第2章 奈菜と出会ったコンビニ(その36)
「だって、黙ったままで付き合っても、そのうちにお腹も大きくなるし、いずれは分っちゃうでしょう?
それだったら、最初からちゃんと話しておいたほうが後で喧嘩しなくて済むかなって。」
奈菜はそのように説明をする。
「ちょっ、ちょっと待ってよ!・・・・・・・。
て、ことは、奈菜ちゃんはそのお腹の子を産むつもりなの?」
哲司にはそのように聞こえたから、その点を確認をする。
「それでいて、僕と付き合うって言うの?」
それが本心なら、とんでもないことである。
確かに、哲司を含めて、今の若い男は、自分の「彼女」の過去についてはあまり関心は無い。
過去にどんな男と付き合っていようが、今のこの時点で「きっぱりと別れている」のであれば、何ら問題ではない。
今からが大切なのであって、知り合う前のことは、「知ったことではない」というのが本音だ。
だが、その昔の男との間に出来た子供がいるのであれば、やはりそれは別なのである。
その男とは別れていても、その男の血を半分は受け継いでいる子供とは、そう簡単には別れられないからだ。
例えその子供と一緒に住んでいなかったとしても、やはり子供への思慕は切り捨てられるものではない。
そのような女と付き合うと、どんなに「これからが重要で、過去は問わない」と考える男でも、常にその前の男の影を感じることになる。
「もし、そうして欲しいって頼んだら、てっちゃんは・・・・・・・・?」
奈菜は、哲司の問いかけを否定しない。
「やっぱり、私と付き合うのはやめにする?」
それでいて、逆に訊いて来る。
「・・・・・・・・・・」
哲司は答えられない。
いや、答えたくないのかもしれない。今の気持のままでは。
「お爺ちゃんからは、そのことについて何も言わなかった?」
奈菜がカウンターの向こうにいるマスターに視線を送りながら言った。
「そのことって?」
哲司は奈菜の言っていることがわからない。
「てっちゃんが、うん、って言ってくれるのなら、って話。」
奈菜は意味ありげな言葉を吐いた。
(つづく)