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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第5章 辺境ダンジョンのやかましい周辺

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3.くっちゃべる私たち

 ネーさんが迎えに来たので、塩の山を後にする。


「おじいちゃん、また来るね!」

『おお、待っとるぞ?』

「うん!」

「ま、あたしも暇だったら顔出すよ」

『お前は来んでいい』

「じゃあ、リリも来ないけどいいよね?」

『ぐっ……』


 同情はするけど、積極的に話したい爺さんではない。

 ただ、一時はレベルⅣまで進化したコアの話は貴重だ。

 さっきのダンジョン分割のデメリットとか、マニュアルにも書いてなかった。

 多分コアちゃんも知らない。


 リリがいれば、大きくへそを曲げることもないだろうから、おちょくりかたがた昔話を聞いてあげようと思う。


 古龍の背に乗ってネーさんの洞窟に帰る。

 これですよ、このファンタジー感!

 くさくさした気分も回復するってもんです。


「どうだったです?」


 ディオさんが興味津々で訊いてくる。

 

「うーん。長くなるからあとで話すけど、ざっくり言うと、なんかかわいそうだった。

 たまに顔出して話し相手をしてもいいかなって思った」

「かわいそうだったですか……。

 あ、ところで、リリちゃんどうしてコアと話せるです?」

「リリもコアだからだよ?」


 あっ! ……まあ、今さらか。


「家族だけの秘密だったんだけど、ディオさんはもう家族みたいなもんだから話すね。もうリリが自分で言っちゃったし。

 あのね……」


 私は、リリがダンジョンコアの分体であること、分体とダンマスの関係、ダンジョンコアの本体は別の場所にあること、そっちは家族にも秘密なこと、でもネーさんは見つけて勝手に入ってきちゃったこと、など一通りの情報を話した。

 ディオさんは驚きつつも、研究者らしい冷静さで、真剣にその話を聞いていた。

 そして、聞き終わった第一声が言葉がこれだ。


「ミリちゃんが子持ちだったです!」


 そこ?

 事実っちゃ事実だけど、驚くこと他にあるでしょ。

 ……。いや、考えてみたらあんまないな。他は、ディオさんなら、知ってるか想像つくかのどっちかだった。

 まあ、変に重く受け止められても困るから、私の隠し子(笑)に食いつくらいが丁度いいのかもしれない。


 ひとしきり追及した後、ディオさんは魔法契約を申し出てくれたけど、そこまでする必要はないよ。


「あ、そうだ。

 私がダンマスっていうこと、ホーさんが近々発表するはず。

 ダンジョンことを国に報告しちゃったんなら、もう知名度上げてお客さん呼んだ方がいいかって話になった。

 ユードラさんも言ってたけど、ダンマスが表に出るのって珍しいらしいから、こんなド田舎のことでも話題にはなると思うんだ」

「珍しいとかいう話しじゃないです! その話で持ちきりになるレベルです!」

「へえ。まあ、お客さん増えれば何でもいいや」

「温泉また拡張するですか?」


 ああ、そうなるか……。

 この前拡張したばっかなのに、もう一回はやだなあ。

 ダンジョン分割して村にもうひとつ温泉作れればいいんだけど、爺さんの話聞いちゃったら、そんなの怖くてできないし。

 そもそも、もう分割するお金ないし。


「やっぱし、発表時期ずらしてもらおう」

「ディオもそれがいいと思うです」

「あ、でも、仲のいい村の人になら話してもいいよ。そっちなら今と変わんないし」

「いえ、秘密は広めない方がいいです。

 その点ディオは、親しいのはミリちゃんの家族と村長とネー師匠だけなので、広める心配はないです!」


 どやっ!

 それでいいかのはともかく、その言葉は信用に足る。


「あれ? ホーさんは?」

「バカ兄弟子は、親しくないです!」

「ごめん」

 

 思いっきり嫌な顔をしたので素直に謝って、ダンジョンに戻った。

 デビリンがまだ見てなかったので、帰りは幻想階段。

 温泉で汗を流し、お姉ちゃんははしゃぎ疲れたリリを連れて、デビリンとお家に帰った。

 残った3人で、軽食堂でお茶する。


 爺さんダンジョンについて、ディオさんに少し詳しく説明した。


「潰さないですよね?」

「うん、偏屈だけど、別に悪さすわけじゃないし、とりあえず放置するしかないよね」


 まあ、念のため、後でホーさんには報告しておくか。

 ってなったところに、ホーさんがトボトボやってきた。

 遅れて参加しようとしたら、受付でもう私たちは戻ってるって教えられたそうだ。

 待っててくれてもって言うけど、もう夕方だよ?


 ちょうどいいので、今日の諸々を報告する。

 予想通り、ダンジョンには興味なし。

 ただ、みんなが古龍の背中に乗ったことにはギャースカ怒った。


「じゃあ、おいらはもう一回乗せてもらわないといけない!」


 何がじゃあなのかわからないし、回数競うようなもんでもないでしょ?

 ほら、ネーさん引いてるし。


「なんであたしが一号の足にならなあかんねん。

 好きで土掘っとるんやから、自力で行け」

「うっ……!」


 ホーさんは泣きながら、食堂を出ていった。

 その背中を呆れ顔で見送り、ネーさんも席を立った。


 さて私たちも帰るか、と思ったら、ディオさんに袖を引っ張られる。


「もうちょっとお話してていいです?」

「うん、別にいいけど」

「実は、ミリちゃんに相談があるです」


 ちょっと改まった顔ってことはマジ話かな。


「いいよ、この頃ふたりで話す機会もあんまりないから、いいタイミングじゃない?」

「です。

 ええと、この前、在庫確認しながら考えたですが……、 魔道具の工房、ヴァネッサさんに売却しようと思ったです。ミリちゃんはどう思うです?」

「んー、いいんじゃない? ディオさんがそうしたいんでしょ?」

「はい、ダイエットの魔道具製造は今も堅調ですが、ああいう大量生産は、本来うちの商会のスタイルではないのです。

 オーダーメイドか準オーダーメイドで、少人数でコツコツ高級品を作る方が、設計するディオも、外注の職人さんたちも、性に合っているです」


 確かに、街の人向けのものを除けば、一般向けの商品作ってないもんな。

 ファーレン魔道具産業の始祖ではあるけど、量産品作ってるのは別の商会だし。


「向こうにはもう話した?」

「はい。ひとつ条件をクリアすれば、喜んで買い取るそうです。

 でも、その条件は、ミリちゃんへのマージンの支払条件の見直しだったです」

「ああ、なるほど」


 うん。買い取る側からすれば、それは当然やるだろう。特に驚くことじゃない。

 いや、それならついでにマージンを受け取るこっちから条件つけるか。


「いいよ。じゃあ、逆にこっちからも条件出すから、それをあっちの商会長に伝えて?」

「はい。どんな条件です?」

「マージン料率は0%しか認めないって」

「魔石入らなくなっちゃうです!」

「だから、それが希望なんだってば。

 うちのダンジョンが何とか生き延びて来られたのは、ディオさんからの魔石がなければ無理だった。ダンジョン分割もできなかった。それはほんとに感謝してる」


 あれで5万DP持ってかれたのには、ほんとビビった。

 分割費は、ダンジョン規模に関わらず切り離すのはどこか一ヵ所だから、定額。

 お金持ちダンジョンならどうってことないのかもしれないけど、小規模ダンジョンがおいそれと払える数字ではない。

 レベルⅡでできるようにはなったけど、やっていいものじゃなかったみたいだ。

 

 施設改装で散財した直後だったし、残ったDPも、分割先のサロンダンジョンと意地でカッチリふたつに分けたから、一時は10万を超えていたDPも、今は2万ちょっとしかない。


 ギリ2万DPは残ったのと、温泉改装で露天風呂と大サウナを別階層扱いで増設したため、階層数も5つになってたからよかったけど、そうじゃなければレベルⅠに逆戻りすところだったんだよ。


 身の丈に合わないことはするもんじゃない。

 だからね、ディオさん。


「ここまで来たんだから、あとはそういうのに頼らずやっていきたいの。

 ディオさんの気持ちは嬉しいけど、あれはディオさんが考えた魔道具でしょ?

 そもそも、ヒントをちょこっと出した私がもらうようなものじゃないんだよ」


 テーブルに目を落としてしばらく考えた後、ディオさんは顔を上げた。


「――わかったです。

 その条件でヴァネッサさんと話してくるです」

「よろしくお願いします」


 私は交渉をディオさんに一任した。

 相手は新人ダンマスのヴァネではなく、商会長ヴァネッサ・ファーレン氏。

 私の出る幕はない。


 向こうにはメリットしかないのだから、断られることはないだろう。

 それでも何か言ってくるようなら、しょうがない、ヴァネッサ氏を強引にヴァネに引きずり下ろし、ミリちゃん先輩が成敗してくれよう。


 なんかすっきりした!


 その後も、いつかのバカ冒険者のように食堂に居座り、私たちの話は弾んだ。


「ディオたちが乗せてもらったのは、ネー師匠から言っていただいてのことなのです。

 自分で言い出すなんて、弟子の風上にも置けないのです!」

「まさか泣いて帰るとは思わなかったよ。子供かっちゅーの!」

「カレル村長かわいそ過ぎるです!」

「そういえば、ミーシャ元気かな?」

「靴のセンスが最悪だと思うです!」

「いや、靴っていうか全部だよね?」


 主な内容は、バカ兄弟子兼身勝手領主、ホーカス・ビレンの悪口だった。

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