壊れた鳥籠 9
「しかし、一週間とは……神林の巫女も酷い奴じゃの」
ちょうど一週間経ったということを澪に宣告されたその日も同様だった。
澪がいなくなった後、薄暗い空間に僕と実体化した神様だけが取り残されたのだった。
「……はぁ」
「じゃが、逆に考えればまだ、一週間。せっかく監禁したのに一週間で開放するわけもあるまい。そうなるとまだまだ序の口……いや、まだ、本番に入ってさえいないのかもしれんの」
神様は一人で勝手なことを言っている。
そんなことはわかっている。一週間。確かに一週間で開放なんてのは考えていない。
じゃあ、一体いつまで監禁されているのだろうか?
あと一週間? それとも一年? 十年? それとも……
確かに、最初は終わりの見えないこの状況に恐怖を感じた。
だが、すぐに気付いたのだ。
きっと、一ヵ月後にはこれは終わる、と。
そう。俺が毎回死ぬはずの日、俺の最期の日である一ヶ月後には何かあるのだ。
それまで我慢すれば、きっとどうにかなる、と。
それはある意味では自分に対する言い聞かせであり、また、推測でもあった。
というか、そうなってほしい、という希望が大分あったのだけど。
「ふむ。まぁ、確かに。一週間経ったから、三週間後か……三週間もすれば、何かしら、あるかもしれんからの」
相変わらず僕の考えを勝手に読み取ったようで、神様が人差し指を口元に当てながら、人事のように言う。
「じゃが……状況が状況じゃからの。もしかしたら、今まで通りはいかんかもしれん。その場合、お主がこの状況から開放されるのはいつになることやら……」
思わず僕は神様の方を向いてしまう。
「え……ど、どういうこと!?」
「じゃからのぉ……お主は一カ月後に今までと同じように死ぬことはない、と言っておるのじゃ」
「そんな……じゃあ、何か? 僕はずっと、澪のペットのままで一生を終えるっていうの?」
神様は何も言わずに俯いてしまった。
澪のペット……もはや僕は人間ですらなくなってしまうというのか?
それはどう考えたって死よりも恐ろしい……いわば生き地獄と言ってもいい状態じゃないか……
その時、崩壊をギリギリで踏みとどまっていた僕の精神が、大きく揺らぐのがわかった。




