藍川楚麻理の行方
──藍川が無事登校した放課後。
オレは久しぶりに思考情報部に顔を出した。
櫟井に誘われ藍川はテニス部にも復帰ということで、思考情報部には来ない。
まぁ、思考情報部のルールとして他の部活や用事を優先とあるからしょうがないんだけどな。
なので部室にはいつも通り桜ノ宮しかいない。
この光景も久しぶりだな。
「さすがね」
「なにが?」
「あなたのおかげで藍川さんが学校に登校してきたでしょ?わたしは心配するばかりで結局なにもできなかったわ」
「んなことねーだろ。桜ノ宮が学校で待っててくれたから来れた部分もあると思うぞ」
「仮にそうだとしても、あなたの功績に比べたら本当に些細なことだわ」
「桜ノ宮がそう思うならそれでもいいけど、オレは程度の差は関係ないと思うぞ。と言うか藍川さんを説得する上で桜ノ宮の名前もかなり使わせてもらっちまったし」
「そうなの?」
「そうなの」
まぁ、かなりというのは盛ったけどチョロっとは出したしいいだろ。
「それよりもだ。移動しないか?」
「どこへかしら?」
「テニス部」
「別に一人で行けばいいのじゃない?」
「よくないから言ってんだろ?特に予定もないんだろ?一緒に来てくれよ」
「はあ……わかったわ」
テニス部は今日も元気に練習している。
ただ、櫟井は練習しているのに藍川の姿が見当たらない。
藍川の奴櫟井に誘われたんだし、今日は部活に参加してるはずだよな?
「藍川さんいなくないかしら?」
「見当たらないな。
ちょっと待っててくれ。聞いてくるから?」
嫌な予感がしたオレは桜ノ宮から距離を取るため、桜ノ宮をその場に留めテニス部に話を聞きに行く。
「トーカ、頼めるか?」
『藍川さんを探せばいいのよね?任せて!』
「女子しか入れないところを中心に頼む」
『わかった』
トーカは藍川を探しに行く。
お手洗いとかでたまたま離れてたとかならいいんだが……。
オレは端っこで休んでいる女子テニス部員たちに声をかける。
「すんませーん」
「はい?──って、湾月くん!?えっと……なに?」
声かけたのがオレだと気づいた女の子たちは一気に警戒態勢に入る。
オレってそんなに怖いかな?
「藍川さんは?」
「あっ、えーっと……」
「そう言えば、湾月くん今日藍川さんと登校してきたでしょ?もしかして付き合ってるの?」
「え?いや、付き合ってないけど」
「じゃあさ、じゃあさ!櫟井くんと藍川さんは?」
「さあ?仲は良いと思うけど」
「えー、でもやっぱ付き合ってる可能性あるのかー」
「いやいや、櫟井くんって姫路さんと付き合ってるんじゃないの?」
「いやー、それはないでしょ!だって、櫟井くんの態度的に姫路さんは側にいるだけって感じじゃん!あれは付き合ってないでしょ!」
「そもそも仮に姫路さんが付き合ってたら、もっとうちらに見せつけてくるでしょ!自慢も多いし!」
「だよねー!それだったら藍川さんの方がありそう!結構櫟井くん藍川さんに気配りしてるし。ていうか、私なら姫路さんより藍川さん選ぶし!」
「わかるー!藍川さん性格いいしねー!」
へー。姫路さんは女子の中ではあまり評価が高くないのか。いつも周りに女子が群がってたから意外だな。
それと、対照的に藍川は思ったより女子の中では評価されてるんだな。
じゃなくて、オレを無視して女子だけで盛り上がるのやめてもらっていいですか?
「盛り上がってるところ悪いんだけど、藍川さんがどこ行ったかわかる?
今日はテニス部に来てるはずなんだけど?」
「なんでそんなに知りたいの?もしかして、藍川さんのことが好きとか?」
「えーまじ!?」
「いや、そうじゃなくて。藍川さんってここんとこ学校来てなかったろ?
それをオレと櫟井で復帰させたんだ。復帰させた者としては気にして当然だろ?」
「あっ、やっぱ櫟井くんも噛んでたんだ」
「ねえ、湾月くん。櫟井くんと藍川さんってぶっちゃけどういう関係なの?一緒に登校できるようにしたってことは、ちょっとくらい知ってるんでしょ?」
うーん。明らかに話を逸らそうとしてるよな?
まさか時間稼ぎしてるとか?
だとしたら悠長に手段を選んでる場合じゃなくなるんだが……。
「藍川さんの居場所教えてくれたら教えてあげるよ」
「えー。先にそっちから教えてよ!」
「そうだよー」
こいつら……。
しょうがない。
ガシャン!
オレは一番手前にいる女子を掴むと逃げられないようにフェンスと体で挟み、迫る。
「「ちょ──!?」」
「他の奴らは黙ってろ」
オレは後ろにいる女子たちを威圧する。
威圧された女子は静まり返り、オレに迫られてる女子が唾を飲む音が聞こえる。
「しょうもない話がしたいってんなら、後でいくらでも付き合ってやるよ。ただ、今はそんな余裕がなくてね。これ以上はぐらかそうってんなら優しくは出来ないから。
藍川さんがどこにいるか教えてくれる?」
「えっと……姫路さんが連れてっちゃって……」
「どこに?」
「知らないんです!本当に──」
オレは襟を思いっ切り引っ張られた反動で、服が首にかかり女子から引き剥がされる。
「いっ──」
「あなた、なにやってるの!?」
「桜ノ宮!?いや、藍川さんの居場所を聞こうと……」
「だからってそんなやり方ダメに決まってるでしょ!?常識ってものを知らないのかしら!?」
「すんません」
桜ノ宮の剣幕に負け、オレは謝る。
「謝る相手が違うんじゃなくて?」
ぐっ……確かに正論だ。
オレは女性陣に向き直る。
「怖い思いをさせちゃってごめんな?特に君。後日埋め合わせするから」
オレは頭を下げる。
「それで?藍川さんのことわかったのかしら?」
「ああ。姫路さんが連れてっちゃたみたい」
「透が!?」
その場にいた全員が声の方を振り返ると、そこには櫟井がいた。
「なんで櫟井が!?」
「君がなにやら騒ぎを起こしたからだろうが!それより、透が楚麻理を連れてったてのは本当なのか!?」
「はい……」
テニス部の女子がそう答えた瞬間、櫟井は迷いなく走り出した。
いつも周囲に気を遣ってのらりくらりしていた櫟井がまさかあんなに本気になるとはな……。
「ちょっと!なにボーっとしているの!?わたしたちも行くんでしょ!?」
「ああ」
呆気に取られていたオレは桜ノ宮の声で我に返る。
女子テニス部員にお礼を言うと、桜ノ宮と一緒に藍川を探しに向かう。
「心当たりとかあるの?」
「いや。桜ノ宮は更衣室とか女子トイレとかを頼む。男子のオレだと手が出せない。
他はオレが回る」
「わかったわ」
藍川の復帰早々なにやら大事になっちまったな。
オレが桜ノ宮と二手に分かれてすぐ、トーカが慌てた様子でオレと合流した。
『鏡夜、鏡夜!』
「トーカ!?居場所わかったか!?」
『テニス部の女子更衣室!』
「更衣室な」
オレはテニス部の女子更衣室へと踵を返して、走る。
『さっき、櫟井くんと桜ノ宮さんとすれ違ったけど大丈夫なの!?』
「櫟井が!?」
『そう』
あいつ、藍川がどこにいるのかわかってたのか!?
いや、というよりは姫路が呼び出すならどこか検討がついてたって感じか。近しい関係なだけあるな。
オレがテニス部の女子更衣室に近づいた時、ちょうど桜ノ宮が更衣室に入ろうとしていた。
「なんで正義には関係ないじゃん!?」
中からは櫟井と姫路が争っているような声が聞こえる。
オレは更衣室に入ろうとしている桜ノ宮の腕を引く。
「ちょ──!?」
オレは桜ノ宮が転んでケガしないように背後から抱きかかえると、声を出さないように手で口を塞ぐ。
「静かに。ここは櫟井に任せて、顛末を見守ろう」
オレがそう言うと抵抗していた桜ノ宮の力が抜ける。
桜ノ宮が力を抜いたことで、オレも力を緩める。
と、オレの手に痛みが走る。
「いっ──!?」
噛みやがったな!
オレは小声で抗議する。
「なにすんだよ!?」
「あなたの方こそ何してくれるのかしら?許しもなくレディーに後ろから抱きつき、あまつさえ口を塞ぐとはどういう了見?本来なら訴えられても文句言えないわよ。
甘噛みで勘弁してあげたことを感謝してほしいわ」
「それは……すんません」
そう言われるとぐうの音も出ない。
また読んでいただきありがとうございます!
『初恋強盗』の99話です!!
今回は藍川楚麻理のテニス部復帰回!!
復帰早々嫌な感じが!?
焦ると鏡夜は基本強引!!
次回は修羅場回!?お楽しみに!
忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。




