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CosMOS  作者: 螢音 芳
Chapter.3
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7. ファリア大陸奪還最終作戦

※サブタイトル名間違えていたため、4/6に改稿。大変失礼しました(汗)。

 ファリア大陸でケートスでは破壊できないコアが出現したという報告は、エイジスに所属する人間、フェアリス双方を驚愕させた。

 即座にイツキは、コア破壊のために部隊編成を指示し、直にプロームにて撃破する作戦を立案した。

 作戦決行当日、ケートス内部の出撃ゲートでは、部隊が集められていた。

 部隊は2部隊、旅団の5人と、エイジス側のフェアリスの小隊である。

 基本的に付かず離れずで行動することになるが、部隊を分けておいた方が指揮系統や連携の面で有効だからだ。

 出撃前にカナタがハルカに声をかけた。

「まったく、皇子様なのに、お前も出るんだな。危険地帯なんだろ? 今回は」

「だからでこそ、自分が出ないと。それと、その呼び方はやめてください」

 心底嫌そうに言うハルカにカナタは苦笑した。

「で、お前は今回どっちの部隊に参加するんだ?」

 問われてハルカは少し悩む。

 元チームメイトと前のように連携しながら撃破していくのは楽しいだろうし、効率もいいだろう。だが。

「自分は、エイジス側の部隊に参加します」

「なんだ、一緒に来たら楽しそうだと思ったのに」

「魅力的ですけど、あくまで自分はエイジス所属ですから。修羅場を抜けた仲間でもありますし」

 ハルカがそう言うと後ろでウコン、サコンが目をうるうるさせる。

「若……」

「かならずや、背中はお守りします……ずびっ」

 さらに、部隊のフェアリス達が感極まってぬいぐるみ形のままハルカのところに殺到した。

 実態はないはずなのだが、精神体による圧なのか、ハルカが押し倒される。

「重い、みんな、重いって!」

 もみくちゃにされるハルカの様子を見て、カナタが腹を抱えて笑った。



 それぞれ、出撃する時間になり、各々のプロームを復元させて乗り込んでいく。

 そこへ、ハルカも自機を復元させて混ざる。今回はチーム戦をすることもあり、プロームをファーヴェルにしていた。

 気乗りしなさそうにノインが言う。

「やっぱり、これになるんですね」

「こっちの方がなんというか、調子がいいというか、久々のケートス奪還のときのメンバーだから、験担ぎ」

 やや言い訳がましくハルカがいうと、ノインが、ま、いいですけど、と素っ気なく返した。

「それぞれ、出撃スタンバイ願います」

 ケートス内部のブリッジの管制担当フェアリスから声がかかり、出撃ポートの定位置につく。

「あれ、その機体って、この間見たのと違くね?」

「白くて外見違う、武装型は同じ…バランスタイプなのも変わらなそうだけど」

 ケンジとリュウが興味津々で声をかけてきた。

「ファーヴェルでござる」

「若の決戦機でござる。こうでなくては」

 ハルカの代わりにウコンとサコンが胸をはるように言う。

 別に決戦機とか決めてないんだけどなー、と思いつつ、ハルカは苦笑した。

「それぞれ、出撃願います」

 管制官から通信が入った。束の間の雑談も終わりだ。全員の表情が引き締まる。

 出撃体勢をとりつつハルカは願う。どうか誰もロストすることなく、無事に帰ってこれますように、と。



「ゲートよりプローム部隊出撃しました」

 管制官の報告を受けて、ケイトがうなずく。

 その傍らでイツキは険しい表情をしていた。

「イツ君、そんな辛気くさい表情してたら、運気下がるよ」

 容赦のないケイトの言葉に、イツキが頭を振った。

「わかってはいたつもりなんですけどね。このペースでいけば、いずれはフェーズの進んだケイオスと相対することは」

 イツキは常に先のことを考える、それゆえに不安も見つけやすい。これも、想定していた事態ではあったのだろう。

 ハルカには、まだ出力が不安定なので、例の機構は使うな、と言っている。だが、ノインはファーヴェルで出撃することに不安な表情になっていた。

 不確定要素がいくつかあるのは心配だ、備えがきかなくなるから。

「何も起きないといいのですが」

 心配性な家長は一人、呟いた。



 ファリア大陸南端100平方kmにあたる箇所。それが、プロームでないと破壊できないコアのある地帯だった。

 予測地点に到達すると、そこは黒い血管のような物体で埋めつくされた地面、木々が広がっていた。

 風招のコクピットからアヤメが表情をしかめる。

「気持ち悪い……」

「これ、全部ケイオスなんだよね…」

 ルイがコクピット内で腕をさすりながら言った。

 ここまで侵食された光景を見るのは黎明の旅団勢は初めてだった。

 ケートス奪還の旅の折に見たことがあるエイジス部隊は警戒する。

 ここはすでに奴らのテリトリーだ、と。

「来る。総員、構え」

 静かにハルカが言うと、ウコン、サコンを始め、それぞれエイジス部隊が武器を構える。

 緊張した空気に、旅団メンバーも構えていく。

 間もなく遠くから、砂煙を上げながら蠢く黒い集団が近づいてきた。そして、空からは暗雲。よくよく見れば生き物の群体であるとわかる。

「マジかよ、多くね?」

 ケンジの表情がひきつる。さすがにここまで多いケイオスの群れは見たことがない。

「ノイン、ブリッジに通信。これから戦闘に入る」

 ハルカがノインに指示すると同時に、

 両部隊は、ケイオスの大群と激突した。

 ケートスのブリッジから通信士がファーヴェルからの報告を受け取った。

「ノインから通信、ケイオスとの戦闘に入った模様」

「上空のケイオスの掃討はこちらでも応戦するって伝えて。エネルギーが充填でき次第、2分おきに拡散砲発射。発射前は部隊に伝えるのを忘れないように」

「了解」

 通信士の報告を受けながら淡々とケイトが指示を出していく。

 モニター上では、両部隊がケイオスと乱戦している様子が映し出されている。ケイオスの数はケートス奪還のときと勝るとも劣らない。

「お母さん」

 ナノが心配そうにケイトのことを見上げる。

 フェアリス部隊はそれぞれ、イツキ考案のダイヤ半導体をベースにした集積回路を用いていた。

 ナノとしては、今のところ、何もできることがないのがもどかしいのだろう。

「ナノ、もしかしたら状況によっては、通信が使えなくなるかもしれないから、焦らず備えてて、ね」

 ケイトに言われてこくり、とナノは無言でうなずいた。



 アストラルが大剣に雷を宿しつつ、地面に叩きつける。すると、雷が正面から来ようとしていた獣の姿を強襲型のケイオスを焼き尽くしていく。

 反対に後ろから迫ってきたケイオスをマックスガイツが正拳突きでとらえ、そのまま衝撃でケイオスの身体が粉砕される。

 サコンがカナタとケンジの戦い方を見て呟く。

「ふええ、反則でござりますなぁ……」

「あれも、特殊武装持ちならではだからなあ…」

 ハルカが驚くでもなく言う。

「特殊武装ってあんなに強いものなら積んでみたほうが……」

「それはやめといたほうがいいよ。使い勝手がいいもんじゃないから」

 早速真似しようとしたフェアリスをハルカが諫めた。

 本来特殊武装は、武器に特殊効果を追加するぐらいなものであんなに都合よく雷だの炎だの氷だの衝撃波だの飛ばせるようなものではない。実戦で使うにはきちんとどれぐらいエネルギ―を蓄積して、どのくらい隙ができてしまうかを理解していないといけない。同じように特殊武装を試そうとして失敗した中堅者が山ほどいるのをハルカは知っている。たとえば、特殊武装に頼りすぎて、途中でエネルギー切れして倒れていく者とか、エネルギーを蓄積できずに技に昇華できなかった者とか。

「自分の戦い方と性格を理解して戦った方がよっぽど賢いと思うよ、清澄とか」

 ハルカが示すと、脇の方で水色のプローム、槍の武装の清澄がケイオスを複数に相手どっていた。一体が突撃してそれを槍の柄で受け止める。その柄が突然3つに分かれたかと思いきや、清澄が加速してケイオスの脇をすり抜けたときには、ケイオスの身体が2つに分かれていた。そして、3つに分かれた槍の端をもって、1体に向けて突き出すと、元のリーチよりも長く伸びて、ケイオスの身体を貫く。よく見れば、3つの槍の合間にワイヤーが見えた。

 見事な武芸に感心しつつ、ウコンが質問する。

「若、あれは」

「あれは三節槍。部品をワイヤーでつなげてて、槍としても使えるけど、ワイヤーを使って、敵を切り裂くもよし、本来のリーチよりも長く攻撃するもよし、いろいろ活用ができる便利な武器だよ。敵との距離の取り方がうまいリュウさんだから使える武器だけど」

「なるほど、考えるものですなあ……っと!」

 ウコンに迫ってきたケイオスを他のフェアリスが壁を作り出してカバーし、そこをサコンが鎖鎌でからめとって捕縛し、そして、ウコンが斧で叩き潰した。

「ウコン、話に気を取られすぎだ!」

「すまん、すまん」

 サコンが怒り、ウコンが悪びれた様子もなく謝る。

「なんだ、そちらさんの連携も見事じゃないか」

 カナタが感心したように言う。

 確かに、とハルカはうなずいた。ケートス奪還戦の時に比べれば、互いにフォローしあうようになったと思う。

 いざというときカバーしようと思っていたが、まだ必要なさそうだ、と思っていたハルカのところへ2体が挟み撃ちしようとせまる。

 1体を体を反らしてかわしつつ、剣で切り裂き、さらに迫ってきた敵を機体の姿勢を戻す勢いを利用して回し蹴りで粉砕した。こんなことで動揺も消耗もしない。

「最低限の動きで撃破してる。消耗の少ない長期戦向きの戦い方だね。基本と言えば基本だけど」

「…一番真似しづらい気がする」

 ハルカの戦い方を見て、リュウとアヤメがぼそりと呟いた。



 劣勢にならないものの、ケイオスを駆逐すれどもキリはなく、なかなかコアまでたどりつけない。コアの位置も以前探索した位置からずれているので探さなければならず、けどケイオスに邪魔されて探しづらい。そんなジレンマな状況で消耗し、ジリ貧と言ってもいい戦況となっていた。

 物量差に、カナタがアストラルのコクピット内でエネルギー残量を確認して焦る。

「まずいな、このままじゃ…。ルイ、ケインはまだ撃てるか?」

「撃てるけど、数発が限界」

「だよな」

 かれこれ1時間ぐらい戦闘しているのだ。補給が前提の砲撃手にしてはよくもっている方だと思う。

 カナタ自身も特殊武装を使用した攻撃はあと2発ぐらいが限度だ。

 ケイオス討伐でこんなに長丁場になったことはない。対人戦でも1時間もかかる前に終わらせている。

 こんなに消耗しても終わりが見えない戦闘はカナタたちにとって初めてだった。

 それだけここのケイオスの数が異常ということであり、戦争に明け暮れた他の陣営の軍隊であれば、ここまで持たなかっただろう。

(退却を呼びかけて体勢の立て直しを図るか、いや……?)

 多少は進軍している、が、このまま退却すれば元と同じぐらいまで前線を戻される可能性は高い。ならば、安易に撤退することも考えがたい。

 黎明の旅団勢に対して、驚くべきはエイジス側のプローム部隊だ。消耗している様子がみられず、同じペースで撃破を続けていた。

「よいしょ!」

「ウコン出すぎるなよ!」

「わかっている!」

 ウコン、サコンともに長く戦っている自覚はある。ただ、どんなに動いても消耗を感じず、闘志が落ちないことに違和感を感じていた。例えるなら、誰かからエネルギーを分けてもらっているかのような。

 部隊のバランスが崩れないようフォローしつつ、ファーヴェル内でハルカはあるものを待っていた。その表情にはいつものプローム戦と比べて珍しく、やや疲労が浮かんでいる。

「ハル、解析が終わったのです、敵の湧き出るポイント、密集地帯からコアの予測位置を割り出せたのです!」

 ノインからの報告を聞いて、ハルカはうなずいた。きた、と。

「わかった。ケートスに通信開いて。反撃に出よう」



『ケートス、聞こえてる?』

「聞こえてるわ、こちらケイト。何かあった?」

 急に入ったハルカからの通信にケイトが対応する。

『今から指定するポイントにコアがあると思うんだ。そこに向かってケートスの拡散砲を打ち込んでほしい』

 ハルカからの提案を聞いてケイトが困惑する。

「え? でも、コアにはケートスの拡散砲では……」

 その時、イツキがハルカの意図に気づいた。

「分析官。今いる地域のケイオスのコアからの再出現予測は?」

「えっと、だいたい15秒です。先ほどからの戦闘データですと、そのぐらいで再構成を完了させてます」

「だ、そうです、ハル。撃ってから15秒以内で仕留めるつもりで各機に働きかけてください。発射のカウントダウンほしいときは合図を」

『了解、ありがとう!』

 そう言うと、ハルカからの通信が一旦切れた。

「ふーん?」

「なんですか、ケイトさん?」

 にやにやとしてるような、ややふてくされているような、そんな中間の表情をケイトは浮かべている。

「ずるいなあ、父親と息子の関係って。この間黙って二人で出かけてたこともあって、なんとなくそう思っただけ」

「なんですか、それは。単に任せるべきものを任せただけですよ」

「はいはい」

 言葉とは裏腹に嬉しさが滲み出てるイツキに、ケイトは微笑んだ。




「みんな、疲れてるけど聞いてほしい。今からケートスから拡散砲を撃ってもらって、コアまでの道を切り開いてもらおうと思う。コアまでの道が開いたら、再出現する15秒までの間に各自分散してコアを破壊する」

 ハルカが言うと、それぞれのプロームのモニターにコアの位置が映し出された。

『これ、本当なのか?』

 カナタが問いかけると、ハルカがうなずいた。

「戦闘しつつ、ノインに出現箇所と密集地帯から場所を割り出してもらいました」

 ひゅう、とケンジが口笛を吹き、いつの間に、とリュウが呟く。

『作戦はわかるが、コアの数が多い。仕留めきれるのか?』

「できます」

 ハルカが即座にうなずく。

 部隊としての力量を信じていて、できないなんて微塵も考えてない。

 そんなハルカの言葉に、くっとカナタは笑った。どっちにしろここで駄目なら撤退しかないのだ。ならばやってみるしかない。

『わかった。のってやるよ皇子様。どんな風に配置したらいい?』

 カナタの言葉にハルカが一瞬眉間にしわを寄せるが、口を開く。

「ここから近い位置をフェアリス部隊それぞれコア1つに対して2機ずつで、遠い箇所をカナタさん、ケンジさん、アヤメさん、リュウさんで1機1つずつ。ルイさんは、再出現までに撃破できなかったところのフォローを。俺は今から切り抜けつつ、ここから一番遠い場所のコアへ行きます」

 説明を終えると、了解、と返事が返ってきた。

「ケートス、今から1回拡散砲を撃って。それを合図に、各機移動を開始。そして、5分後に拡散砲発射を。30秒前になったらカウント全機に伝達よろしく」

 了解、とケイトから返事が返ってきた。

『じゃあ、いくわよ。3、2、1、斉射!』

 ケイトの号令とともに周囲を光の柱が焼いていく。光が収まるか収まらないかというところで、ファーヴェルは背中のスラスターを全開に出力をあげる。白い光の粒子のようなものをまき散らして、残像が見えそうな速度で前進していく。

 他のプローム機もなるべく、拡散砲の余波を受けないようにしつつも15秒内で撃破できる位置まで移動していく。

 それぞれ、進路に邪魔なケイオスだけ倒し、先に進む。各機が視界にコアを捉えた。

『カウント30』

 ケイトの声がファーヴェルのコクピット内に響く。

(距離ぎりぎりだけど、間に合うか……?)

 焦りながらも、冷静にケイオスを捌きつつも速度は緩めない。

 そして、ケイトがカウント0を告げる。周囲を先程と同様、拡散砲の光が埋め尽くした。

 今まで密集していたケイオスが焼かれていく。

 拡散砲の光がおさまると、各機コアへと突撃する。

 アストラルの大剣が。

 マックスガイツの拳が。

 風招の双剣が。

 清澄の槍が。

 ウコンとサコンの斧と鎖鎌が。

 それぞれのフェアリスの武器が。

 確実にコアを破壊していく。

 拡散砲の光が止み、各機がコアを仕留めていく中でファーヴェルは全力で最も遠いコアへと疾走する。が、コアの周囲からはすでに複数のケイオスの頭部が出現しようとしていた。

 (やむを得ない)

 父からこの戦闘で使うなと言われていた背中の機構を使って加速をあげ、剣を突き出し、そのままコアへと突き抜けた。

 コアの破砕音が響き渡る。そこへ出現したばかりで身体の崩壊が始まっていないケイオスが迫る、が。

 ディザスター・ケインの砲撃がそれらの身体を貫いた。

 周囲にケイオスの気配を感じなくなり、静寂が訪れる。

「ケイオスの気配を感じません。完全に目標地点のコアを破壊しました」

 ノインからの報告をうけ、ようやくハルカは息を吐き出した。

「おーい、無事?」

「ありがとうございます、ルイさん」

「どういたしまして。お礼は今度、噂のプリンとかでよろしく」

 ルイが明るく言い、ハルカは苦笑しながら返答した。

 ふっとケイオスが去って静まり返った荒野、その方角へ視線を向けると、その先には。


 地平線の先、地面、植物に至るまで果てしなく真っ白に染まった大地が広がっていた。

続きは4/3を予定しています。

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