出すことなく、無事にGGスタリオンへ帰還する。そして軽井沢町役場の上空にて10:11に爆発しないことを確認し、高杉たちがいる小山市へと向かった。
《こちら、権田ですわ。小松部長、今からワタクシ達は小山市へ向かって高杉さん達と合流しますわ。到着予定時刻は11時ですわ》
《御令嬢、そして天月達もよくやってくれた! この勝利はでかいぞ。この勢いで次の標的も何とか爆発を阻止するぞ。高杉、小山市からの索敵状況はどんな感じだ?》
《トンボに昨日から調べてもらってますが、特に動きがないですね。半径30キロくらいは索敵できているはずですが、反応がありません》
《くそ! 思いっきりスカしたのか……それとも潜んでいるのか……》
《小松部長、提案があるんですが》
高杉に何か考えがあるようだ。太地たちシーカー全員が聞いている。
《我々はここから茨城県の笠間、水戸エリアへ移動して索敵、御令嬢チームに日光や宇都宮の北側あたりを索敵してもらうのはどうでしょう? 時間もありませんし、ここ小山市でNFNFの痕跡が見つからない今、合流よりも別エリアの索敵を優先させた方がいいと思います》
《お前、冷静だな……よし! 御令嬢、今の高杉の作戦を聞いたよな? それで進めるぞ! 宇都宮より北側のエリアへ向かって索敵を開始してくれ!》
《了解ですわ!》
探索課がテロを阻止すべく、再び動き出した。GGスタリオンで移動中、月人を中心に次の動きを大まかに確認することにした。
『まず、11時に到着後は昨日や今朝のように千鶴のスキルに頼って索敵だな? 千鶴は特に問題なさそうか?』
「えぇ、むっちゃんの回復薬のおかげで問題ないわ。すでに6本消費したけど」
ドヤ顔の六太を無視して話を進める月人。
『そんじゃあ、次の展開の可能性だが、爆弾処理にかかる時間は早くて30分くらいか? お嬢』
「そうですわね。 建物の広さにもよりますわ」
「だとしたら、今回は爆発を阻止するよりも役所にいる人達の避難を優先するべきだと思う。流石に爆弾処理は間に合わないでしょ」
太地の意見に全員同意する。11時に現地について索敵を開始して、運良く見つかったとしても、30分以上は時間を要するだろう。むしろ避難ができるかも微妙なタイミングだ。
『うまくいくという前提だが、お嬢の臨時部隊は一般人の避難に、俺たちシーカーは赤鬼部隊討伐という流れになりそうだな』
「そうですわね。月人さんに同意しますわ」
他のメンバーも頷く。
戦いに関して話を進めようとしたときに、六太が千鶴とお嬢の間に立って一言指示を出した。
『成美も千鶴も次はGGスタリオンから降りずに、一緒に攻撃してみろ』
「「……え⁈」」




