壊れた鳥籠 2
「痛っ!」
一週間前。
僕は三度目のあの感覚を味わうことになった。
石畳に思いっきり背中をぶつけるあの感覚だ。
「いたた……あ、ああ。そうか……ここか」
僕は痛む背中をさすりながら起き上がって確認する。
ボロボロの本堂。そして、荒れた境内。
間違いなくボロ……ではなく、小石川神社だった。
「おお、起きたか」
少し離れた所に着物姿の白髪の少女。
神様が相変わらずの表情で僕を見ていた。
「あ、ああ……はぁ……」
「ん? どうしたんじゃ? 溜息などついて」
「……そりゃあ、ねぇ?」
これで三度目。
幼馴染に殺されるのはこれで三度目だ。
蘇るのは二回目だが、まさか、夢、杏、そして、翼にまで殺されるなんて……
さすがの僕も限界だった。
「どうした? そんな風に俯いていても始まらんぞ?」
「……わかっている。でも……なんかもう疲れちゃったよ」
「疲れた? 何を言っておる。困るんじゃよ。ワシとしても。せっかく、よかれと思ってお主に機会を与えておるのに、そんな風に言われては」
そりゃあ、神様の方ではそうかもしれないが……
そもそも、僕は夢に殺されてそのまま死ぬ運命だったのだ。
なのに、この自称縁結びの神様が、僕がこのボロ神社にお参りした褒美とか言って、僕を何度も生き返らせている。
確かに生き返れたのは嬉しい。
でも、その結果はどうだ?
夢だけじゃない。杏にも。増してや、親友だと思っていた翼にまで殺された。
既に僕の人間としてのメンタルはボロボロ、瀕死状態だった。
「……でも、もう疲れたんだよ」
神様も困ったように僕を見る。
僕だって困る。もう、何もやる気が起きないのだから。
「……まぁ、お主の気持ちもわからんでもない。じゃが、だったら、なぜ、そこまであの幼馴染四人に固執する? よいではないか? それ以外の女子でも。要はお主が誰かとくっ付けばよいのじゃぞ?」
「女子……つまり、女の子だったら、誰でもいいの?」
「そうじゃよ。誰でもいい。たとえ……神で、あってもな」
「……は?」
思わず神様の言った意味がわからなくて僕はそちらを見る。
白髪の美少女はなぜか少し顔を紅くして僕を見ていた。
「……あ、ああ。そう。うん。そうだね……まぁ、この際誰でもいいよ。ホント」
「そ、そうか? な、ならば……その……」
神様はなぜか僕の方に近寄ってくる。
なんだ? この反応? この神様、僕をからかっているのか?
だとしたらいい加減にしてほしかった。
僕はもう限界なんだ。そんなお遊びに付き合っている暇はない。
僕はつい神様を睨みつけてしまう。
「な、なんじゃ? そんな怖い顔をして……」
「……からかっているのならいい加減にしてくれよ。僕はもうそういうの付き合ってられないから」
「からかっ……わ、ワシはただ、お主が疲れていそうだから……」
「ああ。そうだよ。僕は今疲れているよ。ホント、誰かに相談したいくらい――」
……ん?
相談?
そうだ。なんで気が付かなかったんだ。相談だ。
僕は思わず立ちあがってしまった。




