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CosMOS  作者: 螢音 芳
Chapter.5.5
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74/144

5. 結集

 エイジス諸島連合皇国によるシーナ大帝国エリア91攻略戦より2週間が経過した。

 その間、特に政府から発表はなかったが、実情はというと、エイジスはケートスと通信設備の復旧、シーナは先代女帝が各勢力に逃がした政治家の招集と政治体制の整備、ノトス・サザンはラジオ放送による混乱の収拾、ユエルビアは各勢力の様子見、ということでそれぞれ動きがなかっただけであった。

 束の間の沈黙状態から2週間が経過したころ、突如シーナ大帝国のクーリア帝が会見を開いた。

 先日、エイジス諸島連合皇国との戦闘の後、会談する機会を得て、双方和解に至ったとのこと。そして、地球への転移については人類側にも非があった可能性があり、その件が明確となるまではどの勢力にも攻撃をしない方針を示した。民衆に対しても冷静な行動を呼びかけ、武力によって意思を示そうとした者に対しては法制度に基づいて処断することも付け加えられた。

 同様にエイジス諸島連合皇国もシーナ側と停戦となったことをノトス・サザン合衆国の報道局を通じて声明をだした。

 これらの宣言には、クーリアのもとに召集された政治家の力添えと、復旧が完了したエイジス側と秘密裏に行われた交渉が背景にあった。


 動きはそれだけに留まらず、ノトス・サザン合衆国がケイオス駆逐戦支援のためにプローム乗りを派遣し、長期的に在留させることが決まった。さらに、黎明の旅団も公ではないが、精鋭のプローム乗りをエイジスに滞在させることを決めた。

 その内訳はというと、

 サザン貴族院、特殊上位部隊のシュウ、サキ、ユイ、レン、ミナの5人。

 ノトス共和院、アルファ小隊のカエデ、ハヤト、リクの3人。

 黎明の旅団のカナタ、ケンジ、アヤメ、ルイ、リュウの5人。

 以上の計13名、エリア91攻略戦においてチームを組んだメンバーがそのまま長期滞在の対象となったのであった。



 部隊の派遣が決定し、公表された翌日。

 ケートス表面の発着場に、サザンの飛空挺とともにユイ、シュウ、サキ、レン、ミナの5人組が到着した。

 「ユイお姉ちゃん!」

 降りてきたユイを見るなり、ナノが嬉しそうに駆け寄る。

 「ナノ!」

 ユイも嬉しそうにナノを抱き留めた。

 「よっ、本格的に世話になりにきたぞ」

 「逆よ、支援に来たのに、もう」

 シュウとサキが軽口を叩きながら声をかけた。

 「シュウにいとサキお姉ちゃん、レンにいにミナお姉ちゃんもいらっしゃい」

 満面の笑顔でナノが言うと、ミナも笑顔を浮かべ、普段表情の変化に乏しいレンも思わず表情を崩した。

 「いらっしゃい、歓迎するわ」

 ケイトが笑顔で声をかけると、5人とも姿勢を正して敬礼の体勢をとる。

 「やあねえ、そんな畏まらないでちょうだい」

 「そうは言っても、この艦の指揮官なわけですし」

 シュウが屹立した状態で苦笑しながら答える。

 年齢もまばらな部隊だが、彼らもれっきとした軍人である。エリア91の時はケイトに接する機会が少なかったが、今回は国を代表とした正式な支援だ。ナノは本人の了解とケイト、サリから気持ちを孤立させないためにそのような扱いはしないで欲しいと懇願されたので、ともかくとして、指揮官に礼をとるのは当然とも言える。

 ケイトがもう、とため息をついてから一息吸い込む。

 「指揮官として、勅命!貴君らを友軍として歓待する。それに当たり作戦行動中であっても慇懃な礼は不要、私語を旨とすること、以上!」

 腹に力の入るような号令に、それぞれ軍式の応答をしそうになるが、ぐっと堪えて了解しました、と答える。

 5人の様子を見て、うん、とケイトが満足そうに頷くと微笑んだ。

 「じゃあ、ゲストハウスに案内するね」

 さっきの号令をかけた様子との落差に驚きつつ、5人とナノが後に続く。

 「今のみたら、お母さん、また目を輝かせそう…」

 ユイがこっそりと呟く。救出の一件以来、サリはケイトのファンであり、助けられた時の一幕もそれでね、それでね、と嬉しそうに目をきらきらさせて話していた。

 「カッコいいな、ケイトさん」

 「うん、サリさんとはまた違ったタイプだよね」

 後ろでレンとミナがひそひそと話す。

 「サリさんは永遠のアイドルやお嬢様のような上品な愛らしさがあるけれど、ケイトさんは男装が似合う凛々しさがあるわね」

 どっちにしても羨ましいわ…とサキがため息をつきつつ呟く。

(サキお姉ちゃんもカッコ可愛いと思うけどな)

 モデル並の長身、バランスのとれた体型のサキを見つつ、ナノがこっそり思った。

 そんな感想をそれぞれ浮かべる中、シュウは前を歩くケイトに声をかける。

 「あの、ケイトさんは地球にいた時、どんなお仕事をされてたんですか?」

 「私?普通のパートタイマーの主婦だけど」

 しれっと言ったケイトの言葉にサザン勢5人が固まり、言いかけた言葉を飲み込む。

(絶対嘘だ…!)

 先程の号令といい、艦隊戦指揮して、屈強な軍部総長を格闘戦で打ち負かす主婦がどこに居るというのだ。

 「ナノ、本当のところは?」

 ユイがナノに小声で問いかける。

 「え?あ、うん、主婦であってる…よ?」

 ナノがしどろもどろになりつつ答える。

 「ナノー?なんでそんなにぎこちなさそうなのかなー?」

 しっかり聞いてたケイトが問いかけると、はうっとナノが反応する。

 「な、なんでもないよ、お母さん、うん!」

 がくがくと頷くナノを見て、よろしい、というようにケイトが頷いた。

 「……」

 ケイトの職業について、深く突っ込んではいけない問題であるということを来て早々5人はしっかりと認識したのだった。



 発着場を離れ、ワタセ家の邸宅など建物の並ぶ区画に案内されると、そこには真新しい3階建ての住宅が2つ建てられていた。

 1つの建物の前では、ノトス勢のカエデ、ハヤト、リクが荷物を運びこんでいる。

 「なんだ、そっちはもう着いていたのか」

 シュウが声をかけると、カエデが顔を上げた。

 「サザン勢の皆さんも着いたんですね」

 同じように気づいたハヤトとリクも顔を上げる。

 「また、よろしく頼んます」

 「女性がいなくて寂しかったんですよ、よろしくお願いします」

 リクが嬉しそうに言うと、サキも微笑んだ。

 女性のプローム乗りで軍の上部に所属する腕利きとなると、数は少ない。

 年齢もあまり離れてるわけではないので、リクが喜ぶのも当然であった。

 「こちらこそよろしくね。後でいろいろ話を聞かせてほしいな」

 サキがうふふ、と微笑むとリクの耳元に近づいて囁く。

 「噂の3角関係の真相とか」

 サキの言葉を受けて、リクの顔がぼふっと真っ赤になる。

 「そ、しょ、しょんな特別なこととかは何もないですよ!?」

 「ふふふ、どうかしら?」

 サキがリクをからかっているところへ、ふよふよとリスのぬいぐるみ形のフェアリスがやってきた。

 「リクさん、内装や部屋割りはどうしたら?」

 「あ、木目調の落ち着いた感じにしてもらえれば。部屋は2階の角部屋が私の部屋にしてもらって、残りの部屋がそれぞれカエデ君とハヤトに割り当ててください」

 「了解です。必要な家具とかあったら言ってくださいねー」

 そう言うと、するー、とリスのフェアリスは家の中へと戻っていった。

 「内装から注文つけられるのか」

 感心するようにシュウが言うと、カエデとハヤトも苦笑した。

 「驚きましたよ、案内されたら好きにいじっていいって言われて」

 「フェアリスと共存してるエイジスならでは、ってところか」

 それを聞いてケイトが微笑みながらうなずく。

 「最初はこっちで考えておこうかと思ってたんだけど、生活様式が違うから任せた方がいい、ってハルとナノから言われてね。こういう形になったんだ」

 先日、ハルカとナノはサザンに滞在したため、地球での文化とこの惑星の文化にズレが生じていることを実感していた。それなら決めてもらった方がいいという話でまとまったのだ。

 「カナタ君たちなんかは、何度も来てるからもはや手ぶらだし」

 ケイトが話していると、賑やかな声が混ざった。

 「あ、サザンの人たちが来てる」と、いつもの調子で話すカナタ。

 「あの時、緊張してて気づかなかったけど、マジでユイがいる!」と、いつもの調子でリアクションをするケンジ。

 「ケンジ、気づくのが遅い!」と、いつもの調子で突っ込みを入れるルイ。

 「ミーハーだなぁ」と、いつもの調子でやや引いた視点から感想を言うリュウ。

 「ふあぁ…」と、いつもの調子でマイペースなアヤメ。

 それぞれ5者5様でやってきたカナタたちににやや呆れた調子でシュウが言う。

 「相変わらず賑やかだな、お前ら」

 「それが取り柄なもんなんで」

 悪ガキのような不敵な笑みを浮かべてカナタが返す。

 「レン君を見て見習ってほしいもんだけどね、うちの男たちは騒がしいし子どもっぽくて」

 「「「ルイには言われたくない」」」

 ルイに対してカナタ、ケンジ、リュウが突っ込み返す。

 その話を受けて、ミナがレンのことを見て首を傾げる。

 「たぶん、違うと思いますよ?レンの場合、感情が表情に出にくいだけで」

 「そうそう、さっき久しぶりに笑顔を見たね」

 ミナとユイが言うと、ほっといてくれ、とレンがぼそりとつぶやいた。

 プローム乗りたちが賑やかに話し込む様子を遠くで見つつ、ケイトは微笑む。

 つい先日、カナタ達は団長や旅団の仲間が故郷の星へ帰るのを見送ってきたばかりだ。一度ヴァルド達に報告したあと塞ぎこんでいたが、最近調子が戻ってきた。

 ユイにしても、サリが戻ってきて最初会った時とは表情が明るいし、ノトスの3人も楽しく会話に混ざっている。

(ハルが巻き込ませたくないって言ってた気持ちがわかるなぁ…)

 地球でもこんな感じで賑やかにやってたのだろう。だが、それも各勢力の陣営に分散することで、それぞれ辛いものを抱えながら戦うことになっていたのだ。

 今、こうして再び共闘できるようになったのは、幸運と言う他なかった。

 「そう言えば、旅団勢は荷物どうしてるんだ?」

 ハヤトが問いかけると、ああ、とリュウが頷く。

 「フェアリス達に作ってもらって、それをゲストハウスに保管してる。だから、荷物とかもそんなにない」

 「え、作ってもらってる、てそんなこともしてもらえるの?」

 驚いてユイが問いかけると5人が頷いた。

 「来るまでの間散々悩んで厳選してきたのに…」

 悔しそうにユイが言う。

 「すっごく時間がかかったわね、今回も」

 「たいへんだったよ、荷造り」

 巻き込まれたサキとミナがやれやれと話す。

 「面倒だから、俺らはハルの持ってる服参考にしたり、ナノにお願いしたりしてるな」

 「そうそう、ナノはセンスがいいから」

 カナタとケンジが頷きあう。

 「え、ナノ作ってるの?」

 ユイが問いかけると、えへへ、とナノが照れ笑いを浮かべた。

 「もともと人の着てるものとか観察するの楽しいし、ファッション雑誌眺めるのも好きだから。イメージを伝えれば、ノウェムが再現してくれるからね。お母さんともそういう話するし」

 「ハルやイツ君のはナノや私が作ってるね。っていうのも……」

 と、ケイトが続けようとしたところで、地面からいきなりケートス内部につながるゲートが出現した。

 そこから出てきたのは、ハルカだ。

 「みんな、荷物運び終わったかな?そろそろ歓迎会の準備出来たんだけど」

 何でもないように出てきて、話しかける。

 全員の視線がハルカの方を向いて、

 固まった。

 ナノが不機嫌な表情で声をかける。

 「あのね、おにい。準備してくれるのは嬉しいんだけどさ、その格好で人前に出ないで、って言ったよね?」

 「え?別に変じゃないだろ?家だとよく着てるし、ご近所でてもなんとも言われないし」

 「私が嫌なの。割烹着着てスーパー出てるって学校で言われるのが!」

 ハルが着ていたのは、主婦が着るような、チェック柄の割烹着だった。

 「料理するとき汚れないし、寒くないし、ポケット大きくて便利なんだからいいだろ?」

 なにがおかしいのかわからない、といったようにハルカが首を傾げる。

 「便利だったらいいという問題じゃない!」

 しゃー、と猫のように怒りながらナノが言う。

 「……」

 何とも言えずにプローム乗り達が兄妹のやり取りを見る。

 さらにそこへ。

 「ああ、みんな揃ってたんですね」

 穏やかな声のする方を見て、

 また全員固まる。

 「ごめんなさい、お迎えに行けず。少しプロームの調整してたら、時間がかかってしまいました」

 苦笑しながら、イツキが言うと、ケイトが頭痛をこらえるようにこめかみに指をとんとん、と当てつつため息をついた。

 「あのさ、イツ君。歓待する側として、それはどうなのかな?」

 「作業に熱中してたら着替えるヒマを無くしてしまいまして。でも、そんなに変ですか?」

 「流石にツナギに白衣はどうかと思うよ」

 イツキが着ていたのは、整備士とかが着るツナギに白衣を羽織っていた。

 「けど、どっちもポケットが多くて便利で、動きやすいので。特に白衣の方にはタブレットPC入れっぱなしにしてますし」

 先程ハルカが言ったことと同じ内容をイツキも話す。

 「便利だからいいという問題じゃない…」

 ケイトがげんなりしながらため息をついた。

 「……」

 先程と同様、プローム乗りたちが夫婦のやり取りを眺める。

 「またやってるのですか」

 「懲りないのです、イツキもハルも」

 ノインとノウェムが呆れた表情を浮かべながら現れた。

 「いつもなの?」

 ミナが問いかけると、ノインとノウェムが頷く。

 「イツキもハルも利便性と機能性を重視したがるのです。悪いことではないのですが、デザイン性とか体面とかそういうことを気にしなさすぎるのです」

 「以前、会議に赴く時、イツキは普段着で行こうとして、ヤナギが急遽軍服を作って対応したなんてこともあったのです」

 やれやれ、と双子で肩を落とす。

 なるほど、それならばケイトやナノがワタセ家の男二人の服を用意するのも納得であった。

 「あれがスペックの無駄遣いってやつか…」

 「どちらも顔がいいだけに勿体ない」

 ハヤトとレンがぼそりと言うと、プローム乗り達はウンウンと頷いた。

 その中で、

 「可愛いと思うけどな…」

 とユイだけがひっそりと呟いた。



 ケイトを宥めていたイツキのところへ、ポケットに入っていたタブレットPCが、ビー、とアラーム音を鳴らした。

 その音を聞いて、イツキ、ケイト、ハルカ、ナノ、4人の表情が剣呑を帯びたものへと変わる。

 直後、ケートス表面でサイレンが鳴り響いた。

 「ちょっと行ってくる!」

 真っ先にハルカがブリッジ内部へと続くゲートへと駆け出し、ノインが後に続く。

 「ごめんなさい、皆さん、疲れたばっかりだと思うので休んでてください!」

 「非戦闘担当のフェアリスは案内してあげてね!」

 「お姉ちゃん達またあとで!」

 そう言うと、イツキ、ケイト、ナノもゲートへと走っていく。

 取り残されたプローム乗りたちは、突然の出来事に呆気にとられる。

 「今のは?」

 シュウが近くにいたフェアリスに声をかけた。

 「最初にイツキ様に届いた連絡が危険性の高いケイオスが観測された時に鳴るアラームで、次に鳴った警報はエイジスに対して支援要請が入ったことを知らせるものです。シーナから宣戦布告を受けた後に衛星通信の整備が完了したので最近導入したのです」

 フェアリスの言葉に全員表情を変える。

 「ばっ、それこそ休んでる場合じゃないだろ!」

 「そうだよ、何のために来たのかこれじゃわかんないよ!」

 ケンジとミナが叫ぶ。

 サキが真剣な表情で声をかける。

 「格納庫と出撃ゲートの場所は?案内して!」

 「は、はいであります!」

 フェアリスの後に続くようにプローム乗り達もそれぞれ素体を持つとゲートへと駆け出していった。



 格納庫に到着すると、すでにファーヴェルが復元を終えて出撃ゲートにつこうとしていた。

 エイジスのフェアリス部隊のプロームはすでにいない。

 「え、なんでみんなが?」

 気づいたハルカがコクピットから声を発する。

 「来るわ、馬鹿!そもそも俺らがここに来たのはケイオス駆除の支援のためなのに、休んでられるか!」

 カナタが叫び返すと、それぞれプロームを復元させ、出撃ゲートについていく。

 出撃ゲートに着くなり、シュウは通信ポートからブリッジへと通信を繋げる。

 「こちら、黒曜よりシュウ。ブリッジ、聞こえたらイツキ陛下と話をさせてくれ」

 告げると、間もなくイツキから通信が返ってきた。

 「ブリッジより、イツキです。なぜ皆さんが?」

 戸惑うイツキに対してシュウがため息をつく。

 「イツキ陛下、緊急事態を教えてくださらないのは困ります。これでは何のために来たのかわからない」

 「ですが…」

 「無礼を承知で失礼します。あなた達は遠慮が過ぎる。アナンさんもユイも言ったが、ケイオスはすでにあなた方4人だけで抱える問題でもなければ、フェアリスだけに頼る問題でもない。今、同じ惑星で生きてるなら共有して当たらないといけない問題、違いますか?」

 怒気をこらえながらシュウが理詰めで話していく。

 「はっきり言うのであれば、人をお客様扱いするのも大概にしてください。応援しに来たのに拒まれる身にもなってくれ」

 感情を表したシュウの訴え。

 ヒュウ、とハヤトが口笛を吹いた。

 「完全に同意だ。水臭いにも程がある。こっちはようやく正々堂々と手伝えるとうずうずしてたんだ」

 「そうそう」

 「危険も何もお互い様だし」

 ハヤトの言葉に他の者が同意していく。

 「おじ様」

 ユイが静かに呼びかける。

 「今までワタセ家の皆さんは人類の中で孤立していたと思います。だからでこそ、自分たちで何とかしてこないといけなかった。他者に依存しないその姿勢はとても尊敬します。ですが、協力したいと歩み寄った人の気持ちまでどうか拒まないでください」



 プローム乗り、チームエウロスのメンバーから言われた言葉にイツキは絶句していた。

 「いやはや、みんないい根性してるわ…」

 指揮官席に座りながらケイトが嬉しそうに笑う。

 「ふあぁ、お父さんが圧倒されてる」

 ナノがイツキとモニターを見比べながら感心する。

 ヤナギがイツキの方を見つつ、問いかけた。

 「イツキ殿は以前言ってくださったことがありましたな。この世界が人とフェアリスが共に協力し合う世界であってほしいと。ですが、ここで言う“人”とはワタセ家の皆さんだけを指すものでしょうか?」

 ヤナギはワタセ家の4人がフェアリスと共に選択する道を取ったことで、人類から孤立することになったことをずっと気に病んでいた。

 けど、様々なことがあって、状況は変わったのだ。

 だからでこそ、差し伸べられた手を拒まないで欲しいと、もう4人だけで背負わなくてもいいのだとヤナギはわかって欲しかった。

 ふっとイツキは微笑むと首を振った。

 「そうですね、人は何も僕達だけではありません。そして、僕達だけで背負えるはずもない」

 呟きつつ自嘲する。

 そして、表情を引き締めると、イツキは一息吸った。

「各員注目!」

 号令がケートスのブリッジ、格納庫、居住区、移動中の飛空挺、人とフェアリス、双方のいる場所に響く。

 「これより、エイジス代表、ワタセ・イツキの名を持って惑星オービス、大規模ケイオス駆逐作戦を発令する!作戦期間は長期間に渡り、苦しい戦いになることが見込まれる。よってフェアリス、人類双方の協力を持ってこの困難を乗り越えることを期待する!本作戦を承諾する者は了解の返答を!」

「「「了解!」」」

 ブリッジで、格納庫で、移動中の飛空挺内で、ケートスの各地で。

 フェアリスと人類双方の返答が同時に響き渡った。

 「多数の承諾を確認!これより、本作戦を開始とする!まずは要請のあった箇所への支援を開始する。直ちに出撃準備、各自戦闘配置!」

 「了解!」

 フェアリスも人類もそれぞれ慌ただしく配置につき、準備を開始していく。

 号令をかけ終わったイツキがふう、と息をつくと、ファーヴェルのコクピットへと通信を繋げた。

 「ハル、聞こえてますか?」

『聞こえてるよ。どうしたの?』

 イツキは清々しく微笑むと言った。

 「いい仲間と巡りあいましたね」

『でしょ?』

 父の言葉を受けて、とても嬉しそうに息子は微笑んだ。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

次の投稿は5/6を予定しています(昨日投稿分のあとがきで日付間違えてすいませんでした…)。

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