表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
CosMOS  作者: 螢音 芳
Chapter.4
PR
45/144

1. サザン貴族院官邸防衛戦

 エイジスに救援要請が届いてから1時間。ファーヴェルが到着してから30分。

 サザン貴族院官邸前では激しい戦闘が続いていた。

 様々な機体が交戦する戦場を白い機体が縦横無尽に駆け巡る。

 迫ってくる蔦を、飛ぶことなくバックステップでかわして切断。ひるんだところを、機体を回転させて一斉に薙ぎ、開いた道筋から飛行ユニットの性能を利用して加速。

 黒い蔦の一部に咲いた花、ケイオスの花弁にあたるところに見えたコアへ肉薄すると長剣で花ごと切断し、破壊した。

「ハル!」

 ノインが警告し、瞬時にレーダーに危険な箇所を示す。

 示された方向からバリケートに用いてた瓦礫が崩れる音が聞こえたため、機体を跳躍させ、そのまま飛翔。

 崩れた防衛線のプロームに襲い掛かろうとしていた蔦の大元の花弁のコアめがけて長剣を投擲して破壊する。

 他の蔦が剣を奪おうとする前にワイヤーで引き寄せ、戻ってきたところをキャッチした。

「大丈夫ですか?」

 ハルカがバリケードを守っていたプロームの側に降り立ちながら問いかける。

「あ、ああ、すまねえ!」

 プロームから中年の男性が応答し、起き上がると、周りのプロームと協力してバリケードの修復をし、防衛線を立て直していく。

 満足そうにハルカがその様子を見ていると、そこへ、黒に金の装飾が入ったプローム、黒曜を操るシュウが近づいてきた。

「よお、派手にやってるな。にしても、前と見たときとプロームが違うんだが」

「まあ、いろいろありまして……」

「ふうん。まあ、別にいいが」

 そこでシュウは言葉を切り、背後から近づいてきた蔦を熱を宿した大刀で切り裂いた。 

「救援感謝する。おかげで前線の士気が戻った」

 ケイオスの攻撃を何でもないかのようにいなしながら、シュウがハルカに礼を告げる。飄々とした口調や態度と共に頼もしさと真面目さが同居している。その様子にハルカは懐かしさを感じて笑みを浮かべた。

 この世界でもシュウは部隊長をしていると聞いている。チームでもリーダーを勤めていたぐらいなので、面倒見がいい性格をしていた。ここでもきっと頼られているのだろう。

「何かおかしいか?」

「いえ、何でもないです。少し懐かしいことを思い出して」

 地球でチームだったときのことをシュウたちが知らないのは知っている。こんなことを言っても困惑させるだけなのだろうな、とハルカは思った。

 だが、シュウから返ってきたのは意外な言葉だった。

「そうか。奇遇だな」

「え?」

「合衆国領土の島でやりあった後、サキとも話してたんだよ。マックスガイツ、アストラルと、そしてあの時の青い機体の並んでいるのを見て、どこか懐かしさを感じたって、な。お互い会ったのは初めてなはずなのに」

 ハルカが驚きで目を見開く。

 そう言えば、カナタもかなり前にB3が戦ってるところを見て、懐かしいと言っていた。

(何も全部覚えてないわけじゃない)

 全部知ってほしいとは思わない。けど、こうして地球でのつながり、その一片が見えただけでもうれしかった。

 そうそう、とシュウが思い出したように言う。

「その話をしたら、同じ部隊のレンとミナも会ってみたいと言っていたな」

「もしかして、ディザスター・ロアとフォロカル!?」

「お、おお。やけに食いつきがいいな」

 それもそうだ。ゲームだった時にはチーム内のバランス的にエニエマ、ディザスター・ロア、フォロカル、B3でよくフォー・マンセルを組んでいた。まさかシュウたちと同じ所属だとは思わなかったのだ。

「おそらく、あいつらもこの戦場で戦ってるはずだ」

 なら、戦っていれば会えるだろう。新たにチームメイトがいると聞いて、何とか状況を打開できるかもしれない、とハルカが意気込んだ。

 その時、話し込んでいた2機の間を、氷の矢が通過した。

 矢の行先を見ると、バリケードへ襲い掛かろうとしていた蔦が氷づけになっていた。

「そこの2人、話すのはいいけど油断しないように」

 氷の矢を放ったエヴァーレイクからサキが忠告した。

「「はい」」

(相変わらずサキさん、怖い……)

 サキはチームの副長的な役割でマネジメントをしたり、チーム内の気をひきしめてくれていた。その役割は惑星が変わっても顕在なのかもしれない。

 3機がいる通路の脇からエニエマが滑走しつつ、蔦を撃ち落としていく。

 今回は持久戦とわかっているからか、跳弾による狙い撃ちはなるべく避け、直接当てにいっていた。

 エニエマがブレーキをかけつつ、ファーヴェルのそばに横づけする。

「やっぱり、この量は多すぎる。私でもコアを落とせるのはいいんだけど」

 ユイの声は厳しそうだ。この戦線では補給がないのは辛いだろう。

(八方を全力で警戒してようやく維持してる状態だから補給にいくヒマがない。ところどころこっそり銃器系のプロームにはエネルギーを分けているけど)

 戦線を維持するなら、まずは補給できるタイミングを作らないといけない。

 ハルカが思案しているところへ、ユイがが心配するようにハルに問いかける。

「あの……ハル。おじ様とおば様、ナノはあの後だいじょうぶだった? 主砲発射のあと、バッシングがいっきにエイジスに向かったから」

(戦うことになるかもしれないとわかりつつも、心配してくれてたんだ)

 精神束縛を受けていた状態で別れたため、誤解されたかもしれないと思っていた。だからでこそ、ユイが心配してくれたことを素直に嬉しく感じた。

「みんな元気だよ。父さんも母さんもナノも。バッシングなんてなんのその、って言ってる。どうせ世界の大悪人だしって開き直ってるぐらい」

「そっか、みなさんらしい」

 嬉しそうにユイが言った。

 そして、あ、と何かに気づいたようにつぶやくと、ずい、とエニエマをファーヴェルに近づけた。

「あと、これだけは言っとくけど! お母さんのこと、ありがとう! ロストしたときの復活先をずらしたトリックを見破ってくれたって、聞いたから。だからそんだけ! じゃ!」

 お礼を言っているとは思えない剣幕で言うだけ言うと、エニエマは反対方向に疾走していった。

 ファーヴェル、黒曜、エヴァーレイクが取り残された形になる。

「あれって?」

 ユイの反応がよくわからずハルカが問いかける。

「なんだ、その……そっとしといてやってくれ」

「後で自分の首を絞めるぐらいなら、きちんと言えばいいのに」

 シュウとサキが困った妹を見るような気持ちでやれやれとため息をついた。



 ケートス内部のブリッジではファーヴェルのカメラから状況を分析していた。

「やはり、アナンさんの情報から予測していたとおり土地浸潤型ですね。再生能力が高い」

 うめくようにイツキが言う。コアが破壊された箇所があるものの、蔦を切り裂くだけでは、5分もあれば元通りに戻ってしまう。

「ですが、平均的なケイオスよりもコアがもろくできとるようですな」

 ヤナギが銃器武装のプロームがコアを破壊している様子を見て推測を述べる。

「コアを破壊しやすいのですが、その後をすぐに埋めるようにケイオスがフォローしています。これではキリがない」

 どうやってこのような進化を遂げたのかはわからないが、再生能力の高さが非常に厄介だった。このままではプロームの補給が追いつかずに防衛線が崩壊してしまう。

「あのさ、イツ君思ったんだけど、別にケートスを大陸まで到着させなくてもいいんじゃない? せめて射程圏内に入ることさえできれば、到着予測時間よりも殲滅行動は早められるよね?」

 ケイトに提案に、ふむ、とイツキが思案する。

「問題はどうやってコアの位置を全部捕捉するかなんですよね……」

 ケートスは索敵範囲が狭いことが弱点となっていた。ファリア大陸の攻略ではそれがネックになってしまったくらいである。

 イツキが考え込む中、新たな映像がケートスに送られてきた。



 サザン貴族院官邸より離れた位置にて、特殊上位部隊の隊員の黄緑色の乗り手であるレンと、朱色のプロームの乗り手であるミナが戦闘をしていた。

 黄緑色のプロームの火砲杖が各所のコアを撃ち抜くために砲撃する、が当たるのは一部だけで他は蔦を何重にも厚くして防がれてしまう。

「平面からの砲撃を読んでる。学習している感じだな、厄介な」

「コアの位置は捕捉できてるんだけどねー」

 ミナが困ったようにつぶやく。

 ミナが乗っているプロームは珍しいセンサー機能特化型のプロームだ。敵の位置の捕捉や弱点の割り出しなどの情報収集に特化している。対人戦においては、敵のセンサーを狂わせて命中率を下げるなどサポート的なことをすることを行うこともできる。

 2機が攻めあぐねていると、上空から声がかかった。

「よかった、見つけた!」

 2機のもとへ飛行ユニットを光らせながら、白い機体が降り立つ。

「ファーヴェル、だっけ?」

「エイジスの、だよね?」

 レンとミナが戸惑うように話し込む。すでに部隊にはエイジスから先行してプローム機が救援に来ていたことは聞いていた。

 レンとミナの反応からハルカがハッとする。

 懐かしさと嬉しさから、つい、以前のように声をかけてしまった。

「えっと、エイジス所属のハルカとノイン、です。ファーヴェルのプローム乗りです」

 名乗りを聞いて、レンとミナが驚く。

「ちょっと待った、ハルカってエイジスの皇子じゃないか、何だって直に」

「うちのお姫様と一緒なのかもよ。黙ってじっとしてられないとか」

「あはは……」

 レンとミナの推測にハルカがファーヴェルの中で苦笑いを浮かべ、ノインがモニターの中で言わんこっちゃないというように呆れた表情を浮かべる。

「と、先に名乗ってもらって失礼だったな。サザン貴族院特殊上位部隊所属、レン、ディザスター・ロアだ」

「同じく特殊上位部隊所属のミナ、フォロカルだよ。よろしく。あと、ユイから話は聞いてるよ、年同じくらいなんでしょ?だったら、かたっ苦しい言葉はなしで」

「というより、この場合敬語を使わないといけないのは俺らの方なんじゃないのか?」

 レンとミナがそれぞれ名乗り、レンの方が首を傾げる。

「別に、敬語不要ならそれで。こっちも助かるし、それに皇子言われても困るから」

 言いながらハルカは苦笑した。

 それよりも、同い年ぐらいだったことにハルカは内心で意外に思う。地球でのオフ会前に自分だけ年少な気がしていたのだが、そうではなかったらしい。

「そういえば、俺らのこと探していたみたいだったけど、何か用か?」

 レンの疑問にはっとハルカは気が付いた。そうだ、懐かしさから和やかな雰囲気になっている場合ではない。

「少し、補給できる時間を作りたくて、2人に協力してほしいんだ」



 数分後、ファーヴェルはディザスター・ロアを抱えてサザン上空を飛行していた。

「なるほど、ディザスター・ロアで空中から砲撃する、というわけか」

 ディザスター・ロアの出力を調整しながらレンが言う。

「うん、ミナのフォロカルから捕捉したコアのデータを送ってもらって、それで官邸周辺のケイオスを一時的に殲滅させて後退させる。その間に交代で補給してもらって前線を立て直してもらおうと思って」

『おっけー。捕捉した情報を送るよー』

 ミナから通信が入り、モニターにコアの位置が表示された。

 ディザスター・ロアは、旅団のルイが持つディザスター・ケインの兄弟杖だ。性能はケインに勝るとも劣らず、拡散砲などを精密射撃する際はロアの方が扱いやすい。

「ハル、あなたの役割はディザスター・ロアがきちんと当てれるよう姿勢保持をサポートし、発射の瞬間に衝撃で照準がぶれないようにするのです」

 ノインが、計算結果をモニターに表示させていく。

「ディザスター・ロアの拡散砲からの反動の予測数値はこのくらいで、そのために必要な機体の瞬間出力はこのくらいなのです。後は、あなたがどれだけ、ディザスター・ロアの乗り手とタイミングを合わせられるかです」

 決まったタイミングで引き金を引き、決まったタイミングでこちらもスラスターの逆噴射をかける。それは簡単なようで難しいことだ。ましてや、この成否によって戦線の維持がかかっているならば、プレッシャーで緊張するし、誤差も生じる。

 けど。

「だいじょうぶ。何とかなる」

 ファーヴェルからの言葉に、ディザスター・ロアのコクピットからレンは苦笑した。

 何の根拠もない自信。失敗することなんて微塵も考えてない、そんな様子が伝わってくる。

 そして、それはレンの方も同じだった。

(懐かしい、というには感覚が不思議と最近なんだよな。よくこんな感じで背中を預けたことがあった気がする)

 そんな感慨を抱きながら、レンはディザスター・ロアを構えた。

「落とすなよ」

「誰が。そっちこそ外すなよ」

 慣れたようにレンとハルカが軽口をたたきあう。

『じゃあ、カウントダウンいくよ、5、4、3、2、1』

 ミナのカウントダウンが0になった瞬間、空中のディザスター・ロアから拡散砲が放たれた。

 同時にファーヴェルの飛行ユニットが一瞬だけ強く光を発する。

 砲台替わりとなったファーヴェルとの誤差はハルカの体感的には、ない。

 ディザスター・ロアの拡散砲は照準通りにケイオスのコアを射貫き、官邸周辺一帯のケイオスを一時的に一掃した。

「ケイオスの反応、狙った範囲内での消失を確認!」

「すごいのです……!」

 ミナが結果を報告し、ノインが誤差やタイミングを計測した結果から感嘆の声をあげた。

 ミナのカウントダウンに合わせてディザスター・ロアが撃ったタイミングとハルカのファーヴェルがスラスターの出力を上げたタイミングの誤差は0.01秒以下。

 人力でここまでの誤差がないのがノインには信じられないほどだ。

(レンの方には地球での記憶はないはずなのです。それで急なコンビネーションにも関わらず、合わせられる。これが人のなせる技なのでしょうか……)

 そのまま、ファーヴェルはディザスター・ロアをフォロカルの側に下ろすと、機体でグータッチをかわした。



「敵が後退した!エネルギーが消耗している機体は戻ってきて補給を受けろ!」

 官邸で軍部総長のゲンが指示をとばしていく。

「全員、決して前線をあげようとするな!家族が帰る場所を取り戻したいなら、まずは維持に努めろ!」

『了解!』

 口惜しさ、疲労、さまざまな感情がありつつも、ゲンの指示に従って各部隊のプローム乗りから返事が返ってきた。



 一方ケートスでも、ファーヴェルとディザスター・ロアが見せた空中から拡散砲を撃つコンビネーションをモニターで映していた。

 映像を見て、ケイトが口笛を吹く。

「やるわね」

「さすがでございます、若」

「合わせた砲撃手も見事」

 出撃ポートから戻ってきたウコンとサコンがぬいぐるみ形でうむ、とうなずきあう。

 飛空挺で向かっても到着時間はケートスと変わらないため、ブリッジにてハルの様子を見に来たのだ。

 ファーヴェルとディザスター・ロアの連携を見て、イツキはあることをひらめいた。即座に通信士に指示を飛ばす。

「タイタスのミナトさんにつなげてメッセージを送ってください。例のものを打ち上げます。試作して通信目的で打ち上げていたものからデータが得られたので、これから本命を打ち上げます、と」

次の投稿は4/8を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ