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Bloody Code〜忽然と歴史から姿を消した伝説の一族が現代日本で無双する〜  作者: 大森六
第三章 関東大一揆、洛外編

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第71話 月人の左手

 太地《たいち》はもう一度犯行声明文を見返す。


【これより我々NFNF(エヌフ)は関東大一揆を一歩洛中(らくちゅう)へ進撃する】



「これより……か。

 つまり今はまだ洛外《らくがい》にいるんだよ。関東圏自体が洛中なんじゃないか?」


『う〜ん、それはどうだろうなぁ。あいつらの言う【洛中】がどこかは別として、東京に向かって来るっていう読みは正しいかもしれないな。正直、それも俺にはまだ判断しかねるって感じだが……』


 太地も正直自信を持てない。月人《つきと》の表情を見て余計にそう考えてしまう。


「次のタイミングで東京にはまだ攻めて来ないと思うんだ。『洛中へ(・)』って言葉。

 洛中に向けて一歩前進するぞっていう宣言に受け止められるよね?」


『日本語表現の曖昧《あいまい》さが悩ましいな……太地の考えが概《おおむ》ね正しいと思うぜ。

 ただ、東京に1回目の攻撃をするぞって意味にも取れなくもないが。セカンドブレインの判断では太地の認識が80%の可能性で正しいと判断しているぞ」


「うん、ヤ(・)マ(・)を張るには十分な割合だ。【関東大一揆】と大きく扱って、東北地方からテロが始まっている状況だ。その後の第一歩前進的な表現でいきなり東京を三箇所攻撃っていうのもちょっと違うし。おそらく東京や周辺の発展している都市は今回のテロの標的から除外していいと思う」


 月人も同意し、二人はGSD(ジスド)権田支部へ行って小松部長に報告する事に。そして太地は次の話題へと移る。


「月人、この前シンクロ率上がったよね? それでスキルが身についたって……」


『あぁ、【フリーハンド】だな。俺の左(・)手(・)のことだ』


 肩から全てが無くなっている左腕の方を指差しながら月人が説明する。


「じゃあ、どうして今、左手がまだ見えないの? 僕のステータスが低いから?」


『見(・)え(・)な(・)い(・)からという理由はちょっと違うな……太地のステータスではまだ扱(・)え(・)な(・)い(・)から出現しないって感じだな』


「このフリーハンドってどんなことができるの?」


『それは……その時の太地自身のステータス次第だな。読んで字の如《ごと》く、まさに自由に使える手って感じだわ』



 月人が言うには太地のステータスではスキル【フリーハンド】は使用できない。しかしシンクロ率が30%、を超えて使用する条件はクリアしたから解放されたということらしい。

 RPGゲームによくある、魔法は習得したが使用するにはMP(マジックポイント)があまりに足りないから使えないと同義だとも話す。


「ステータスオープン」


 ウィンドウが数枚出てくる。太地は改めて現在の自分のステータスを確認してみる事にした。


【動 action】力10、敏40、回復30、気力20、体力30、伝40


【察 sense】視32、聴25、触15、知60、嗅10、味8


【心 mental】喜悦30、怒気10、無心51、精進72、悟80、感性65


「これ、自分で言うのもなんだけど、すごくない? 一ヶ月前と比べてものすごく数値が上がっていると思うんだけど」


『そりゃそうだな。最高のコーチが指導しているからな』


 ちょっと悔《くや》しい太地。だがその通りだ。


『まぁ、普通の人間でここまでのレベルに達するのは絶対に無理だ。それは誇っていいぞ。これを見て思うのは、太地は怒りから力を発揮するのが苦手だな』


「怒気が低すぎるってこと? 自分自身でもあまり怒ることがないなとは思うけどね」


『まぁ、いい悪いじゃねぇから気にしなくていい。しかし、【心】の他の

 数値が異常に上がったよな。これはひょっとして……いや、まだいいか』


「気になるところで止めるなよ〜」


『精進と悟と感性が異常に高いって思っただけだから気にするな。良いことだ。

 ちなみに力と気力が数値低過ぎだわ。これじゃぁ、引き続きスピードとタイミングでクリティカルを狙うような戦いしかできねーな』


「……明日からより一層トレーニング頑張ります」


 悔しいが、月人の言うことはいつも正しい。本当に優秀な相棒だ。そして、横で六太《むった》がものすごいイビキをかいて寝ている。小さい体にしては音がデカすぎてドン引きする太地たち。


「そういえばさ、六太《むった》とのシンクロ率はどうして表示されないんだろう?」


『それはお前の父さんがつくったエンドサーフェイスの違いだろうな。そもそも他のシーカーたちもシンクロ率って概念は無いはずだぜ。おそらくだが、別の要素で成長するのか……もしくはこの初期スペックの状態がすでに完成体。つまりこれ以上の変化がないとか……』


「これ以上の変化がない……」


 イビキをかいて気持ちよくて寝ている六太《むった》を見て、いたたまれない気持ちになる太地と月人。


『俺たちはこいつを生み出してよかったんだろうか……』


「そんなことボソっていうなよ。何か意味があるんだって。きっと……

 うん、そうに決まってる……多分ね……」


『ププッ。お前自信なさそうだな。不安が顔に出てるぞ。

 まぁ、ペットってことでいいんじゃねーか。きっと何かの役にたつ時が来るって!』


「うん、そうだね!」


『とりあえず、明日からいつも通りトレーニングしてステータスアップだ。早く俺の左手を返してくれよ! 期待してるぜ!』


「了解! 任せといて!」



 こうして、長い一日が終わった。



 * * *



 朝、テレビをつけて報道番組を観ながら食事を摂《と》る太地と月人、そして六太《むった》。

 やはりどの番組もNFNF(エヌフ)の犯行予告のことしか放送していない。本当に12月7日にテロは起こるのか? どこで起こるのか? そういった話題でもちきりだ。


 早紀子《さきこ》特製グラノーラを食べながら、テレビを何となく観ている。


『おい、太地〜。そんなしょうもない番組ばっかり観てないで、目覚まし過ぎテレビの「今日のワン公」観せてくれよ! オイラの朝の楽しみなんだ! いいだろ〜?』


「はい。どうぞ。好きな番組観なよ」


 リモコンを渡すと嬉しそうに二本脚で立ってリモコンを受け取り、器用に扱う六太《むった》。


『お前の肉球ってどうなってんだ? なんで片手で操作できてんだよ』


『それを言うならオメーも片腕しかねーだろ』


『いやそういう問題じゃねーだろ』


『あ、そうそう、「片手」じゃなくて「片脚」な。オイラは手(・)が無いから』


 ケタケタ笑う六太《むった》にイラつく月人。それを見て笑う太地はもはや定番となっていた。



 そんな日常の何気ない平穏なひととき。


 それが5日後に突如崩れ去り、恐怖のどん底に叩きつけられることを、この時まだ誰も想像できずにいた。


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