エピローグ『この美しき日々』
あれから一週間が経った。
「ほら!そろそろ起きなさい!」
「まだ朝じゃ〜ん……」
「もう朝なの!」
エレナに腕を引っ張られて、布団から引きずり出される。
「今日はネオンさんたちが帰るんでしょ?最後くらい見送らなきゃじゃない!」
「う〜ん……わかったよ〜」
半分意識が欠けながらも、エレナに引っ張られて宿の部屋から出される。
「クロエとルインは〜?」
「先に行ってる。早く追うよ」
そう言ってエレナは私を引っ張りながら、アクアリウムの正門に到着する。
「ほら、居たよ!」
エレナが私を離して、正門に向かって走り出す。
そこに視線を向けると、ネオンの瞳に映る太陽光が目に入った。
「あ、ネオン〜!」
ネオンに向かって駆ける。
「ネオン〜帰っちゃうの〜?まだ一緒にいたいな〜」
ネオンの小さい手を握る。
「リ、リリスさま……私も一緒にいたいです」
ネオンはぎこちない笑顔を保ちながら、私の手を強く握る。
「へへ、やっぱりネオンはヌコちゃんだな〜!」
「ち、違います……!」
「うっそだ〜!だって寂しがりやさんだし〜甘えん坊じゃ〜ん!」
ネオンは頬を膨らませながら、私の服の袖を掴む。
「……そうです。私は甘えん坊で寂しがりやです……!だから、リリス様と離れたくないんです……!」
ネオンの瞳には微かに涙が浮かんだいた。
「ほら、あまり迷惑をかけるな」
背後からリアルの声が響く。
「リアルじゃん!リアルも帰るの?」
リアルは軽く笑いながら、ネオンの肩を軽く叩く。
「ネオンを送るだけだ。俺はレフォーシティ家には不要だからな」
「そ、そうなんですか……」
エレナは苦笑いをするが、リアルは気にせずに笑っている。
「そうだリリス・ハルカ。アイツにはもう会ったのか?」
「ん、アイツ?」
「……いや、いい。それじゃあ、俺らはもう出る」
リアルは手を振るが、ネオンは動こうとしない。
「ほら、ネオン。早く行くぞ――」
「わ、私は……レフォーシティ家じゃありません!」
ネオンは目を瞑りながら、大きな声で叫ぶ。
「何言ってんだ、あまり迷惑をかけるな」
「私は……ネオン・ハルカになります……!」
ネオンはそう宣言すると、私に勢いよく飛びつく。
「訳のわからんことを……」
リアルは呆れながらも、ネオンの肩を掴む。
「俺は構わんが、母上がどう言うかは知らん。どちらにせよ、一度帰るべきだ」
私の体にしがみつくネオンの頭を撫でる。
「行ってきたら?ネオンのお母さんが「いいよ〜」って言ったら、私も「いいよ〜」って言うよ?」
私の言葉を聞いたネオンは、ゆっくりと肩の力を抜いてリアルの隣に立つ。
「ぜ、絶対ですよ。私は、リリス様の隣に立つ準備はできていますから」
「へへ、ネオンは可愛いな〜」
ネオンは、一瞬頬を膨らませたが、すぐに笑みを浮かべる。
「では、また会いましょう。次会う時は、必ずリリス様の……」
ネオンは言葉を詰まらせる。
「いいえ、なんでもありません」
そう言って、アクアリウムを背中に歩き始める。
「じゃ〜ね〜!」
大きく手を振り、ネオンの背中を見送る。
「さらばだ。とは言っても、すぐに会うことになるがな」
リアルもそう言い残して、ネオンの後を追っていった。
「……ネオンさん。行っちゃったね」
「私たちはあまり関係性なかった」
「エレナたちが古代遺跡行ってる間、王女の子守りが大変だったんだぞ!」
背後で、みんながそんな話をしていたが、私はネオンの背中をずっと見ていた。
「リリス、そんなにネオンさんと離れるのが寂しいの?」
「……いや、寂しいけど。でも、また会いにくるって言ってたしね〜」
「……そうね」
エレナは空を見上げる。
「ところで、これからどうする」
クロエが静かに話し始める。
「リリスは初め『ギルクエ制覇する〜』って言ってたけど」
「魔法祭典に行ったり、流されるがままにボルテカに行って……そのままリヴァイアサンと戦わされたし」
エレナは私の肩を掴んで悲痛な叫びをあげる。
「もう懲り懲りだー!」
「その叫び、エレナらしくない」
クロエが淡々とエレナに告げる。
「うっさい!私は疲れてるのよー!」
クロエは軽く笑みを浮かべると、ルインがエレナに飛びつく。
「じゃあもっと疲れさせてやるー!」
そんなエレナとルインを見ながら笑っていると、クロエが静かに語りかけてくる。
「これからどうしたい」
「う〜ん……」
少し考えるフリをすると、アリスとの会話を思い出してしまう。
『また私に会いに来てね』
「……会いたい人がいる」
私の返事を聞いたクロエは驚いたような表情を浮かべる。
「リリスがそう言うなんて珍しい」
エレナとルインも喧嘩をやめて、私を見つめる。
「リリスが会いたい人?」
「おいおい!気になるから教えろよー!」
ルインが駆け寄ってくる。
「でも、一旦休も〜よ!」
――
歴史は変わった。
炎王竜が堕ちる。
魔法祭典が初めて中止になる。
王家『レフォーシティ家』の王、ミリアム・レフォーシティが死亡。
禁忌の魔物が復活したかと思えば、すぐさま消息を絶った。
それも全て、たった一人の少女と
彼女に巻き込まれた仲間たちによって起こされたもの。
そして――
「リリス、貴様を六戒師」
「ニ由 自由のリリスとして名を刻もう」
六戒師は、七戒師に変わった。
――
「じゃあ私たちはこれで!」
「バイバイ、リリス」
「元気でなー!」
そう言って、エレナたちを乗せた船が、炎の大陸へと出向していく。
「また三ヶ月後ね〜!」
私の声は、潮風に乗って消えていった。
それでも、この声はどこまでも響いていた。
「……また明日……って言えないのか〜」
――第一期、完。
【告知】
暇爆こと『暇だから爆破魔法を集めてたら、いつの間にかLv.99になっていたのでギルクエ制覇を目指します』を最後までご覧いただき誠にありがとうございます!
エピローグで告知をさせてもらうのですが、第二シーズンが始まる前に、リリスたちの日常を描いた番外編を投稿していきたいと思います!
世界線としては少し違う世界線なのですが、あくまでも!
ジャンルが違う暇爆として読んでいただければと思います!




