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Bloody Code  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第72話 オイラの目薬

 12月2日 9:00―― GSD権田支部


 リモート会議で7日に起こるテロの場所に関する太地たいちの考えを小松部長とシーカーたちに話す。それを隣で聞いている天月千鶴あまつきちづるとそわそわしている権田成美ごんだなるみ


「よし! とりあえず太地、報告ご苦労! いや〜参ったな。全然絞り切れねぇって感じだな」


「しかし、現状これをベースに各隊をどう配置するか検討するべきですかね?」


 高杉が小松部長に確認する。


「そうだな。それしか方法がなさそうだ。時間が足りねぇ……」



 地図を見ながら小松部長が話を続ける。


「現状ではテロが起こる前の動きを察知できるかどうかがテロを阻止する大きなポイントになりそうだ。成功する可能性は極めて低いがな。そして我々探索課ではこの能力に長けているのは天月とトンボの二人しかいねぇ。

 ちなみに、お前ら二人は限界でどれくらい遠くの距離の対象を把握することができるんだ? 何回も聞いてる様で悪いが、もう一回教えてくれるか?」


 沢田トンボが反応する。


「俺の【the whisper of insects 友の囁き】はざっくりっスけど範囲でいうと、半径60~70キロくらいだと思うっス。ただ、千鶴さんのようにはっきりと情報を得られる訳ではなくて、虫くん達が教えてくれることを伝えるって感じっす。例えば誰かが怪しそうとか、そういうのを判断するのは無理っスね」



 天月も話し始める。サングラスをかけているのでどこを見ているかわからない。



「私の「見透かされた世界」は広域を満遍まんべんなく見るとなると、5キロくらいが限界かと思います。目的地がわかっていて「みる」となったら、50キロくらい先も見えるかも……その時の体調や状況次第です」



 小松部長が頷く。そして高杉のほうを向いて確認する。


「赤青ジェット高杉号は飛行距離に関係なくずっと飛べるよな? 制限はあるか?」


「いや、なんですかそのダサい名前! ていうか赤青ってやめてください。

 乗り物は半日程度なら持続して飛べます。ただ、その後の戦闘での貢献度は下がるかもですが」


「わかった。まぁそれは仕方ねぇわな……権田御令嬢、ローダー50名の訓練の状況ってどんな感じだ? 昨日の話だから進んでねぇだろうが、見通しはたったか?」



「高校生から引き抜く予定の候補者が20人ほどリストに入れましたわ。後、今回のテロ対策として臨時ですが、我が財閥のSPから10名ほどいい人材が見つかりましたわ。即戦力として7日に対応できるように調整中ですわ。主に前線の戦闘もしくは護衛といった戦力ですわ。元々目標としている救援の経験はありませんので、特別措置という形ですわね。

 という状況から、今回の索敵さくてき能力という点ではお役にたてそうにないのですわ……」


「よ〜し、それで十分だ!」



 そう言って、部長が各シーカーに指示を出す。


宝生ほうしょうと高杉はこの会議内容をまとめて、不破ふわ総司令に提出しろ。そしてGSD(ジスド)本部と政府および公安や自衛隊を含めた全体会議にお前らも参加しろ。おそらく共同防衛体制をとることになるから俺と一緒に探索課の理想の配置を模索するぞ。

 トンボと天月はこちらから指示が出るまで各自待機だ6日あたりから、おそらくお前ら2人には広域探索が始まる。相当やばいから5日はしっかり心身を休めておくように!」



「「了解!」」



片瀬かたせは戦闘に集中だ。次の敵が前回の白般若(はんにゃ)よりも強いと考えるべきだからその辺、お前を頼りにしているからな。テロを未然に防ごうが、やられた後だろうが、全員ぶった斬れるように鍛錬を積んでおけ!」



「了解です!」



「ご令嬢は継続してローダー育成だ。できれば臨時で今回の任務に参加できる人材を増やせるように知恵を絞ってみてくれ。目標は30人だ。戦闘系で構わない。それから高校生ローダーの中に探索能力がある奴がもしいたら、すぐに俺に報告してくれ!」



「了解ですわ!」



「太地と月人は自由に動いてくれて構わん。こちらの会議結果を受けて一応配置場所とか通達があると思うが、まぁ、お前ら二人の判断で自由にやってくれ。ここ数日は引き続き場所特定の有力な手掛かりを掴んでくれると嬉しいがな」


「了解です!」


『任せとけ!』


 六太むった犬小屋エンドサーフェイスから飛び出してきた。


『ヒゲ部長! オイラは何をすればいい⁈』



「よ〜し! 重要指令だ。六太むったは他のシーカーの邪魔をするな!」


『任せとけ!』



「「「 …… 」」」


「それでは解散!」



 * * *



 会議が終わり、権田成美は天月千鶴に恐る恐る話しかけてみる。


「あ、天月千鶴さん、お部屋でもサングラスをつけたままですわ」


「はい……気になりますか?」


「……気になるから聞いたのですわ」


 権田支部の司令室に重い空気がただよう。


「あの! 天月さんは、スキルのせいで『見えすぎて』しまって大変だそうですよ」


「なるほど……ですわ」


 シーンとなった空間……


『千鶴〜! 目ん玉大丈夫か? オイラが調合したポ薬いるか? これはな、スキル使いすぎの疲れポによく効くんだぜ』


「むっちゃん……可愛い! ありがとう!」


 六太むったを抱きしめる天月、場が一気になごむ。


(ポ薬はおいとくとして、六太むったやるじゃん)


 そして、まさかの展開で、天月がサングラスを外して六太むったのポ薬の蓋を開けて点眼てんがんしようとする。


「「「えぇ! やばいって!」」」


 天月はなんの躊躇ちゅうちょもなく使用した。


「あぁ〜! ダメですって!」


 うつむいて目を開こうとしない。


『おい! バカラニアン! テメェまじで何やってんだ!』


 月人つきと六太むったの腹をつかんで持ち上げる。


『なにすんだ三日月マン! 離せよ! オイラの大事なギャランドゥーが抜けちまうだろ!』


「早く目を洗い流すのですわ!」


 怪しい液体を目に入れてしまったとパニックになる太地たち。すぐさま洗い流す水を持ってきた成美。



「……だ、大丈夫……いや……むしろ心地良くなったわ」



「「「 ……はい? 」」」



 ニヤリと笑う六太むっただった。


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