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第98話『禁忌の魔物 その2』

空を覆っていた薄暗い雲は不自然に穴を開けて、青い空を映し出す。


「『勝つ』じゃなくて……」


「『負けない』……だね」


魔力がゆっくりと杖に集中する。


爆破魔法ブラスト


杖から魔力が放出すると、禁忌の魔物(リヴァイアサン)の鱗に目掛けて空気を裂いていく。


「……それでいいのよ。リリス!」


エレナも魔導書を広げると、魔法陣を展開する。


炎魔法ギガフレア!」


「全く、やはりお前はアイツに似ているッ!」


二つの炎と一つの光がリヴァイアサンに向かっていく。


「第二流儀・一閃炎桜いっせんえんおうッ!」


「ドガァァァァン」と激しい爆発音が響くと同時に、漆黒の鱗が宙を舞う。


「削れてはいるが、決定打に欠けるな……」


リアルが横に立つと、纏っていた炎を両手に集中させる。


「リリス・ハルカ。アレはまだ使わなくていいからな」


そう言うと、リアルは音を置き去りにして、再びリヴァイアサンに向かっていった。


「私たちは、リアルの援護をしなきゃね」


エレナは魔導書のページをめくり、魔法陣を展開する。


地面魔法ギガグランド!」


エレナの声と同時に、地面が裂け、勢いよく地面が盛り上がる。


「まだまだ!」


氷魔法ギガブルズア!」


突然、影が辺りを覆う。


空を見上げると、一面を氷塊が覆っていた。


「リリス、アレを粉々にして!」


「……そう言うことね」


杖をゆっくりと氷塊に向けて、魔力を溜める。


爆破魔法ブラスト


魔力が氷塊に向けて放たれる。


「リリス、こっち来て!」


エレナが私の肩を抱き寄せると、周りを魔力の結界が覆う。


次の瞬間、『ドガァァァァン』という爆発音と共に、光が激しく差し、氷が砕けて星屑のように降り注ぐ。


「大丈夫……ネオンは無事よ?」


エレナに頭を撫でられるが、あまり嬉しくなかった。


魔力結界に砕けた氷塊が降り注ぐと、激しい音を鳴らし、私たちを避けながら、次々と地面に突き刺さっていく。


「ねえエレナ」


「どうしたの……?」


エレナは少し声を振るわせながら、私の顔を見つめる。


「ネオンが無事か考えてたら、ずっと心がモヤモヤしてて集中できないんだよね」


魔力結界に触れると、その箇所を爆破して結界を破壊する。


「全部壊してもいいかな?」


「リ、リリス……!?」


頭上に氷塊が降ってくるが、氷塊が意志を持ったかのように私を避ける。


「待って……待ってよリリス!」


また、エレナの声が遠ざかった。


目の前に映るリヴァイアサンには、不純物は一切見えない。


「ヘル――」


杖を構える。魔力が再び空間を歪ませながら杖に集中する。


『全部、リリスちゃんが決めることよ?』


突然、脳内に女性の声が響く。


(なんで……私はネオンを守ってるんだろう)


『お友達、守るんでしょ?』


(なんで……『ネオンだけ』を守ってるんだろう)


「そんなの、どうでも……」


腕が震えて、標準が定まらない。


ついには杖が手から離れてしまう。


「よく……ないよ」


視界が、潤む。


「なんで、訳がわからないまま生きてきちゃったんだろう……」


「ずっと、一人で生きてたはずなのに……」


「なーに言ってんだ?」


頭を強く撫でられる。


「アタシらがいるだろ!」


「……ルイン?」


ルインが私に近寄ると、指を伸ばす。


「その顔。全然リリスっぽくねえぞ?」


涙がはらわれ、ハッキリとルインの姿を捉える。


そのルインはいつも通り笑っていた。


「お前のおかげで、アタシがここにいるんだからな!」


ルインの周りを魔力が漂う。


大魔力貫通魔法インディヴァールッゥゥゥゥ!」


地面が震え、空気が軋む。


ルインの目の前には超高密度の魔力の塊が形成される。


「ガハハ!見て驚くなよォッ!」


音が消える。


次の瞬間、魔力の塊が勢いよくリヴァイアサンに放たれる。


そして、光が遅れて視界を覆う。


「……っ」


爆風に吹き飛ばされそうになるが、ルインに腕を掴まれる。


「今のは全力の半分な!」


光が晴れると、その先には巨大な風穴の空いた、リヴァイアサンの姿があった。


「ふう……疲れたから、あとは頼むぜー!」


そう言ってルインはその場に寝転がった。


「危ないな……俺じゃなかったら死んでたぞ」


いつの間にかリアルがルインを跨いで奥に立っていた。


「……なんか、ルインに負けるの」


「嫌だな」


無意識に、口角を上げていた。


「ハハハ!それでこそリリスだぁ!」


ルインはそう言って、足で私の背中を蹴る。


「どうやら、落ち着いたみたいだな」


リアルは静かに笑みを浮かべる。


「リリス……!」


背後からエレナの声が響く。


「……私たちは、全員友達よ……?」


エレナの手が、私の肩に触れる。


「……うん。わかってる……いや」


「わかったよ――」


魔力が体の底からみなぎる。


杖を構える手は、がっしりとリヴァイアサンに向かって固定されている。


「みんな生きて、アイツを倒す。最高のエンドだね……!」


地が震え、リヴァイアサンがコチラに勢いよく向かってくる。


「ネオン……いや、みんな!」


「ありがと」


――魔力が、静かに収束する。


(もう、間違えない)


視界の端にはリアルやエレナ、寝そべるルインの姿がしっかりと見える。


「へへっ!」


爆破魔法ヘルブラストッ!!」


――


風が、静かになびく。


地は抉り消え、至る所に漆黒の鱗が転がっている。


(……)


誰の声も聞こえない。


けれど、確かにみんなの心音だけが伝わる。


(……)


波が静かに音を立てる。


さっきまでの薄暗い空は嘘のように、地平線まで広がる晴天が映る。


「これが……リリス・ハルカの本気か……」


リアルのそんな声も微かに聞こえた。


(ああ、疲れた……)


ゆっくりと瞳を閉じる。


(みんな無事でよかった……)


――


同時刻、遙か上空。


とてつもない爆風が帽子を吹き飛ばす。


「あっ……!」


気づいた時には、すでに目に見えないほどに遠くまで飛ばされてしまった。


「もう……リリスちゃんったら〜」


地上を見下ろすと、そこには爆煙と、微かに魔力を放っている物体があった。


「けど、やっぱりリリスちゃんは最高だわ」


「最高傑作のリヴァイアサンちゃんを倒しちゃうなんて」


体を移動して、白い髭を撫でる。


「よしよし、ウェリアンちゃんはああいう風にはしないから大丈夫よ?」


ウェリアンちゃんは低い唸り声を上げながら、好機嫌な笑顔を浮かべる。


「さて、リリスちゃんたちをアクアリアで待つとしましょ!」


禁忌の大陸(リヴァイアサン)を背中に、ウェンリアちゃんの尻尾に飛ばされた帽子が引っかかっていることに気づかないまま、アクアリアに飛び去る。


――第99話へ続く。

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