……まあ、想像通りですけど
「むむ…」
部室に入ると、先輩が何やら難しい顔をして唸っていた。
「どうしたんですか?あ、また落ちてたお菓子食べたんでしょ。駄目ですよお腹壊しちゃいますから」
「そんな事しないよ!てかまたって言うなよやった事ないよ!」
先輩の抗議をサラッと流し、僕は定位置の席に着く。
「大体、君はいつもいつもそうやって私を弄るけど、クラス内では一応知的キャラなんだからね⁉︎」
と先輩が何かを喚いていた時。
コンコン
「ん?来客なんて珍しいな。後輩クンよろ」
「はいはい」
ガチャ
ドアを開けると、学校だというのにエプロンを着けた三つ編みの女生徒がこちらに微笑みかけていた。
「こんにちは」
「こんにちは。先輩に何か用ですか?」
この人は料理部の二年で、先輩と同学年だ。……何処かのへっぽこ先輩とは大違いで、優しくてスペック高いけど。
「何かわかんないけど後輩クンに馬鹿にされてる気がする」
「全くもって気の所為ですよ。…それで、何でしたっけ」
「あ、うん。料理部でクッキー焼いたんだけど、予想外にいっぱい出来ちゃったから配ってまわってるの」
三つ編みの先輩が持っていた袋を差し出す。
「わあ!【料理部印】のクッキーじゃないか!な、いいのかいこんなレア物を貰っても!」
「レア物……?だって、こんなのいつも作ってるよ?」
「チッチッチ、わかってないなぁ。料理部の料理はその性質上どうしても美味しくなってしまう。その中でも特に絶品なのはやはりお菓子類なんだ。だから【料理部印】の付いたお菓子は水面下での獲得競争率が異常に高い。さらに、さらにだ!いつも作り終わったお菓子をどうしてるか覚えてるかい?」
「え?皆で食べてるけど…」
「そう、そうなんだ!作ったお菓子を、あろう事か作った人達が食べてしまう!だから市場に出回る数が圧倒的に少ないんだ!!それを、それを本当にくれるって言うのかい⁉︎」
「う、うん」
「っしゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
「………なんかすみません」
「う、ううん、そんな、こっちこそ、こんなに喜んで貰えて良かったです」
若干引き攣った笑みを浮かべる三つ編みさんを片目に、早速貰ったクッキーをもきゅもきゅと頬張る先輩。
「いやー私もあらゆる手段を全て使って入手しようとしたんだが…結局手に入れられなくってね。よもやこんな形で食べられるとは…っ!」
まさに感無量…!と涙を流しながらそれでも食べる手を止めない先輩を、僕と三つ編みの先輩は呆れながら見る。
「この人、クラスでもこんなん何ですか?」
「……………………そんな所が可愛いんだよ?」
先輩が難しい顔をしていたのは、入手出来なかった直後だったからなんですかね?




