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転生ダンジョンマスターですが、弱小だし、辺境だし、どうやって生き残れと?  作者: 膝関節の痛み
第4章 辺境平民ダンジョンの身の丈

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7.迎撃戦!

「ジャンゴ、てめー何で俺たちの分残しておかねえんだよ⁉

 こっちは緊張して待ってたんだから、場慣れさせんのが常識ってもんだろが!」


 猟師のおっちゃんが、ジャンゴさんに文句を言っているけど、言われている当人はヘラヘラ笑っている。理解できてないのかもしれない。


 よくあることなのか、アルバートさんとカーチャさんはノーフォロー。

 ホーさんはしゃがみこんで土を触っている。この人もこの人でブレない。

 マリアベルさんは、気がついたらカメラから外れていた。

 外衛の位置についたのか、それとも帰ったのか、判断に迷う。


 しばらく警戒した後、見張り役を残して、皆は待機所に引き上げた。

 ちなみに見張り役は、採取チーム+お姉ちゃんが交代で担当する。

 お姉ちゃんの目はここでも役に立っている。


 結局初日はジャンゴさんに瞬殺されたゴブだけで終わり。


 レイチェルさんが見つけた古い調査記録によると、この森の魔物は、動物系が大部分で、人型はゴブリンだけだということだ。

 ファンタジー定番のオークやオーガはいない。

 観客的には見てみたいけど、当事者としてはいなくてよかった。


 翌日は、午前中に、ゴブに加えフォレストホーンラビット数羽とウェアウルフ1頭が続けざまに出た。

 ここで猟師チームが初実践を果たした。

 元々強敵ではない上に、マリアベルさんの支援もあり、安心して見ていられた。

 ホーさんの泥沼はかなり有効で、すばしっこいウェアウルフの機動力をしっかり奪っていた。


 そして午後。警戒していた大物が現れた。

 

 カメラが映したのは巨大な鹿。ソードディアだ。

 脅威度はB。ネーさんが移動を確認した魔物のボスクラスになる。


 最初に矢が飛んだ。

 猟師たちが一斉に射かけたそれは、ソードディアの毛皮に弾かれ、地面に無力に落ちる。

 だが、次の瞬間、ホーさんの土魔法が鹿の足元を襲う。

 泥沼が巨大な鹿の足元を絡め取ろうとするが、ソードディアは力任せに抜け出す。


 村チームには厳しい相手みたいだ。


 「下がれ!」


 アルバートさんの声で、猟師チームが後退する。

 自分たちが足手まといとわかれば、サッと引く。大事な能力だと思う。

 

 ここから「ケット・シーは神」が、その実力を見せはじめる。

 

 まず動いたのは、カーチャさん。

 ソードディアの足元に飛び込み、前後左右に撹乱するように走り回る。これはうざい。

 魔獣の視線が揺れる。

 そこへ、視界の外から飛んできたアルバートさんの風魔法が、ソードディアの右肩を斬り裂く。


 直後、マリアベルさんのデバフの薄い光が高速で飛来。続けざまにソードディアの四肢に当り、魔鹿の動きをさらに重くしてゆく。


 それを見計らって、または考えなしにジャンゴさんが突撃。

 雄叫びとともに、片手で大剣をぶん回す。

 怒ったソードディアが、渾身の力で角を振る。

 

「わっ!」


 モニタを見つめるリリが小さく声を上げたが、この細マッチョのマッチョは強い。

 大角を受け止めると、逆に一歩踏み込み、大剣を後ろに投げ捨てた。


 捨てた⁉ なんで⁉

 

 驚くこちらを尻目に、ジャンゴさんはそのまま大鹿の下に潜り込む。

 停止と同時に軽くしゃがみこみ、その反動を乗せた拳を、真下から獣の胸に突き刺した。

 ソードディアが一瞬痙攣し、次の瞬間ゆっくりとその場に崩れ落ちる。


 心臓一発破壊。


 ジャンゴさん、バカのくせに強えええ!

 大剣士なのに拳フィニッシュだったけど、そんなことはどうでもよくなるくらいの圧倒的パワーだ。

 ヒヤッとする場面はソードディアの角がジャンゴさんに振るわれたところだけ。それも問題なく受け止めたし、終わってみれば、危なげない戦いだった。

 無理せず、必要な時間をかけて、確実に倒す。まさしくプロの仕事だ。


 離れたところで見守っていた村チームは、拳を振り上げて叫んでいる。

 コア部屋の私も思わず立ち上がり、リリは大興奮でピョンピョン跳ねている。


「なかなかええやないか。特にあの兄ちゃんのパンチは見所あるな」


 いつの間に隣に座っていたネーさんが、評論家っぽくつぶやいた。

 てか、ここ部外者入れないのに、どっから入ってきた?


 まだ余裕のある「ケット・シーは神」はその後も警戒を続けたけど、魔物が続くことはなく、村は無事ハードな一日を乗り越えた。


 夜の見張り担当はお姉ちゃんとポーラさん。

 この流れなので、夜行性の魔物を警戒して増員したけど、杞憂に終わった。


 3日目は朝から雲が出た。

 春先は晴天の続くこの辺りでは、ちょっと珍しい。

 出たのは初見のフェアウルフ6頭の群れとゴブがちょこちょこ。昨日に比べれば全くの小物だ。


 昨日の戦いで満足したらしいジャンゴさんは動かず、他の冒険者も討伐を猟師たちに譲ってくれた。警戒は怠らないから、一種の接待プレーかもしれない。


 そこで魔物の出現は止まった。


 カーチャさんの偵察にも特に引っかかるものはなく、見張りは続けるものの、警戒を一段引き下げ、討伐チームは村で待機となった。


 父さんとお姉ちゃんは、私とネーさんへの報告も兼ねて洞窟に戻ってきた。

 カメラは、念のため現場に残してもらった。


 ふたりとも当然疲れているから、温泉でゆっくりするといいよ。


 夕食は人生初の魔鹿肉だった。

 魔猪より美味い肉がまだあったか!


 って感動していたら、ほろ酔いの父さんが大声で言った。


「そう言えば、猪出なかったな!

 この前出たので打ち止めだったのかもな!」


 その時は聞き流したけど、それはフラグだった。


 翌朝、出勤?してきたネーさんと雑談してたら、コアちゃんから念話が入った。


『魔物が出現しました。かなり大きな魔猪の群れです。上位種が含まれています』


 私は思わずネーさんの顔を見上げる。


「大変!魔猪の群れが出たって」

「さよか。まあなんとかなるやろけど、先に確認に行っとき」


 平常運転のネーさんに促され、転移したコア部屋のモニタに映っていたのは、巨大魔猪1頭とその手下っぽい魔猪が20頭くらい。想定外の数だ。

 ボスはタイラントボア。群れを率いる能力を持つ、猪系最強の魔物である。

 

 村の方に歩き出す群れの前に、駆けつけた討伐チームが立ちはだかる。


 前に立つのはタイラントボア。その巨体の後ろに、やや小柄な魔猪が整然と並ぶ。

 嫌な感じで統率が取れている。


 まず鹿戦と同じく、猟師たちが一斉に矢を放つ。

 ボスの分厚い皮膚は、やっぱり簡単にそれを弾く。

 ジャンゴさんが飛び出そうとしたけど、アルバートさんが手を伸ばして止めた。

 さすがに無謀すぎる。


 陣形が変わる。猟師チームが自然に広がり、横から魔猪を狙う。冒険者たちは、中央に立つタイラントボアへ。

 いい連携だ。


 でも、ソードディアと違って、敵は群れだ。

 しかも突進してこない。

 固まって防御を固め、こちらの隙をヒット&アウェイで狙う。

 そんな知能いらん!

 

 ホーさんが土魔法を放つ。

 拡がった泥沼に――猪たちは喜んだように駆け込んでいった。

 猪に泥はご褒美。泥まみれの手下の動きが上がる。


 アルバートさんは鹿の肩を裂いた風刃。だが、タイラントボアは重心をずらしてかわす。

 視認できる火球は、手下猪にさえ避けられてしまう。


 しびれを切らしてジャンゴさんが動くけど、剣は届かない。

 前衛が厚いのだ。手下たちが壁を作り、巨体のボスに近づけさせない。

 しかもさっと身を引くので、切られても傷は浅い。


 気づけば、人間たちは狭い範囲に押し込められていた。

 左右を手下猪に固められ、ほぼ包囲されている。


「ネーさん、これなんかヤバくない?」

「んー、ちょっとキツいかもしれへんなあ……」


 いや、そんなのんきにしてる場合じゃないでしょ⁉


「もうバレてもいいから、助けて!」

「大丈夫や。念のためここに来る前に手は打っとる。まあ見とき」


 焦る私を見ても余裕を崩さず、ネーさんはニヤっと笑った。


 その時、モニタに中にひとつの影が飛び込んできた。


「デビリン!」


 背中にはお姉ちゃんが乗っている。


「こんで決まりや」


 ネーさんがつぶやいた。


 背中から飛び降りたお姉ちゃんの「デビリンお願い!」を合図に、デビリンがタイラントボアに突っ込む。

 種族名「デビルズアーム」が示す太い腕が振られると、固いボス猪は、あっさり横に四分割される。続いて周りを軽く一巡して残りを轢殺。

 以上、終了~。


 風が静かに流れた。

 脅威度Aは格が違った。


「ああああああ……」


 我に返って喜びを爆発させる現場の映像を見ながら、私は膝から崩れ落ちた。

 最初からデビリンに頼んでおけば、なんもいらなかったじゃん!

 超ラブリーもふもふお姉ちゃんペットという意識が強すぎた!


 もちろん、村一丸となって防衛する意義はわかる。

 でも、それならそれで、村の一員のデビリンがそこに混ざればいいだけだから、レイチェルさんを巻き込む必要なんてなかったのに。


 私のアホ!


 普通だったら、こんな辺境まで来てくれるはずのない「ケット・シーは神」と縁ができたのは良かったけど、それが何かに繋がってくれなけりゃ、その縁を使って、大バカとして私がジャンゴさんに弟子入りするしかない。


 ――まあ、あとでたっぷり反省しよう。


 モニタの中で「温泉だー!」って叫ぶ声がするから、何もなければ、明日か明後日にはみんなやって来るだろう。

 ゆっくり疲れを取ってほしいから、貸し切りだね。


 留守番ダンマスの腕の見せ所だ。

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