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Bloody Code  作者: 大森六
第二章 東京都区別対抗学戦祭編

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第20話 メンバー編成臨時試験03

あれから二時間ほど経過し、試験が終わった。太地たいちは別の教室でクルミと休憩している。

一方、採点側の第一高の先輩四人は絶望と恐怖を感じていた。



「な、なんだと……」


鏡慎二かがみしんじが震えている。メガネが落ちそうだ。



「……受けた()()()全て100点だ」


「……ウソでしょ? 脇汗かいちゃったわ……こわ!」


ビビる東雲しののめ


「一つの教科で満点取るのも大変だ。普通は……」


流石に落ち込む葛城かつらぎ


「驚くべきことに……六条太地ろくじょうたいちが一教科にかけた時間は、たった『30分』ですわ」


「あいつ……神様か何かの生まれ変わりか?」


「今ならどんな怪奇現象でも信じられるわ。六ちゃんならできるって」


「あぁ、わかる。『なぜなら六条太地だから』って答えれば、それで正解だ」


「そのうち……空も飛べそうだな。六条君……」



元気が無くなった第一高メンバー。



「お嬢、一つだけ聞かせて欲しいんだが……」


「何ですわ?」


「……なんで連れてきちゃったの? 六条君を」


「……多少は……後悔しているのですわ」



もはや感情を包み隠す必要が無くなった四人。


圧倒的な力の差を見せつけられた秀才たちが初めてぶつかった壁が六条太地だった。彼の前では探り合いや駆引きといった面倒なやりとりは必要ない。 実力が天と地くらいに差があるからだ。 



「俺たち……パンドラの箱を開けちまったのかな……」


葛城聖司がポツリと言葉を発する。その目はどこか遠くを見ている。



「この絶望、乗り越えられるのかな? 私、第一高のプライドそこまで高くないけど、流石にこれはキツイわ〜。 六ちゃんみたいな子を本当の天才っていうんやろうなぁ」



「いや、もう六条のことは規格外ということで、別カテゴリーに分けたほうがいいぞ。そうしないと……青一高が崩壊する」


鏡慎二の言うことは大げさではない。



青三高二年が青一高三年に完封勝利したという、この衝撃的な事実は青川区の特別区立高校内の序列が揺らぐほどの事件であった。



「みなさん、今日はもう解散して帰宅してゆっくり寝るのですわ。

あとはワタクシが進めておくので大丈夫ですわ!」


権田成美の提案に頷く三人。



「お嬢は強いな。さすが青一高のエースだ。お言葉に甘えて俺、今日は帰るわ。 みんなお疲れ」


「ウチらも帰ろうか」


「そうだな」



葛城と東雲と鏡の三人は下校した。



「葛城さん、ワタクシは強くはありませんわ。多少皆さんより早めに衝撃を受けてある程度慣れているだけですわ。ただ……」



間を空けて権田成美が言う。



「六条太地が色祭りに参加すればきっと同じ現象が起こりますわ。その時に優位なのは一度経験しているワタクシたち青一高ですわ!」



「『井の中の高校生、()()を知らず』この衝撃こそ、青一高が持つ最強の武器なのですわ」



握った右手こぶしを見つめながら、強い気持ちでそう自分に言い聞かす。明日同じことをメンバーに伝えよう、きっとやる気が戻ってくるから。と半分開き直る権田成美であった。



* * *



「太地さん、お疲れ様ですわ」


権田が太地たちと合流する。


「成美お姉様、結果はどうなったのですわ?」


「……」


若干じゃっかん緊張気味の太地。


(手応えはいつも通りだった。大丈夫なはず)


『問題ね〜よ。あいつらのプライドが粉々になった事以外はな』


「え?」


的確な月人の推察を太地はまだ理解していない。本当の天才はこのあたりうといのかもしれない。


「もちろん試験は合格ですわ」


「よし!」


「やったですわ!」


太地とクルミが喜ぶ。



「六条太地さん、今日は本当にありがとうございましたわ。第一高を代表して正式にチームの一員になってくれたことを、心から感謝しますわ」


ペコリと頭を下げる権田成美。


「あ、いえ、そんな……こちらこそありがとうございました。」


「ですわ」


ペコリと頭を下げる太地とクルミ。



「今後のことは後日連絡しますわ。 ご自宅までお送りしますわ」




* * *



今晩の夕食は早紀子特製のスパイスカレーだ。直径40センチくらいのプレート皿に中辛のバターチキンとエビがメインの辛口シーフードの二色カレー。とても家庭で食べる料理とは思えない腕前だ。


「「「 いただきます! 」」」


『うめ〜!やばすぎ!』



「美味い! また傑作を作ってしまったわ〜」


プシュ〜とハイボールの缶をあけながら早紀子が満足げに言う。すごいペースで減っているとはいえ、まだまだ在庫はたくさん残っている。最近ハイボールのダンボール箱が積んである光景を見ながらハイボールを飲むのが早紀子の心の安らぎとなっている。


「まだまだこんなに残ってる……幸せでしかないわ……」


スパイスカレーとの相性も良いせいか、2缶目に手を伸ばす早紀子。


「太地、あんたなんでご令嬢に車で送ってもらってんの? 付き合ってるの?」



「違うよ。今日用事があって第一高に行ってたんだよ」


「デート?」


「いや、違うって。妹にはめちゃくちゃ好かれてるけど」


「ふぅ〜ん」


ニヤつく母親、ウザがる息子。


「なんか最近よく会ってるみたいじゃん。家まで行ってるんでしょ。財閥の娘と付き合うとか逆玉過ぎてやばいね〜!」


「いやいや、想像つかんわ。あんなでかい家で暮らすとか、落ち着かない。

それに六条って名前結構気に入っているしね〜」


あまり考えずに口に出す太地。


「結婚前提かよ〜」


「それはない」


「でっかい家ってどんな部屋があるの?」


「……司令室」


「ハハハ! ウケるわ〜」


『付き合っちまえよ』


いじる月人。



カレーが美味い。今日は特にそう感じる。



「……11月11日、母さん予定開けておいて」


太地がボソッと伝える。



「何?学芸会?」


「う〜ん、まぁ似たようなものかな。正式に決まったらまた教えるよ」


「おっけ〜空けておくね!」



プシュ!


3缶目が空けられた。


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