第19話 メンバー編成臨時試験02
唯一状況を理解しているクルミが駆け寄って太地に飛びつく。
「太地〜すごいのですわ! さすがワタクシのヒーローなのですわ!」
左腕でクルミを抱きかかえながら、権田成美へ歩み寄る太地。
「え〜っと、これでとりあえず、格闘競技のほうは合格ってことでいいでしょうか?」
「……え? あ! はい!」
口を開けて唖然としていた成美。徐々に現実に意識が戻ってくる。
「あの……とりあえず、吉田さんを病院へ……」
太地が心配する。
『死んでねーよ。ちゃんと抑えて打ったから大丈夫だ』
月人は言う。
(あれで抑えられているのか……本番気をつけないとな……)
「爺や!」
「かしこまりました、お嬢様」
テキパキした動きで執事が吉田を連れていく。運ばれている間も、吉田は目を覚まさなかった。
「あれなんだったんだ……」
「彼がやったの?」
「演技であんなに吹っ飛ぶか? 壁が割れてんぞ」
「誰なのあの子……」
今度は違う意味で騒つく館内。
察した権田成美が釘を刺す。
「みなさん!今目にした光景の動画や画像および関連する情報の公開は禁止するのですわ。個人のSNSやブログ、身内や友人、知人での会話なども含め一切認められませんわ。
色祭り優勝のための情報規制です。ちなみに本日館内にいるみなさんのことは全て権田財閥が設置した監視カメラで完璧に写してありますので、万が一、どなたかが漏らしたとなった時は……お分かりですわよね?」
館内全員が成美の意図を察する。
『あの屈託のない笑顔がホラー以上に怖すぎるぜ』
褒める月人。
「それではギャラリーの皆様!本日のイベントはこれで終了ですわ!」
メンバーと関係者数名を残して、他を帰らせた権田成美。
メンバーが太地に群がる。
「六ちゃんすごいじゃ〜ん。あれ何? マジック? やばすぎでしょ」
「俺、ちょっと感動しちゃったよ。こんな意味不明な超人がいたんだなって」
「葛城、超人はちょっとかわいそうだぞ。せめてここでは人間でいさせてやれ」
東雲あかり、葛城聖司、鏡慎二が興奮している。
どうやら太地を認めたようだ。
「よいしょっと」
クルミを下ろして輪に加わる太地。
「鏡慎二だ。 よろしくな、六条!」
「鏡先輩、よろしくお願いします!」
「六条太地さん、あちらに休憩室がありますわ。お手洗いとかよろしければどうぞ」
「ではお言葉に甘えて、ちょっと休憩してきます」
「クルミ。案内して差し上げて」
「了解なのですわ〜」
太地とクルミが休憩室へ向かう。そして集まる青一高メンバー。
「如何ですわ? 六条太地は」
「お嬢とんでもね〜奴連れてきたな。 ありゃ規格外だ。というかあれどうやったんだ?」
「ムキムキマッチョが吹っ飛んだしね〜。六ちゃんの筋肉量じゃ普通無理ゲーでしょ〜」
「いや、成人男性でもあの吹っ飛ばしかたは不可能だろう。10m飛んで、壁割れてるしな。考えられない……」
各々がまず感想を言う。
目の前で起こったことにまだ理解が追いついていない。いや、下手したら一生理解できないことかもしれない。
「「「 …… 」」」
皆、黙り込んでしまう。いや、六条太地がどうやって吉田を倒したかを解明したいのだろう。
葛城聖司が口を開く。
「お嬢はどこまで知っているんだ? 彼が何者か、あの技の秘密とか……」
両手のひらを上に向けて肩をすくめる権田成美。
「お手上げですわ……何もわかっていないのですわ……」
「成美ちゃんも本気でビックリしてたもんね〜」
東雲あかりは権田成美の表情もしっかりとチェックしていたようだ。
「最初、成美ちゃんが一枚噛んでるのかなぁって思ったんだよね〜。それでイカサマ発見!って感じで見つけてやろうって考えてたわけ。 全く何もなかったけどね〜」
「当然ですわ。イカサマしてメンバーに入れるメリットがありませんわ」
「めっちゃ六ちゃんのことが好きとか?」
ニヤつく東雲、赤くなる権田。
「ふざけるのはやめて欲しいのですわ! あれは彼の実力でやったこと、という点は事実ですわ!」
「そう…… 『どうやったかがわからない』ことが問題なんだ」
鏡慎二も同調する。
「とりあえず、敵じゃなくて味方でよかったってことで、ここは納めようか。多分凡人の俺たちでは理解できない領域に彼はいるんだ……多分」
秀才の葛城聖司がまとめる。
「「「 うん 」」」
意見は一致した。
「お嬢は学力面でも六条君を評価しているんだっけ?」
「実はそれもまだ未知数なのですわ。可能性は大いにありますわ」
「もはや軽んじることはできないな……あんなパフォーマンスを見せ付けられたばかりだからな」
鏡慎二がメガネのブリッジをクイッとあげながら、太地を警戒する。
味方になるのに不安といったところだろう。なんせ超人扱いされている男だから。
「どうやって学力を測るわけ? 成美ちゃん、もう考えがあるんでしょ〜」
東雲の質問にニヤリと笑って返す権田。
「わたくしたちが受けた直近の学力テストを六条太地に受けさせれば、全てはっきりしますわ」
「おいおい、お嬢。それはちょっと厳しいんじゃないか?第一高三年の問題を二年に解かせるって相当やばいだろ。半分正解あったらいい方だろ。」
「……おい、葛城。お前さっきも似たようなこと言ってなかったか?」
「……確かに。言った気がする」
「もう〜聖ちゃん変なフラグ立てないでよ〜」
「いや、そんなつもりは無いんだが……六条君ならって思えちゃうのが怖いな」
「……」
「ま、まぁ……様子見てみようか」
秀才の葛城聖司が軽くまとめたところで、太地とクルミが帰ってきた。
「すみません! お待たせしました」
「太地は炭酸水が大好きなのですわ!500mlボトルを3本は飲みすぎなのですわ~
!」
「いや〜頭が冴え渡る気がするんだよね〜。 成美先輩、今から僕の学力を確認するんですよね? おそらく夏休み前の第一高三年生の学力テストの内容と同じものを僕に解かせるって感じですかね?」
「「「 え⁉︎ 」」」
三人が驚いている。権田はまたこの展開か、と呆れている。
「では……こちらで始めますわ。 準備はよろしいですわ?」
「はい! いつでも大丈夫です!」




