プール
オレは現在、最近できた大型レジャー施設のプールに来ている。
脇腹のハートマーク?
そんなもの彩夜とのプールに比べたら取るに足らない些事だ。それに、バレなきゃ問題ないんだよ!
『はあー、すごいわね!』
「ほんとにな」
流れるプールに温水プール、巨大なウォータースライダーにウォーターアスレチックまで設備されており、大量のショップとサウナまで併設されている。
こりゃ一日中遊んでも時間足りないかもな。
オレがレジャー施設のバカでかさに呆れていると、更衣室の方がざわつく。
『彩夜ちゃんたち来たみたいよ!』
やはりあの二人の容姿は中学生と言えど目を引くな。
楓は女優の娘だけあって、さすがのプロポーションだ。
水着によって露わになったスラッとした手足が小顔を際立たせ、引き締まったお腹が胸や尻と言った女性らしい部分を引き立てている。
当たり前だが水着姿だと男には見えないな。
と言うか、こいつほんとに去年まで小学生か?スタイルよすぎて高校生って言われてもわからんぞ。
彩夜は言うまでもなくかわいい!!眩しすぎて失明しそうなほどだ!
穢れを一切感じさせない白くきめ細やかな肌にサラサラかつツヤツヤの髪。成長を感じられる多少控えめな胸と小ぶりなお尻。
人形であってもこの完成度には遠く及ばないだろう。
にしても、甘いものが好きな割に全然太らないよな~。代謝がいいんだろうか?
周囲の視線が一直線に二人に注がれてしまうのも当然と言えるだろう。
「お待たせ、鏡夜」
「お待たせ」
「おう」
「「……」」
「……どうした?」
「は~……せっかくの水着姿なんだよ感想とかあるでしょ?」
「悪い悪い。見惚れちまって言葉が出てこなかったんだよ。二人とも似合ってるよ!」
「なんかお世辞っぽい」
「無理やりって感じ」
「そんなことないって!二人とも最高にかわいいよ!」
ハッキリと感想を口にしたら間違いなく引かれちまうだろうし……。
褒めるって難しいな。
「まあいっか。で、鏡夜はなんで上にウェットスーツみたいなの着てんの?プールにいらないでしょ脱いだら?」
「いや、それはちょっと……」
脱いで監視員にハートマークがバレたら追い出されちゃうから!
その前に、高校生なのに脇腹に刺青的なものが入ってたら君たち距離取るでしょ!?
説明もできないし!!
「じゃあさ、上脱いでくれたら日焼け止め塗らせてあげてもいいよ?」
「ふ。交渉になってないな」
「なにそれムカつく。なんか脱ぎたくない理由でもあるわけ?」
「まぁな。ほら、日焼け止め塗って遊んで来い!食べたいものとかあるなら買ってきといてやるよ!」
「私、かき氷とトルコアイスとクレープ、あとメロンソーダがいい!」
「また甘い物ばっかり……。楓は?」
「焼きそばとたこ焼きとクレープとトルコアイス」
「了解。じゃあ、1時くらいに戻って来い。その時間に合わせて買ってきてやるから」
「アニキって金槌だっけ?」
「なんで?」
「せっかくプールに来たのに泳ぐ気なさそうだから」
「そんなことないぞ。最近運動不足で体力がなくってな、午後から本気出すからそれまでは温存」
「ふーん。じゃあ、行ってくるね」
「危ないから、走るなよー!それとちゃんと日焼け止め塗ってけー!」
彩夜と楓は走って行ってしまった。
『なんで泳がないの?それがあるならバレることもそうそうないでしょ?』
「とりあえず彩夜と楓を二人にして様子を見たい。それでミッションの進め方が変わるからな」
その後、午後にはオレも二人に混ざって遊んだのだが、最初と後半で特に彩夜に変化はなかった。
うーん。成果なしか……。
こういう場だと楽しむ方に意識が持ってかれて、恋愛感情の方は疎かになるのだろうか?
それとも彩夜は別に楓のことを恋愛対象として見てない?
『鏡夜!鏡夜、あれ!』
考え事をしていたオレはトーカの声で我に返る。
トーカが指さす方をパッと見ると、楓がガラの悪い輩に絡まれている。
「彩夜は!?」
『彩夜ちゃんはあそこ』
彩夜は吞気に二杯目のかき氷を注文している。
運がよかったな、彩夜に同じことをしていたら貴様らの肉片でプールの排水溝が詰まるところだったぞ!
「いいじゃん!俺たちといいことしようぜ!」
「やめてください!」
「どうせ彼氏とはもう何回もやってんだろ?俺たちと一回楽しんだって変わんないって!」
「おい!」
オレは楓に触れている輩の腕を掴むと楓から引き離し、楓の肩を抱いて自分の方へ寄せる。
「イッテーな!何すんだ!?テ……メ……」
「あ゛あ゛!?」
友達作りではハンデとなっているオレの体格と目つきはこういう時には役に立つ。
なにもしてなくても相手が勝手に怯んでくれるからな。
「てめぇらオレの大切な人に何絡んでんだ?」
「別にちょっと声をかけただけだよ。彼氏がいんなら先に言えよな!」
男たちはすんなりと引き下がってくれた。
まぁ、周囲の目もあるし、こんなところで暴れるほどバカじゃないか。
「なにが彼氏がいるなら言えだ。彼氏いる前提でナンパしてたくせに……。大丈夫だったか、楓?」
「うん」
「たっく、美人なんだから気を付けろよな。ああいう輩が嫌ならオレの傍にいろよ、守ってやっから」
「アニキ、どうしたの?」
「おう、彩夜……」
しまった。
今、楓の奴オレの腕にしがみついてるんだった!
「いや、その、楓の奴がナンパされてたから助けに入ったところで……」
「あーナンパね!なんかここ多いよね!」
「ん?多いって……もしかして彩夜もナンパされたのか?」
「追い返しから大丈夫よ!」
「そ、そうか……」
『見てないところでよかったわね!そうじゃなかったら暴行事件になってたんじゃない?』
かもな。
「じゃあ、帰るか!楓、そろそろ離れろ」
オレが指で楓のでこを押すと、楓がするりとオレの腕から離れる。
「行くぞ」
「待って!」
<ターゲット登録完了。リセットポイントが設定されました>
「え!?」
ええええーーー!!
このタイミングでかよ!しかもよりによって楓!?
「ど、どうした?」
「……助けてくれてありがと」
「おう。気にすんな」
プールではナンパに動揺していた楓であったが、家に帰ってきた時にはいつもの楓に戻っていた。
が、オレは今まで通りではない。
なんせ、楓がターゲット登録されちまったからな。
くっそー彩夜と楓、お互い思い合っててくれたりしないかなー。
彩夜が誰かのものになるとか世界を破壊したいほど嫌だが……百歩、いや万歩譲って楓なら許せないこともなくはない。
コンコンコン
「はい」
返事をするとまた楓がオレの部屋のドアからひょこっと顔を覗かせてくる。
「どうした?」
「入っていい?」
「いや、彩夜に怒られるから……」
「大丈夫。彩夜に伝えてあるから!」
そう言うと楓はオレのベットに腰かける。
「どうしたんだ?」
「彩夜がお風呂中だから……」
他人の家で一人だと不安になったかな?
「でも意外だったな。楓は美人だしナンパには慣れてると思ってたんだが」
「あたし声かけられたことないし。それに今日はずっと彩夜がなんとかしてくれてたから」
「そう言えばそんなこと言ってたな……もしかして彩夜ってナンパの相手手慣れてるのか?」
「彩夜モテるからね。学校でも何回も告白されてるし」
「ほう。オレのかわいい彩夜に唾つけようとは──」
「ねえ、なんで上脱ぐの嫌なの?」
「それは……」
「秘密があるとか?」
「まぁな。逆になんでそんなに気になるんだよ?」
「……鏡夜の腹筋とか見てみたいから……」
「え!?」
「だめ?」
おねだりしながら楓は距離を詰めてくる。
「近いです、楓さん」
「お願い♡」
これは……こんなとこ彩夜に見られたらやばい!
「わ、わかったから!わかったからいったん離れろ!」
「やったー!」
「はあー、引くなよ?あと誰にも言うなよ?彩夜にも内緒だからな?」
オレは上着を脱ぐ。
「やっぱり、鏡夜めっちゃいい体してんじゃん!触っていい?」
「ちょっとなら……」
楓がオレの胸や腹を指でなぞる。
くすぐったい。
「楓、そろそろ──」
バンッ!!
「なにやってんの!?」
え、彩夜!?
「いや、これは──フベラっ!?」
くっそ、楓のやろ~。
また読んでいただきありがとうございます!
『初恋強盗』の66話です!!
今回は彩夜と楓とのプール回!!
俗に言うサービス回!
ナンパとかもお約束!!
次回は約束通り陰浦栞の自宅訪問回!!お楽しみに!
忌憚ない批評・感想いただけると嬉しいです。




