表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第5章 辺境ダンジョンのやかましい周辺

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/85

12.ジジイ、やるじゃん

 私とリリが盆地の転移小屋を出ると、ホーさんの開墾地だ。

 急角度で立ち上がる山のふもとを縁取るように広がる森と、盆地中央の湖の間の土地は、

相当な広さがあるのに、ホーさんは一人でその半分くらいを開墾してしまった。


 今年の作業はもう終わっている。

 ホーさんが領主の仕事に戻ればカレル村長も少しは余裕ができて、家での愚痴もシャポさんに怒られる回数も減るだろう。


 目的地の塩山の爺さんコアに向かって歩いていると、視界の端の湖面で魚が跳ねた。

 全く棲んでいないわけじゃなかったらしい。これだけ広いんだからそれはそうか。

 春になったら、デビリンと見に来よう。


 塩山に近づくと、リリが「おじいちゃーん」って駆けだした。

 完全に懐いちゃったよ……。

 ギャーギャー言い続けるのも大人げないので、リリが行きたがるのを止めることもない。さすがに一人で行かせることはできないので、デビリンか「ケット・シーは神」の誰か(ジャンゴさん以外)といっしょならという条件で、遊びに行くのを許可した。

 温泉仕事があって、私とリリの休みが重ならないのだから仕方ない。


 そのおかげで爺さんの私への当たりもかなり落ち着き、私が質問してもちゃんと答えてくれるようになった。そう言えば「腐れダンマス」もしばらく聞いてないな。 


 今回の目的は、とりあえずまとめた訓練階層の叩き台についての相談だ。

 特に予算面。

 コアちゃんもリリも、「先輩」である爺さんの言うことには耳を傾けるはずなので、削れるところを指摘してもらって、なんとか2000DP以内に収めたい。

 でないと、じわじわ赤字を垂れ流す施設になる可能性が大なのだ。


 目的を話したら、爺さんは鼻で笑った。


『貧乏ダンマスは哀れじゃな。

 DPカネ貸してやってもええぞ? ヒッヒッヒッ』

「わー、お金持ちー(棒)」


 あんた今、塩しか持ってないでしょうが。千年遅い。


「ジジイジョークはいいから、説明聞いてよ。

 ね、リリ」

「うん。おじいちゃんお願い」

『もちろんじゃとも!』


 この爺さんの扱いは、私はもうベテランだ。

 

『――ふむ。わかった。 

 最低500DPは削りたいんじゃったな』


 説明を聞いた爺さんは、自信ありげに言った。


「うん。できそう?」

『できるに決まっておる』

「おお! さすがレベルⅣ知識」

『ふん、バカミリもそれは覚えたようじゃな。

 ワシから言わせれば、この計画はムダだらけじゃな。

 バカミリはまだまだ修行が足りん』

「いや、これ考えたのリリとコアちゃんだよ?」

『何!? リリが考えたのか!?』


 うおっ。念話で急に大声出すなよ。


「うん。そうだよ?」

『そうか、どうりでよくできておるはずだ。

 完璧じゃ』

「やったー!」

「いや、ムダだらけっていったじゃん!

 このままだと赤字垂れ流しになるからヤバいんだって!」

『何? それじゃあリリの体に悪いではないか!

 それを早く言え!』

「あ、はい……」


 そうか、赤字の話はしてなかった。すんません。

 爺さんは、リリに言い聞かせるように話しはじめる。


『いいか、リリ。

 これは素晴らしいが、ちょっと体に悪いんじゃ』

「そうなの?」

『そうじゃ。大きくなったら問題ないが、リリはまだ小さいから体に負担がかかるんじゃな』


 さすが年の功。説明がうまい。


『だから、じいちゃんが、リリが考えた階層を、体に悪くないように直してやろうと思うんじゃが、どうじゃ?』

「うん、わかった! ありがとうおじいちゃん!」

『よし。じゃあ、じいちゃん頑張る。

 そういうことでバカミリ』


 コロッと態度を変えて、爺さんは私をビシッと指さした。そういうイメージ。


『これから説明してやるからよく聞いておけ。

 まず、一番ムダなのは』

「あ、ちょっと待って!」


 私は慌ててメモを取り出し、爺さんの話を残さず書き留めた。


 超節約できた。ジジイすげー!


 爺さんは、まず、環境をシミュレートするための装飾をまるっと削った。


『ワイバーンの棲む崖なぞいらん。要は上空から襲ってくればいいんじゃから、ダンジョンの天井近くに止まり木でも作っておけ。

 森もいらん。森にこだわるんじゃったら、戦うエリアに何本か木を立てておけ』


 これであっという間に350DP節減。細々したところも削って追加でマイナス40。


『それから、なぜ階層を分ける必要がある?

 訓練なんじゃから広めの階層をひとつ作って、左右に分ければDPは6割で済むじゃろが』


 マイナス440DP。


「あとはモンスターも自前のが居るんじゃから、わざわざ作る必要はないな」


 ここはちょっと揉めた。

 冒険者は修行だから死ななきゃいいけど、デビリンには万が一でもケガさせたくないから。

 って言ったら、


『バカか、ダンジョンだったら結界があるじゃろが。レベルⅡの結界で包めばケガなぞせんわ。それでも心配なら、刃を潰した武器を使うなり、魔法障壁を張るなりすればいいだけじゃ。ケチりたいなら、冒険者に出力を抑える魔道具でも付けさせるんじゃな』


 とあっさり論破された。

 マイナス130DP。締めてマイナス960。2500DPの改装見積もりが1540になった! まさにジジイマジック!


『訓練用じゃから宝箱も必要ないし、これで完璧じゃ。

 ワシとリリの初めての共同作業じゃから、失敗したら許さんからな!』


 キモいからそゆこと言うな。

 あと、気になった単語がひとつ。


「そう言えば、宝箱ってどうやって出すの?」

『ん? 自分のところで生産できるアイテムを詰めて適当に置けばいいじゃろ。

 ワシの宝箱には、ミスリルやらオリハルコンやら、それは貴重な素材を入れておったから、バカミリにマネすることは不可能じゃがな!』

「はいはい、すごいね」


 でも、訓練施設とは言っても、すごく頑張った人には、何か出してあげてもいいかもしれない。

 もちろん、経営に影響ない範囲で、もらったらちょっと嬉しいアイテムとか。


 あれ? マニュアルに宝箱のこと書いてあったっけ?

 読んだ記憶ないんだけど。


「ねえリリ、うちのダンジョンの宝箱ってどんな感じ?」

「え? えと、それは……」


 目が泳いでますよ?


「リリ、何隠してるの?」


 ――聞きだした。

 途中から爺さんコアが大喜びで解説するので、リリのぼかしも意味がなかった。


 うちのダンジョンで宝箱の中に入れられるのは、ダンジョンパンのみ。

 いや、外で調達してくるとか、赤字覚悟でDPで複製するとかすれば、それ以外も入れられるよ?でも、宝箱ってそういうのじゃないからね。


 原因は、私に魔法の才能が一切ないこと。

 この世界では、魔法が使えないのは魔力が少ないせいで、使えなくとも何らかの属性傾向はあるのが普通らしい。

 つまり、才能が全くのゼロというわけではないのだ。


 もしちょっとでも才能があったら、宝箱に入れられたのは、水魔法なら薬、土魔法なら鉱物、火魔法なら剣と魔道具、風魔法なら弓と魔道具、あとはそれぞれの属性の魔石と魔導書。


 ところが私は、魔力は人並み以上にあったものの、才能の方が完全にゼロなので自前で出せるものはパンだけしかないのだ。

 転生の時に「魔法の才能はない」って言われたの了解したけど、まさかそれほどだったとは。


 コアちゃんは、私が傷つくと思って必死に隠してたみたいだけど、全然平気。

 死にかけ転生を乗り越えた私が、その程度で傷つくはずがないのだ。


 あ、だったら温泉の無料券でも入れておけばいいじゃん。それか、銅貨。

 うち、小銭ならいっぱいあるんだよ。

 別にダンジョン産っていう縛りはないんだし、もらったらちょっと嬉しいものだし、これで宝箱問題は解決っと。


 爺さんにお礼を言って、ダンジョンに戻る。

 コアちゃんに修正案を説明して、了解を得る。「先輩」案に感心していた。


 翌日、ギルドに行ってアルバートさんにプレゼン。ちょうどカーチャさんとマリアベルさんもいたので、ギルド出張所のお偉いさんにまとめて話せた。

 ついでに私がダンマスなのも話して、マリアベルさんの小さくない鼻声を久々に聞くことができた。


 お祭りから1週間で、しかも私が計画を出すとは思ってなかったアルバートさんたちは、すごく驚いたけどすごく喜んで、微調整しただけで計画を承認してくれた。


 いつもの冷静キャラに戻ったコアちゃんは、1日がかりで階層増設を実行。温泉階層の時の鬼気迫る感がないので、心穏やかに見ていられた。


 そしてついに、ダンジョン始って以来の冒険者専用階層が完成する。


「おお……」


 ダンジョンだ。少し狭いけど、まさにこれが私が思い描いたダンジョンというものだ。


 基本は陸上競技場2面くらいの広さの草原。右側の高い天井下の止まり木から、2羽のワイバーンが地上を見下ろしている。

 手を振ってみる。


「ギョー」

「ゲー」


 返事してくれた!


 左手はただの草原。計画にあった木もなく、壁際に座学用の小部屋あるだけだ。

 魔物は居らず、ここでの訓練は「ケット・シーは神」が担当することになった。デビリンはラスボスなので出番はしばらくなさそう。

 アーノルドさんたちに加え、何をするかわからないジャンゴさんにもテストしてもらって、問題なければ、すぐに利用開始となる。


 気に入った!


 これが後の世界最大のダンジョンへの第一歩だとは、私はその時気づいていなかった。

 とか、ちょっと言ってみたくなった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ