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死の足音が聞こえる 7

 そして、その不安は、すぐに現実となって僕に降りかかってきた。


 杏はそれから、僕を監視するようになったのだ。


 僕がどこにいても杏は僕を見ている。


 本当は見ていないときもあったのかもしれないが、見られている感じを受けるのだ。


 そして、携帯の管理。


 杏によって、僕の携帯は管理されるようになってしまった。


 管理、というか取り上げである。家の中で目を離した隙に取られてしまったのだ。


 なので、僕は誰に電話をかけることもできなくなってしまった。


 最初は女の子だけだったのが、次第に男の子と会話も禁ずるようになってきたときは驚いてしまった。


 なので、僕は少しずつ杏以外の人間と会話することができなくなってしまった。


 また、杏は結局、それから一度も家に帰らなかった。


 僕が少しでもそのような意味のことを口にすれば杏は即座に不機嫌な顔で僕を睨みつける。


 それ以上は何もいえなかった。


 あの、まるで僕を飲み込むようなドス黒い瞳を思い出してそれ以上強くいえなかったのである。


 そして、夢の方は学校に来なくなった。


 心配だったが、杏の監視下のため、夢のことを見舞いに行くこともできなかった。


 よってその後三週間、家でも学校でも、僕は完全に杏の監視下だった。


 そして、ついに僕の命日。つまり、僕が夢に殺された日がやってこようとしていた。


「明日、じゃな」


 神様が頭の中で呟く。


「……ああ」


 生気のない声で、僕は返事をした。


「どうした? なぜそんな元気がないのじゃ?」


「……当たり前だろ」


 連日の杏の監視下、そして、杏の無言の圧力で、僕は完全に辟易してしまっていた。


「まぁ、普通の人間はそうじゃな」


「……はぁ。どうしてこんなことに」


「そりゃあ、杏がハズレのカードだったからじゃ。わかったじゃろ」


 確かに。


 こんな風になってしまった以上は、杏のことを多少憎まないわけにはいけない。


 だからといって、杏をハズレのカードと言うことはできないけれど。


 杏は僕の大切な幼馴染なんだから。


「ホント、お主はお人よしというか……まぁ、そこがいいところなんじゃろうが」


「……そうだよ。だから、放っておいてよ」


「そうじゃな。ホントなら、こうやってワシと話すことさえ、杏には禁止されているんじゃからな」


「……まぁ、そうだね」


「くくく。明日が楽しみじゃ。せいぜい、頑張ることじゃな」


 あざ笑うような笑い声を残して、神様の声は聞こえなくなってしまったのだった。

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