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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第6章 辺境弱小ダンジョンの収穫

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5.王命ですと?

 その知らせが届いたのは、秋の半ばだった。


「ミリちゃん先輩、大変です!

 ビレン領に王命が出ました!」


 飛び込んできたヴァネの間延なしの声が、事の重大さを告げていた。


 仕事中だったディオさんも呼んで、自宅で話を聞く。


 ビレン領に王命が出たのは昨日。

 今日の午前中に、コンチェッタ公爵を共同で運営するパン屋の件で王都に行ったヴァネが、公爵からその話を聞き、急いで知らせてくれたのだ。


 王家が存在を知っていたかも怪しいビレン領なので、当然王家が使用できる転移陣はなく、この情報は恐らくホーさんのところにもまだ届いていない。


 まずは知らせなきゃ。

 取り急ぎ3人で盆地に転移し、畑作業中のホーさんをつかまえた。


「何? 雲が出てきたから、雨降る前に刈り入れやっちゃいたいんだけど」

「いや、それどころじゃないから!」


 強引に休憩小屋まで引っ張ってゆき、昨日王命が出たことを伝えた。

 ホーさんの反応は、のんびりしたものものだった。


「王家からの使者は馬で来るからさあ、そんなに焦んなくても大丈夫。

 多分ここに着くのは、早くて冬の初めだね。

 んで、王様、何だって?」

「急いでここに来たから、それはこれから!

 ヴァネ、お願い」


 ヴァネがキリッと居住まいを正す。


「わかりました。

 王命は、領地替えの命令だということです」

「へえ。どこに行けって?」

「中西部のヒーロン侯爵領近くですね。

 2年前に不祥事で廃爵になった旧子爵領だそうです」

「こちらに落ち度がない場合の王命による領地替えは、たしか昇爵が慣例なはずだから、おいら子爵様ってことかあ」

「え? そうなんですか?」

「あれ? 知らなかった?」

「はい……。すみません、勉強不足で……」


 シュンとするヴァネに、いやいや、とホーさんは手を振った。


「ふつうは領地替えとかないから、知らなくて当然だよな。

 ほら、おいらは親父が叙爵してここに来たから知ってたけど。

 まあ、出世の話っぽいから焦んなくともいいかな。

 使者が来てから考えるよ」

「え? ホーさん、そんなにゆっくりしてていいの?」

「だって、まだ正式に聞いてないんだもん。動けないだろ?」

「それはそうかもだけど……」

「ヴァネッサちゃん、知らせてくれてありがとね」

「いえ」

「じゃあ、おいらは刈り入れするから。

 気を付けて帰りな、って転移だから大丈夫か。ははは」


 ホーさんは手をヒラヒラさせながら、休憩小屋を出ていった。


「まあ、考えてみたらそうでしたねー。

 使者が来てないんだから、動けないですよねー」


 ヴァネもいつもの調子に戻った。


「ただ、いきさつは聞いてきたので、その話はしますねー」

「いきさつ?」

「ブーちゃんがらみですー」

「はあ?」

「まあ、話はお風呂の後ということでー」


 緊急事態ではないとわかったヴァネは、話を聞きたがる私たちに「お仕事してくださいー」と言うと、受付に銅貨5枚を置き、ほんとに温泉に行ってしまった。


 ――出てきたのは、それから5時間後だった。

 ネーさんのサウナまで堪能してきやがった。


「王都の疲れがとれましたー」

「ご利用ありがとうございましたっ!」


 私たちはヴァネをディオさん家まで引きずってゆき、公爵から聞いた王命の背景を吐かせた。


 そのあまりのくだらなさに、話すヴァネもだんだんエネルギーを失い、最後には私たちは揃ってがっくりと肩を落としていた。


 第3王子こと王宮の豚ことブーちゃんは、こんなことしてた。


 ブーちゃんは、オークションで競り負けたことをきっかけに、古龍のうろこがどうしても欲しくなりました。

 オークションにはあれ以来出品されることはなく、冒険者に依頼を出しても手に入りません。

 そこで、ブーちゃんは、最近売り買いされたの古龍のうろこについて調ることにしました。

 そうしたら、お宝はどれも、「北西辺境帰りの冒険者」が売ったらしいことがわかりました。


 手ごたえに気を良くしたブーちゃんがさらに調べると、最近の王都の冒険者のお話から、北西辺境に訓練用ダンジョンがあることをがわかりました。

 冒険者の中には「訓練を終えれば、ギルドが秘匿するダンジョンに入れるらしい」という人もいました。

 これだ! ブーちゃんの目がキランと輝きました。


 お宝は手に入りません。ギルドは情報を知っていそうですが、怖くて手を出せません。でも、ありそうな場所はわかりました。

 そこで、ブーちゃんはパパに「あの土地ぼくにちょうだい?」っておねだりしました。

 激アマのパパは「いいよー」って簡単にオッケーして、早速、その土地を王家の持つ土地と交換する命令を出してくれました。

 めでたしめでたし。


 ――って感じらしい。


 お宝を売る際は出元を隠すという契約だったが、王家が調べれば周辺情報は出てくる。

 噂についてはアーノルドさんから聞いてたけど、ギルドは知らぬ存ぜぬを貫くという話だったから、そんなに気にしてなかった。


 でも、出元を隠してもギルドが否定しても、調べるやつは調べるし勘ぐるやつは勘ぐる。

 そして、よりにもよってあのブーちゃんがほぼ正解にたどり着いてしまったのだ。

 違ってるのは、お宝の出所が秘密のダンジョンじゃないってとこだけ。


 でもね、ブーちゃん。

 このダンジョンは子供のおもちゃじゃないの。

 あのディスり大会以来、なんとなく王都のご当地キャラっぽいイメージになってきて、ちょっと愛着湧いてきてたのに、おねえさんは残念だよ。


 でも、そのおもちゃ、私と家族のお家だから、どうするか考えなきゃなあ……。


「整理しよっか。

 まずビレン領の問題は、ホーさんが出世するって話だから、まあ、いい話だよね?」

「です。何もしてないのに子爵に昇爵するですから、断る理由はないと思うです」

「だよねー。ダンジョンだって観光資源ではあるけど、出世捨ててまで守りたいかっていうと、そんな大したもんじゃないと思うし」

「そもそも、王命なので断れないですー」

「あ、そっかあ」


 ホーさんの領地替え確定。


「となると、ホーさんが栄転してここが王領になったあと、私たちがどうするかってことか」

「ディオは残りたいです。

 ただ、王領になって税金が上がったら、リムズデイルに戻ることもあるかもしれないです」

「うん。それは商会やってるんだから当たり前だよね。

 ヴァネは、ここが王領になったら影響出ないの?」

「そうですねー。影響はゼロではないでしょうが、男爵領になる前は王領だったので、元に戻るだけだと思いますー。

 森を切り開くにしても遠すぎますしー」


 あれ? 開発する意味ないの?


「思ったんだけどさ、ブーちゃんが来たとして、お宝渡せば帰る?」

「あ、そうかもです!」

「いえ、ブーちゃんはもっと欲しがるタイプだって聞いてますー」

「そっちかあ……」

「温泉ダンジョンは、王家にとっては興味がないと思うので、特に手を出されることはないかとー。

 問題は、盆地の方でー、あのお宝をブーちゃんが手に入れたら、多分王位継承争いがおきると思いますー」

「ブーちゃんにそんな野心あるの?」

「なくても、お金目当てに誰かが担ぎ上げますー」

「うわー……」


 そのあと色々話して、私たちの目的は決まった。

 盆地のことを絶対に王子に知られない。

 その一点。

 

 コアちゃんたちや家族、ネーさんにも相談して、私はできることをひとつずつこなしていった。

 王子は、来るとしても来年になってからだろうが、使者の行動が読めないので、早めに動くことにしたのだ。


 まず、盆地への移動手段をなくした。

 幻想トンネルを封鎖して物理的な出入り口を断ち、転移陣も1個を残して、ホーさんの農作業終了と同時に撤去した。

 盆地を知る冒険者は、アーノルドさんの協力で他領に派遣してもらった。

 最後は、エルフの一件を思い出し、王子の目に触れないようにリリを温泉仕事から外し、リムズデイルのディオさんの商会で預かってもらうことにした。

 地元向け魔道具ショップを手伝うので、昼ごはんの魔石は商会持ち。


 ちなみに、1個残した転移陣はネーさんの通勤用。

 ネーさんを巻き込むことはできないので転移陣は全撤去の予定だったが、「一個残しとかな、あたしドラゴンで仕事行くことになるんやけど」の一言で撤去を免れた。

 この上にドラゴンまで出現したら、騒ぎが大きくなるの確実だからね。


 ホーさんの予想より少し遅れて、王家の使者は冬の半ばにやってきた。

 ビレント村は遠くて、魔物戦の時に使ったカメラで偵察することもできない。

 ホーさんは、発表のタイミングを見計らうだろうし、私たちが騒ぎ立てて話が広がるのもまずいので、私とディオさんは、使者の経由地となるリムズデイルからの知らせを待つしかなかった。


 リムズデイルからの知らせは、思ったより早くやってきた。

 ヴァネの表情が硬い。


「なにかあった?」

「はい」


 ヴァネはこくんと唾を飲み込んだ。


「……男爵が、王命を拒否しました」

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