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Bloody Code  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第88話 天月千鶴の底力

 12月14日 21:00――


 14時頃太地(たいち)たちは群馬県高崎市に到着し、天月千鶴あまつきちづるによるGGスタリオンからの索敵が開始された。高崎市、藤岡市、伊勢崎市、安中あんなか市、渋川市などの地方自治体の上空を飛び、長野県の軽井沢町、安曇野市あづみのし佐久市さくし東御市とうみしなど、さらには栃木県の方まで探りを入れてみたが、NFNF(エヌフ)ローダーの何かを天月が感じ取ることはなかった。



「天月さん、一旦捜索をやめて休憩を取りましょう。むっちゃんの回復薬を飲んで仮眠を。明日の朝一からまた同じエリアをまわってみましょう」



『そうだぜ千鶴! 焦ってもダメだしな。今は休もうぜ』



「そうね。ちょっと休むわ」


 太地と六太むったの意見を素直に受け入れて、別室で仮眠をとる天月。



「やはりそう簡単には見つからないのですわ」


『そもそも、このエリアが爆破のターゲットじゃないってこともありえるしな』



「そうだね。天月さんが自分に責任を感じていなければいいんだけどね。ちょっと疲弊してたね」



『リポメタンMを飲んだらスキル使用による疲労は無くなるから大丈夫だ。千鶴は強いやつだ。心も問題ねぇって!』



 六太むったは千鶴のメンタルを心配していない。いつもそばにいる六太がそう言うのだから間違いないのだろうが。



 不安が残ってしまうが明日に向けて太地たちも休息をとることにした。



 * * *


 12月15日 8:30―― 群馬県上空 GGスタリオン


 天月は昨日同様に索敵を続けている。早朝5時から行なっているが、やはり栃木県南部と群馬県内の市町村からはNFNFの反応が見えてこない。


「現在群馬県高崎市の上空ですわ。今から長野県へ向かってみますわ」


「「了解」」



「……」


 無言で焦りを感じていそうな千鶴に六太がペタペタと歩み寄る。


『千鶴。見つからずに焦ったら、余計に見えなくなるかもしれね〜ぞ』


「……むっちゃん」


『むしろ余裕を持とうぜ。なんせ焦っているのは上空を飛んでいる俺たちの存在を認識しているNFNF(エヌフ)側に決まってんだから。大船に乗った気分で大丈夫だ! まぁ、今は空飛んでるから船じゃねぇけど』


 月人つきとと太地が頷いている。成美なるみが笑顔で見守っている。そう感じた瞬間、天月の心にゆとりが生まれる。


 そして、実際に六太の言っていることは正しかった。


 長野県に潜伏していたNFNF(エヌフ)の部隊が再びGGスタリオンを目撃する。そして抑えていた感情がついに溢れてしまう。


《おい、GSD(ジスド)と政府の奴らか? あの軍事ヘリ、また来たぞ!》



 ハッとする天月のリアクションを見逃さない太地たち。


 そしてモニターに表示されたマップのとある地点を指差して天月が叫ぶ。



「ここからNFNF(エヌフ)の声が聞こえました! この感情の強さ、間違いなくNFNF(エヌフ)です!」



 天月が指差した先の場所、そこは軽井沢だった。

 時刻は9時05分、爆破まではまだ時間は残されている。成美はすぐにGSD(ジスド)の小松部長へ報告し、天月は回復薬を飲んで再び軽井沢に集中してより多くの情報を読み取ろうと試みる。そして太地と月人はすでに戦闘態勢に入っていた。


「爆弾は軽井沢町役場に数カ所仕掛けられていると思われます! 敵は……赤い能面を……全員赤鬼(あかおに)です! 」



「軽井沢町役場上空まであと5分ですわ。今、小松部長より町役場の方へ連絡がいっているのでワタクシたちが到着するまでに避難は完了しているはずですわ!

 権田支部臨時ローダーは全員役場上空に到着後、爆弾処理に取り掛かるのですわ!」


「「「了解ラジャー!」」」



 成美の指示に30名の臨時ローダーが頼もしい返答をする。もともとそういったところから権田財閥に来た人間だ。爆弾処理は慣れたものだろう。



NFNF(エヌフ)は長倉公園にいます。人数は二十人程度です。長倉神社の南側に整列しています。すでにこのヘリのことには気づいています。」


『よし! よくやったぞ、千鶴! さすがオイラが見込んだだけのことはあるな。あとは爆弾探しを手伝ってやれ! 戦闘はあのお馬鹿二人に任せとけ』



『誰がお馬鹿二人だ! このバカラニアンが! だが、今回はお前少し役に立ったぞ! ナイスだ!』


「うん、むっちゃんナイスだよ!」


「天月さんはこのままGGスタリオンに残って何かあれば指示を出してください。六太の言う通り、戦闘は僕と月人で――」


「ワタクシも行きますわ!」



 成美の強い意思を感じた太地は月人の顔をみる。月人は頷いている。



「わかりました。じゃぁ、成美先輩はむっちゃんを連れて月人の指示で動いてください。絶対に無理なことはしないと約束してくださいね」


「もちろんですわ! 六太むったさんよろしくですわ!」


『おう! 成美は俺が守ってやるから安心しろ!』




 GGスタリオンが町役場上空に到着し、臨時ローダー三十人が次々と降りていく。


「赤鬼が動き出しました! 役場の方へ向かって来ます!」


 天月が赤鬼の動きを伝える。


「一人だけ、能面が【泥眼でいがん】です。あとは【増女ぞうおんな】です。おそらくリーダー格は一人だけかと思われます」



『てことは、赤鬼十番隊だけってことか? 仕掛けた爆弾を爆破予告の時間まで守りきるつもりだな。じゃあ、俺たちは爆弾処理のローダーを赤鬼から守るぞ!』



「「了解!」」



『それから……太地とお嬢。今回は迷わず相手を殺せよ。敵は強い。そこで日和ひよったらお前らが殺されるからな』


 月人の言葉の意味は十分にわかっている。太地と成美が頷く。



「月人、安心して。僕に迷いはないよ。今回からは急所を狙う」


「ワタクシもGSD(ジスド)に入った時から覚悟はしていましたわ」


 ニヤッと笑う月人。


「町役場の北西二箇所から敵が駐車場に侵入しました! みなさん、急いでください!」



『よし! じゃぁ行くぞ!』



(今度こそ、爆発も死傷者も全て防いでみせる!)





 そしてシーカー三人と黒ポメ一匹は一斉に飛び降りた。 


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